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INTERVIEW

トップインタビュー騒音寺 Vocal Nabe インタビュー

京都が誇るロックンロールバンド・騒音寺が建立30周年記念として、全曲、頭脳警察のカバーアルバム『WHO ARE THE BRAIN POLICE?』と新作ミニアルバム『Tumbleweed』を発売。そして10月12日に結成以来最大規模となるワンマンライブ『絶対死なない大説法会』を開催

2024.10.05

騒音警察のライブではPANTAに「もっと騒音寺らしくやってくれ」って言われた

──そして2010年から「騒音警察」という合同ツアーも行い、騒音寺が頭脳警察のバッキングをするまでになりました。まるで夢が実現したかのような怒濤の展開ですね。
 
Nabe 当時、頭脳警察のロード・マネージャーだった高橋伸一さんと騒音寺のマネージャーだったしのやん(元SS、コンチネンタル・キッズ)との間で何かしらのやりとりがあったんだと思います。PANTAと俺はお互い連絡先も知らないですからね。不思議でしたよ、まさかって感じで。PANTAも高橋さんも騒音寺を気に入ってくれている事は感じていました。ただ、メンバーは大変でしたよ。頭脳警察は知っていても俺みたいに聴きこんでいたわけじゃないから。ツアーに入る2週間前に大量の譜面が送られてきてね。いくら好きでもたまったもんじゃないですよ。騒音寺の遠征先でもスタジオ入って騒音寺じゃなくて頭脳警察の曲を練習、京都に帰ってきてもすぐスタジオ。釧路でも練習してましたよ。きつかったと思いますよ。
 
当時は、菊池琢己さんがPANTAと頭脳警察のギタリストで演奏全体のブレーンだったんですが、とにかく上手い。ロックはもちろん、所謂クロスオーバー的な綺麗な音を出す人でね。その菊池さんが厳しい厳しい。「もっと全体のノリを」とか「ここは2小節空けよう」とか「PANTAが歌い始めたらもう少し音量を下げて」とか。合同ツアーがスタートして3ヶ所目くらいまでは騒音寺特有のノリは出せなかったですね。聴くのは簡単だけど、実際にプレイする事の難しさをリアルに実感したんじゃないですか。一本ライブが終われば「じゃ、次はBlood Blood Bloodをやっといて」って感じで曲が増えていく。これはきつい(笑)。
たしか関東のライブでPANTAに「もっと騒音寺らしくやってくれ」って言われたんですよ。全員。俺はあのノリが欲しくて騒音寺とツアーするんだからって。TOSHIは菊池さんに「楽にやらせりゃいいじゃん。のんびりやろうよ、のんびり」って言ったのを覚えていますね。これで頭脳警察がなんたるかをわかりましたよ。あと、PANTAは自分の気分をステージでコントロールしてましたね。今日は楽しい頭脳警察でいく、とか、今日はハードでやる、とか。楽しい時はMCが多いしハードな時はほとんど話さない。ツアーを重ねて行くと、ステージのPANTAを察知して「今日はアグレッシブにいけるな」とか「今日はハードにロックしなきゃなとか」俺自身もPANTAに合わせて使い分けるようになりましたね。
 
しかしよくやったと思いますよ、騒音寺は。あの量の曲数、タムもこーへいも譜面台立てなかったですからね。俺なら立てるかも。だって頭脳警察のファンの前で…ファンと言うよりかは聴衆ですね。聴衆の前で「さようなら世界夫人よ」間違えたら大事故ですよ。「銃をとれ!」のイントロとか。あの緊張感の中、ほんとによくやりましたよ。京都だったと思うんですが、アコースティックセットの時、PANTAに「どうして騒音寺を起用したんですか?」って聞いたんですよ。ステージ上で。「ロックンロールだから」って返ってきました。その頃のPANTAは荒削りを求めていたのかもしれませんね。
 
──PANTAさんはNabeさんや騒音寺にとっての兄貴でもあり師匠ともいえる存在だったと思いますが、昨年、残念ながら亡くなってしまいました。訃報を聞いた時はどうでした?

