下山、岡本、梶浦、竹内という役者が揃った
──だけど関係修復を果たせたわけですね。
茂:喧嘩して5年ぶりに俺から電話してね。下山はあの時べろべろで記憶がないから、俺と喧嘩したつもりはなかったらしいんだけど(笑)。でもまあ、下山ってそういう奴だし、新しく茂バンドをやるならやっぱりギターは下山しかいないと思ってさ。ふと考えたら、下山は同級生なんだよ(茂は1960年1月2日生まれ、下山は1959年5月19日生まれ)。亜無亜危異は全員同級生だし、俺は同世代が好きなんだね。ただ俺らの世代は層が薄くて、亜無亜危異か下山くらいしかいない。一個上は池畑(潤二)や大江(慎也)、一個下は花田(裕之)や氷室(京介)とかがいるんだけど。同じ時代の匂いを共有した者同士に通ずるものってやっぱりあると思う。『傷だらけの天使』とか思春期に見たテレビの影響とかさ。その部分でビート感が合うっていうのかな。
──個人的にもアコギなSSが好きだったので、下山さんとの親交が復活したのは嬉しいです。
茂:あいつもアコギなSSを始めてから真剣にアコギを弾き出したからね。それまでエレキの下山だったのがだいぶ練習をしたし、演奏も凄く良かった。カッティングとか冴えてしさ。ハープを花田に教わったりもしてたな。
──5年ぶりに下山さんとライブを共にして、いかがですか。
茂:いやあ、いいよ。バカみたいにリードを弾いてるもん(笑)。酒をやめて今や音楽しかやることがないからいいんじゃない? この前レコーディングをやったんだけど、スタジオに行くと下山が凄く生き生きしやがっててさ(笑)。
──岡本さんとはこれまで茂さん主催の『THE COVER』で何度も共演する機会がありましたよね。
茂:俺のまわりはピエロばかり…じゃなく(笑)、いいベーシストばかりでさ。岡本ちゃんとはやっと一緒にバンドをやれるようになった。アコギなSSにベーシストとして入ってもらうのもなんか違うなと思ってたから。岡本ちゃんのベースは寺岡(信芳)とタイプが似てるんだよ。ただ、岡本ちゃんがちょっと可哀想なのはずっと一緒にやるドラマーがいないじゃんか。そこがコバン(小林高夫)という相方のいる寺岡との差でさ。コバンのバスドラが揺れ動いた時にどう弾くかというところで寺岡はベーシストとしてだいぶ鍛えられたはずだし。岡本ちゃんは寺岡と違ってもっとトータルで物事を捉えていて、プロデューサーっぽいところがある。下山と俺のつなぎ役をやってくれたり、梶浦との間に入ってくれたりしてる。
──今回、奈良(敏弘)さんにお声がけはしなかったんですね。
茂:そこはさっきも言ったように、今回は同世代で固めたかったから。岡本ちゃんは今61なのかな(1963年9月9日生まれ)。梶浦は学年が俺の一個下(1960年6月12日生まれ)。元亜無亜危異、元ルースターズ、元モッズ、元アンジーで“元”ばっかりだけど(笑)、よくこれだけの面子が集まったとは思うね。
──梶浦さんとはモッズの頃から交流があったんですか。
茂:そうでもない。彼が福岡でベーシックを始めてからだね。一緒にバンドをやるようになってだんだん合ってきた。モッズをやめてブランクがあって、これからどういうドラムを叩こうかと試行錯誤していた時期があったのが良かったと思う。梶浦のドラムはコバンよりは8ビートが跳ねてて、俺には今どきのドラマーっぽくて面白い。今は岡本ちゃんと息の合ったリズムを出そうとしてるから、そこが今以上に面白くなってくれたらいいなと思ってる。
──その“スーパーグループ”と言える面子に加えて世代のかけ離れた“こんぶちゃん”こと竹内さんが加入したのは、頭脳警察の現メンバーであることが大きいですか。
茂:そうだね。だから誘えたし、30年前の茂バンドでも曲にサックスが入ってたから。当時は佐藤春樹さんにトロンボーンを吹いてもらったりしてたね。こんぶちゃんのことは前から頭脳警察のライブを観ていいなとは思ってたけど、彼女の良さを頭脳警察では活かしきれてる感じがしなくてもったいなかった。「さようなら世界夫人よ」で吹くフルートは目立ってたけど、もっとサックスを吹きまくればいいのにと思ってさ。PANTAが元気だったらもっとこんぶちゃんをフィーチャーしたアレンジが聴けたと思うけど、そこはちょっと残念だったね。
──ちなみに茂さんはPANTAさんの遺作『東京オオカミ』を聴いてどう感じましたか。
茂:格好良かったよ。PANTAは亡くなる間際に俺のやってるYouTubeラジオ(『仲野茂ラジオJAG』)に出てくれて、「まだタイトルが決まってないんだよ」って言いながらタイトル曲の「東京オオカミ」を発売前にかけさせてもらってさ。凄く格好良かった。