10月23日(水)に開催が迫った『LOFT三つ巴ライブ2024』。"ありそうでなかった実力派3組による競演"とうたい、出演は上野大樹/GOOD BYE APRIL/The Songbards(五十音順)。競演を前に上野大樹にインタビューを行なうことになったものの、バンドの2組は新宿LOFTでライブをしていても上野大樹は...? とハテナマークがついたのだが、実はかつて、新宿LOFTのステージに立っていることを今回、初めて知ることとなった。
今月9日にEP『光り』のリリースもあり、音楽シーンで今をときめく上野大樹。初めて新宿LOFTに出演した時のお話からはじまって、ギターを持ったきっかけや楽曲制作のお話まで。実際にインタビューに向き合う姿を通して、彼が手掛ける音楽そのものについてもっともっと話を伺ってみたいと思わせる音楽家だったし、新宿LOFTで見せてくれるステージがとても楽しみになった。このインタビューを読んだら、「秋の夜は折り紙つきの楽曲たちを聴きに新宿LOFTまでお越しください」と紹介されている通り、『LOFT三つ巴ライブ』に行きましょう!(Interview:高橋ちえ)
“ルーツがない”というコンプレックスがガットギターに導く
──今回の『三つ巴ライブ』に出演する3組からメッセージが寄せられていますが(註:こちらのスケジュールページをご参照ください)、上野さんは「初めて新宿LOFTに出演してからどれくらいの時間が経ったでしょう」と書き始めていらっしゃいますね。遡って、おいくつぐらいの時でした?
上野:お酒は飲めていた年齢なので二十歳は過ぎて、大学3~4年生の頃だったと思います。当時のオーディションライブに出演して、フロアの特設ステージで歌ったのが初めての新宿LOFTでした。数々の有名な方が出演されている大きいライブハウスだというのは知ってましたけど、新宿なので怖いなという印象がライブハウスにもありまして(笑)、ビクビクしながら行ったことを覚えてます。それから、LOFTの方にもよくしていただいて、何度か出演させていただいてましたね。
──その当時はどのように音楽活動をされていましたか?
上野:路上ライブを渋谷でちょこちょことやっていて、まだそんなにライブハウスではやっていない頃だったと思います。
──そもそも上野さんが音楽をスタートしたところから紐解いていかせてください。
上野:僕は高2ぐらいまでずっとサッカーをしていて、怪我をして辞めちゃったのをきっかけに、兄貴がアコースティックギターを持っていたので「暇だから弾いてみてもいい?」って音楽を始めたんですね。ずっとサッカーしかしてこなくて、ゲームもアニメもテレビもそんなに触れてなくて、本当にやることがなくて(笑)。サッカーはわりと代表候補ぐらいまで行っていたので、辞めなければそのままサッカー選手になる…ところまで行っていたと思います。それでギターを始めて今、ちょうど10年ぐらいになりますね。
──ギターを手にした時、意外としっくりきた感じでした?
上野:もともと音楽もほとんど知らなかったんですよね。だから最初から曲作りを始めて、“曲を作るのが楽しい”っていうのがあったのと、ライブをやってみたいなと思いつつ、サッカーから音楽に行った(=転じた)のをほとんど友達に言ってなかったので、友達にバレないようにライブをやるにはどうしたら良いんだろうと考えた時、オーディションライブだ! と思って。ヤマハが当時、主催していたオーディションを受けに隣町まで行ったら、そこでグランプリをもらって。あ、なんか嬉しいな…っていうのが最初の原動力になって、続けている感じです。
──いきなりグランプリですか! “ギターを始めて10年ぐらい”とも仰ってましたけど、全く想像していなかった現在なのでは?