 
Nabe まず「嘘だろ?」。でも実は今でも実感がないですね。PANTAの声はすぐ手の届くレコード棚にあるし、あれだけツアーを回って一緒に叫んで食事して、でも未だに実在した人物とは思えないんですよ。ツアーをしたのは幻だったんじゃないかって。憧れが強すぎて偶像化してしまってるんですよね、きっと。


普段のTOSHIとコンガの前に座った時のTOSHIとは別人。TOSHIのコンガの音が重なってはじめて頭脳警察

──騒音寺の最新アルバム『WHO ARE THE BRAIN POLICE?』は全12曲が頭脳警察の曲で構成された前代未聞のカバーアルバムとなっています。頭脳警察の曲は1曲だけでもカバーするのは難しいと思いますが、カバー集を作ろうと思ったきっかけは?
 
Nabe 最初はボルテイジレコードのサミー前田さんからの提案でした。たくさんのバンドで構成されるPANTAトリビュート盤の中で一曲、とかそういう話だと思ってましたから驚きましたよ。え?単独リリース?しかもフルアルバム?全曲頭脳警察?って。まあ、即答でした。断る理由が見当たらなかったですね。頭脳警察からは、演奏スタイルをはじめ自身の音楽感、声の力、変拍子、人生論、反骨心、時代、詩人、表現すること、他ありとあらゆる生きることに必要な感覚を学ばせてもらいました。たった頭脳警察ひとつにこれだけの物が詰まっているんですよね。
 
動機は…、これをやらなきゃ俺たち以外に誰がやる?っていう初期衝動みたいなものです。それにPANTA亡きあと、ネット以外しばらく誰もPANTAの死に触れなかったじゃないですか。特集本やトリビュート盤の話も上がらなかったですよね。悔しいじゃないですか。あれだけの事をやってきた人に。「俺たちが一番PANTAが天国で歌いやすいようにロックできるさ」という気持ちですね。だってバンド単位で、騒音寺でツアーに同行したんだからね。
 
──制作中はメンバー全員が「聖なるものを壊してなるものか」という思いで臨んだそうですね。
 
Nabe 頭脳警察の楽曲は非の打ちどころなく完成されてるから、元のアレンジを崩せないし、あえて崩したくなかったんですよ。もし他のバンドが無理に崩したアレンジでやってたらどう思います? 1、2曲ならともかく。演奏に関して言えば、先述したPANTAが言ってた「もっと騒音寺らしくやってくれ」に着地しましたね。オケだけ聴いたら騒音寺になっていたので、あとは…、というか問題は歌ですよね。騒音寺のレコーディングより苦労しましたよ。PANTAってシャウトしないでしょ?「銃をとれ!」にしても「ふざけるんじゃねえよ」にしても叫んでるって思ってる人多いと思うけど、叫んでないんですよ。だから俺も控えめに歌ってしまって。ファースト、セカンドテイクなんか聴きなおしたら全く騒音寺じゃなかったもん。ましてや頭脳警察にもなってないし。メンバーが聴いても、う~んって。ベースのこーへいがさ、「もっとナベ節を炸裂させましょうよ」って言ってくれたから、上手く歌おうとか考えずにいつものように歌ったら、これが演奏にドはまりしたんですよね。リアリティを追及してハーモニカもわざと下手くそに吹いたんですよ。これがまた功を奏しましたね。気に入ったのは「銃をとれ!」のドラム。すごいですよね。俺は「サラブレッド」が一番騒音寺らしいと思ってます。
 
──TOSHIさんが当初は数曲参加の予定だったのが、最終的に9曲に参加したというのにも驚きましたが、なんでそんなことに?
 
Nabe 録音当日、TOSHIがノッてきてさ。まさかそんなに速い曲も?って確認したら、やるやる!って。これが続いて最終的に9曲に。
 
──TOSHIさんとは過去に何度も共演されてますが、今回のレコーディングで改めて感じたことはありますか?
 
