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INTERVIEW

トップインタビュー山岡トモタケ(FLAMYNGS)×渡邊忍(ASPARAGUS)- 山さん主催の"武者修行"ツーマン開催前に語り合う、バンドマンが弾き語りをやる意義とあたりまえを疑う大切さ

山さん主催の“武者修行”ツーマン開催前に語り合う、バンドマンが弾き語りをやる意義とあたりまえを疑う大切さ

2025.04.15

弾き語り、一人でステージに立つというのは“何でもアリ”ってことじゃないかな(渡邊忍)

渡邊:(WHITE ASHドラム・剛と)sottoというユニットを経て、今はソロもあってバンドもあって、山さんは精力的にやってるよね。僕はね、ずーっとバンドをやっていて「弾き語りをやろう」みたいなイベントがあったとき、遊び込みで冗談半分でやったのが最初で。バンド界隈の人も弾き語りをけっこうやるようになっていって、誘われたら出る、みたいな。それが今や弾き語りっていうスタイルと言って良いのか分からないような状態で、ルーパーどころじゃなく同期も使っちゃってるところもあるし(笑)。でも僕が思う弾き語り、一人でやるっていうのは、“何でもアリ”ってことなんじゃないかなって。バンドはメンバーの意見もあるし楽器の数も限られてるし、いろんな意味で制限があるけど、一人だと無制限だから何をしても何を使っても良いのかな、最近はそういう解釈に変わって。

山岡:曲順にしてもそうですし、一人のほうが(自由度は)上がりますよね。

渡邊:そもそも、人って何かに囚われてしまっていることがすごく多いんじゃないかな? って思うんだよね。例えば「弾き語りと言えば、楽器と歌で勝負する」みたいな、型に嵌められちゃう。山さんは今、表現している音楽に疑いをかけたことってある?(笑)

山岡:え……?

渡邊:と言うのは、僕だったらメロコアとかパンクがもともと好きだし、『イカ天』のバンドブームもあったりして。聴いている音楽とか好きなツボとかがあって、そこから引っ張られて今になってる。可能性は時代に振り回されるんだよね、と思ってて。これがもし、僕が今、10代だったら。ラップをやってるんじゃないかな? と思ったり、するわけ。

山岡:あ~、なるほど!

渡邊:ということは、だいぶ時代に引っ張られてしまう。多感だった時期に聴いていた音楽に対して自分が反応して「これが自分の音楽だ」って思ってる。だけど僕が、それこそ山さんぐらい(の歳)だったら…? ってことを、すごく思ったりするのよ。音楽を楽しむという意味でも自分の音楽を疑って、僕は今、何でもやりたいっていう時期なの。だから、どんな手でも使ってやってやる! みたいな(笑)、そういう気持ちと言うか、ね。

山岡:お話、メチャクチャ分かります!

渡邊:50歳にもなってくるとさ、凝り固まって頭が硬くなってくる人のほうが多いんだよね。それか、何に対しても「いいじゃな~い」って言う、良い先輩パターンか。でも実はこの2種類とも同じで、「いいじゃない」って(単に)言うんだったら、それとは違う何かを出せないとだし。上手く言えないんだけど、“本当に好き”をまだまだ探っていかないと、って思っているところがあって。山さんがやっている今の感じは本当にこれからだと思うし、僕もバンドをやったりいろいろと音楽に関わることをやってきたけど、まだ自分を疑ってるし(笑)。だから、「俺ってまだ伸びしろがあるな」って思っちゃうわけ。あはははは!

山岡:今のお話を聞きながら僕も今、近い考え方で音楽をやっているなと思うところがあって。WHITE ASHのときはUKロックが好きでそこから吸収してましたけど、弾き語りを始めたのは東日本大震災があって、地元・福島への思いがあったからなんですね。今、「自分のジャンルって何だろう?」って悩むときもあるんですよ。ロックでもポップスでもないし、「山さんの音楽って、〇〇っぽいみたいなのが無いよね」って言われることが、逆に説得力がないのかなと捉えてしまうときがあって。でも、自分の中ではジャンルに囚われず、好きな音楽ができている。それがジャンルになれば良いのかなと思ったりもしていて。

渡邊:それは間違いない、間違いない!