上野:それこそ今年、(出身地である)山口県宇部市の「宇部ふるさと大使」に任命していただきまして。成人式でも歌いましたし、この前、福岡で無料ライブがあったんですけど客席に“中学の時から知ってる顔があるぞ?”とか(笑)、ファンだっていう同級生がいたりして、そういうのは本当にすごく嬉しいですね。サッカーをやっている時はサッカーが自分のアイデンティティだったんですけど、(サッカーを辞めてしまって)山口にはいられなくなって東京に出てきて、今の自分のアイデンティティで山口に戻ってお仕事ができるっていうのは全く想像をしていなかったので。不思議な感覚もありつつ、嬉しいなと思ってます。
──上野さんの楽曲はメッセージ性が強く感じられて、歌詞が先に生まれるイメージがあります。どのように曲作りをされているかも聞きたいです。
上野:(歌詞とメロディを)同時で作ることが多いんですよ。一気に生まれてきて、バーっと書いてしまう感じです。歌詞は日常で(=普段から)書くということはわりと少なくて、“書こう”と思って、書くことが多くて。メモをすることもないし、ほぼほぼライフワークとして、毎日とは言わないですけど定期的に書いてますね。例えば、面白いことがあったら誰かに喋りたくなる、みたいな感じで、生きていて自分の中で見えている・考えていることをそのまま書いている、という感じです。
──曲作りに向き合って、生み出すタイプですか。
上野:そうですね。書いた後に(できた曲を)聴いて、気持ち悪さがあるところは削ぎ落としていって、聴き心地だったり(も含めて)、最終形態に持っていくということはあるんですけど、基本的には自分の中で一番気持ち良いところを狙いながら、言いたいことを素直に言っていく、っていうのが多いですね。
──“言いたいことを素直に”というのは、今の自分の気持ちが多いですか?
上野:リアルタイムなことも多いですけど、振り返って書くことのほうが多くて。例えば「MOTHER」(2021)っていう曲で「みんなで囲んだテーブルで 火を消してる」っていう歌詞を書いた時、昔からある光景を言語化できたことにすごく嬉しくなったんですね。言語化できて嬉しくなるような発見や発明を自分の歌詞でしていけて、皆が同じ景色を思い浮かべることができたりとか、書いたことがなかった当たり前の景色とか…“素直に”っていうのは、そういう素直さというところですね。だから10年前のことを歌っていても、10年後の今だからこそ歌えるっていう意味で、自分も変わっていくタイミングで過去を振り返ることも多いですね。
──例えばこの先、“もしかして昔のあのことを歌ってる?”って知り合いが思ったりするような曲が生まれてくる可能性があるわけですね。
上野:そうです(笑)、そうです。
──上野さんはアコギに加えて、ガットギターも使っておられるようですね?
上野:自分に(音楽の)ルーツがないというのがずっとコンプレックスで、上京してからいろんなバンドを組んだりもしてみたんですけどそんなにうまくいかなくて。大学3~4年生の就職活動前に“本当に何がしたいんだろう?”って考えていた時、音楽をいろいろと聴き漁っていて七尾旅人さんの音楽が好きだなと思ったんですね。それで七尾さんがガットギターを弾いていて“自分も弾いてみよう”って。そしたらガットギターの音も好きで、普段もわりとギターを2本使いでやっている感じです。
──使っているギターも教えて欲しいです。
上野:アコギはバチバチ弾くので、サスティン(=一つの音が切れるまで持続する音)が残るように、ちょっと珍しいローズウッドの木で作られたギブソンJ-45を使ってます。指で弾くことが多くて、右手の指にジェルネイルを付けていて3週間に1回ぐらい(ネイルサロンに)行ってるんですけど(笑)。ガットギターはアントニオ・サンチェスのフラメンコなギターに、プリアンプはさらに良いものに入れ替えたりして。今はこの2本でやっています。
──やさしいギター音もさることながら、上野さんの楽曲は鍵盤のフレーズも印象的なものが多いですよね。
上野:でもピアノは全く弾けないです。ギターで考えたフレーズをピアノで起こしてもらうという形がけっこう多いですね。