Nabe 普段のTOSHIとコンガの前に座った時のTOSHIとは別人になりますよ。気迫がすごくてレコーディングブースには入れなかったですね。TOSHIのコンガって所謂ラテンパーカッションとは違うんですよ。言葉では難しいな…、プリミティブという言葉が一番近いかも。頭脳警察ってさ、PANTAの歌とギターだけでは成り立たなくて…、それはPANTAなんですよ。プリミティブなTOSHIのコンガの音が重なってはじめて頭脳警察なんですよ。レコーディング直前のサウンドチェックの時、ミキシングルームでコンガの音を聴いた瞬間、「あ、頭脳警察だ」って身震いしましたよ。まじで!
だから頭脳警察イコールTOSHIといっても過言ではないですよね。で、CD聴きました? 騒音寺が頭脳警察になってるんですよ! すごいことですよ。


「いい景色を見れる所までいこうぜ」

──そして今年は騒音寺(建立)30周年ということで、頭脳警察カバーアルバムの他、ミニアルバム『Tumbleweed』の制作と全国ツアー「絶対死なない全国行脚」を行っています。改めてこの30年をふりかえるとどんな思いでしょうか?

 
Nabe 長いような、短いような。ロックバンド、長くやればいいってもんでもないですけどね。でもギターのタムが加入した時に「いい景色を見れる所までいこうぜ」って言ったの。懸垂してひょいと上の世界覗こうぜって。嫌だったらまた戻ってきたらいいじゃんて。この優柔不断な考えだったから続いたのかも。騒音寺初期の頃は、ボ・ガンボス以降の京都のシーンがくすんでたから、いっちょやったるかの思いで飛び出したんですけどね。一地方在住のバンドがどう飛び出していけばいいのか、まったくわからなかったですね。わからないまま旅してるのが30年続いた理由じゃないですかね。それにいいバンド名でしょ。騒音寺って。これだけで勝負できるって今でも思ってますよ。
 
──10月12日には結成以来最大規模の単独公演「絶対死なない大説法会」が味園ユニバースで開催されます。どんなライブになりそうですか?
 
Nabe 周年のライブってなんか照れくさくて好きじゃないんですよ。それにバンドもこの先続く、ある意味道の途中でしょ、なんかね。周年ライブって打ち上げ花火みたいなもんじゃないですか。ならば大きな花火打ち上げたろって今回は開き直ってますね。30年で曲もいっぱいあるし。ファンの方もライブハウスやホールじゃなくて、たまには騒音寺を異世界で見れればいいと思いますよ。それに味園、一度でいいから出てみたかったんですよね。
 
──最後に、読者のみなさんに「絶対死なない」ためのアドバイスをお願いします。
 
Nabe 「どうせやるなら徹底的に」「ダメなら尻尾巻いて逃げろ」「あきらめてはならぬ。そこまでなら誰でもやれる」臨機応変に使い分けて下さい。それに人間て意外と強いですよ。その証拠に騒音寺生きてるじゃないですか(笑)!
 
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フー・アー・ザ・ブレインポリス?

発売日:2024年11月27日
仕様:CDアルバム
品番:BQGS-0205
定価:2500円+税
発売:ボルテイジレコード
販売:(株)ウルトラヴァイヴ

収録曲
1. 戦慄のプレリュード
2. 赤軍兵士の詩
3. 銃をとれ!
4. マラブンタ・バレー
5. ふざけるんじゃねえよ
6. 真夜中のマリア(転換の為のテーマ)
7. サラブレッド
8. 歴史からとびだせ
9. 落葉のささやき
10. 悪たれ小僧
11. コミック雑誌なんか要らない
12. 万物流転 

作詞作曲:Pantax’s World
(赤軍兵士の詩 原詞:Bertold Brecht)
編曲:騒音寺
プロデュース:騒音寺&サミー前田

Tumbleweed

仕様:4曲入りCD
品番:SOG-1
定価:1000円
*ライブ会場限定、10月12日の公演より発売

収録曲
1.Tumbleweed
2.田舎者めが
3.Don't worry boys
4.からっけつ

LIVE INFOライブ情報

騒音寺 建立30周年大説法会
 
2024年10月12日(土)
16:00開場/17:00開演
会場:大阪・味園ユニバース
前売:4000円
 
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