山岡:時代というものを意識せずとも、『One Loom – Premium –』に出ていただく先輩たちのツーマンを通して吸収していく中で、自分としてのロックバンドを作りたいと思うところもありまして。今、ASPARAGUSの曲もメッチャ聴いていて、WHITE ASHのときのギターは単音弾きのリフとしかイメージしてなかったんですけど、ASPARAGUSはバッキングのリフでもカッコいい、バッキングでも印象的なリフのフレーズがあるって本当に強いなと思って。大学の後輩がコピーをしてたのを聴いたときに衝撃だったのも覚えてますし、そういうことを意識して(バンドの)新曲を作りたいなとか、そういうマインドにも今、なってきまして。

渡邊:嬉しいねぇ、そういう褒め言葉はいつ覚えたの?(一同笑) やめてよ、もっと尖ってよ!

山岡:尖りたいとは思ってます(笑)。

渡邊:でも“尖る”っていうことも、僕は疑ったほうがいいなと思ってる。「ロックは反骨心がカッコいい」みたいなのもナンセンスだと思ってるし(笑)、僕たちはお客さんがいなければ何もできない、音楽を使った人気商売なわけだから、結局、どんなジャンルでどんなカッコいい音楽をやってても人を呼べないとダメ、みたいな世界じゃない? だから何を頑張るかと言ったら、「山さん自身がジャンルになる」みたいに言ってたけど、(お客さんに)山さん自身を好きになってもらうことしかないのかな、って思うね。好きになってもらえたら(音楽は)フォークをやろうがポップをやろうがお客さんはついてきてくれると思うし、歳をとればとっていくほどその人の人間性が浮き彫りになっていくから、嘘をついてるとバレる。例えば、お酒なんか飲めないのにジャックダニエルのボトルを持ちながらやってきましたとか、(真面目な人が)面白キャラを演じるとかさ。そういうのって「この人、無理してるかも」ってバレちゃう、魅力を感じなくなっちゃう。だから山さんは、今の山さんの感じを強烈に出すしかない、僕はそんな気がするな。歳を経ながらどんどん、自分らしさをどれだけ出せるか、そこでお客さんは信頼してくれるんじゃないかなって。

山岡:(黙って耳を傾けながら)メチャクチャ、参考になります。

渡邊:あとは、続けることだよね。“継続は力なり”じゃないけど、続けていれば良いと思う。話がちょっと違うんだけど、男の人が歳をとってもモテたいならばやっぱり“男をサボらないこと”なんだよね。そこで差が出てくる。女性もそうだけどね。

山岡:う~ん、深いですね!

渡邊:絶えず、自分をサボらない。音楽に対してもそうだし、それって強いんじゃないかなって。だから山さんは向いてると思うよ、誠実に音楽と向き合ってたりコンスタントに毎月ファンの前でやっていけてる強さ。長いスパンで見ればそれが実るんじゃないかなと僕は思ってるから…って、山さんちょっと、そういうのやめてくれる?(笑) 俺がLOFTとズブズブな、ズブい男になるわ!(一度笑)

山岡:いやいやいや(笑)、でも、嬉しいですね。

『One Loom – Premium –』では毎回コラボレーションも期待できる…かも?!

渡邊:それで当日のライブはお楽しみにしてて欲しいんですけど、一人用の曲のラインナップをけっこう持ってまして。バンドとは違った表現の形になってるし、しかも音源は出てない(笑)。お客さんもASPARAGUSの曲をやると思ってたらやらないことが分かって最初はビックリしてましたけども、それからもお客さんは来てくれるんですよね。ライブって曲を歌って披露するだけが全てじゃないんだな、それをすごく思うし、その人の人柄とか人となり含めて全てだから。だから例えば、歌が下手だからとかギターが下手だから向いてないっていうのはとてもナンセンスな話で。“音楽で人を集める”っていう意味では補える部分がどこにでもけっこういっぱいあると思うから、夢とか可能性がいっぱいあるよね。昔は俺も「(人気があるアーティストに対して)アイツ、何だよ」とか思ったりしてたの。でもそれって、ただのひがみ、ジェラでさ。売れてる人っていうのはちゃんと何かしらの理由がある、それを見抜けてない自分なだけ、っていう話で。自分で自分の首を絞めたらもったいないからね。でも山さんにもな~、「何だよ!」って気持ちが芽生えちゃうかもしれないから、あんまり素直に音楽をやらないで!(一同笑)

山岡:いやいや、でも今の話は全バンドマンと弾き語りをやっている全員に聞いてもらいたいですね。

渡邊:打ち上げで話すような話になっちゃったけど(笑)、50歳になっても“まだまだ”って僕は思えてるから、音楽の活動ってやっぱり良いよね。例えば「今回、来てくれた人たちがたくさんいたからそれで良かった」じゃないし、来てくれたお客さんにちゃんと次も来てもらうようにしないとね。それで例えばギターを間違えないようにしようとかセットリストをこう変えようとか、そういうところばっかり見てると盲目になっちゃって、逆にお客さんを置いてきぼりにしちゃうことがあって。「今日は楽しかったな、また次も行こうかな」って(お客さんに)思ってもらえることって、もっとざっくりとしてて曖昧なものなんだと思うんだよね。そう思わせること、思わせたらまた次も来てくれるわけだから。つまり俺たちは、今のフルヴォッキを見せるだけなのよ!(一同笑)

山岡:そうですよね、ジャンルとかも関係ないですよね。悩んでいることはいっぱいあるけど、自分らしくこのまま進んでいいんだな、と思いながら。今、ちょっと泣きそうになりながら聞いてました。

渡邊:そう、山さんにはその誠実さ、(英語で)“honesty”があるから。もう“山sty”に改名しよう!(一同笑)

山岡:自分が目指していることが、今回の話を通じて繋がってきた感じがあります。(弾き語りを始めて)福島とか震災のことを伝えようっていう使命感があったんですけど、伝えるというよりは、届ける。みんなが同じ気持ちだったりハッピーになって、笑顔で帰ってもらう。最近はざっくりと、そう考えるようになってきて。(ライブを通して)心が温まったりとか帰り道が楽しくなったりとか、そうなってくれれば良いなっていう考え方に最近、ちょっと変わってきた感じがあったので。

渡邊:時間と共にいろいろと変わっていいんだよね。「アイツは変わっちまった」とか言う人もいるけどさ、変わったほうが良いんだよ。変わらない、っていうのは成長してないだけなんだから(笑)。

山岡:確かに。そうですよね!

渡邊:震災のこととかもさ、言わなくともみんな、忘れることはないから。それは(各々の心に)ありながらも、で良いんじゃない? それで共に変わっていく、と言うよりは、進んでいく、かな。

──今日のお話を客観的に聞きながら、音楽の世界に限らず当てはまるところもあると思いましたし、学びがあったように感じています。最後に僭越ながらリクエストとして当日は二人で何か…それこそ、しのっぴさんの“オシャレなコード”で一緒に何か演ってもらえたら嬉しいな、と!

渡邊:やりましょうよ! 何か、最後に二人で!

山岡:いいんですか?! よろしくお願いします! 僕は何でもやりたいです! どういう曲が良いですかね? ウチの父が村下孝蔵さんが好きなのでそういう曲であったり、歌謡曲みたいなエッセンスが今の自分にはないので、そういう曲を一緒にできたら嬉しいですね。

渡邊:フォーキーな曲とかね。じゃあ何か、面白いのを…その日までに考えてやりましょう。(『One Loom – Premium –』の出演者を見ながら)今後は、「忍さんのときはコラボしてくれましたよ」って。ほら、1回定例を作っちゃえば次の出演者にも「どうします?」って(一同笑)、それで続いていけば、ね!

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山岡トモタケ from FLAMYNGS
『One L/Room』

ライブ会場限定CD
*デジタルリリースも同日解禁
発売日:2025年3月26日(水)
発売元:Yohaku Records
定価:1,700円(税込)

iTunesStoreで購入

【収録曲】
1. 相変わらず
2. 無力
3. Overlap(#11)※CD Only

LIVE INFOライブ情報

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山岡トモタケ×BAR THE LOFT presents『One Loom - Premium -』
【出演】山岡トモタケ / 渡邊忍(ASPARAGUS)
【日程】2025年4月17日(木)
【時間】開場19:30 / 開演20:00
【会場】BAR THE LOFT(新宿LOFT内)
【チケット】前売一般¥4,000 / 前売学割(20歳以下)¥2,000 / 当日一般¥4,500
LivePocketにて4月16日(水)23:59まで販売(お一人様2枚まで購入可能)
【問い合わせ】新宿LOFT 03-5272-0382
 

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山岡トモタケ×BAR THE LOFT presents『One Loom - Premium -』
2025年3月26日(水)▷6月8日(日)昼帯に延期|BAR THE LOFT(新宿LOFT内)
LivePocketにてチケット販売中
 
2025年4月17日(木)BAR THE LOFT(新宿LOFT内)
LivePocketにてチケット販売中
 
2025年5月22日(木)BAR THE LOFT(新宿LOFT内)
LivePocketにてチケット販売中
 
2025年6月16日(月)BAR THE LOFT(新宿LOFT内)
LivePocketにてチケット販売中
 
2025年7月9日(水)BAR THE LOFT(新宿LOFT内)
LivePocketにてチケット販売中
 
※全日程:開場19:30 / 開演20:00
※6月8日(日)振替公演は開場12:00 / 開演12:30
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