一番の生きがいである音楽をずっと楽しくやり続けたい
──ソロになって30年、MAGIC TONE RECORDSを立ち上げて17年、コンスタントに作品を発表し続けてきてもなお「まだこんなもんじゃない」という思いが絶えずありますか。
マモル:あるね。自分の気持ちとしては常に「まだまだこれからだ」と思ってる。自分自身はね。周りはどう思ってるか知らないけど、自分の想像の中ではまだまだだよ。もっともっといい曲を作れるはずだし、それをいいアレンジにできるはずだと思ってる。そういう気持ちがないとやってられないしね。きっとそう思いながら死んでいくんじゃないかな。死ぬ間際までまだまだ! と思いながら音楽を続ける。ぎりぎりまでそうありたいよね。
──では、ステージで倒れるのが本望ですか。
マモル:録音しながら死ぬのがいいかな(笑)。パソコンを覚えてDTMで音楽を作る目的とはこういうことだったんだなと最後に知るみたいなさ。
──『PRIVATE TAPES 1995-1998』発表時のインタビューで替え歌に近いカバー・アルバムの構想があるとお話しされていましたが、そちらの進捗状況は?
マモル:コロナになっちゃったからね。当時はやる気満々で、コロナさえなければ発売してたと思う。選曲も構成もすでに考えてあるんだけど。
──そのカバー・アルバム、川戸さんから依頼されているアコースティック・アルバム、新たなオリジナル・アルバムと並行して進めるべきタスクがいくつもあるし、まだまだ休む暇はありませんね。
マモル:ツアーの移動中に今後のことをいろいろと考えたりするわけ。次のアルバムにはこんな曲を入れてみよう、今は4、5曲足りないからこんな曲を入れてみようとかさ。常にそんなことしか考えてないし、時間は限られてるからもったいないでしょ? だから次に何をするかしか考えてない。これが40年以上音楽をやってきた蓄積なんだろうし、こういう形でやっていかないと生きてる感じがしないんだよ。いろいろと大変だけど、ぶっちゃけ凄く楽しい。楽しいことを存分にやって細々と生きていく(笑)。それがいいんだろうね。
──話を伺っているとすぐに新作ができるのでしょうし、近いうちにまたすぐインタビューでお会いできそうですね。
マモル:うん。新しいアルバム用のデモをこれから仕上げて、すぐに取りかかれると思うよ。……そういえば、この『ヒットパレード』のことで思い出したことがあるんだけどさ。当時、レコ発を高円寺のジロキチでやったんだよ。その時に(甲本)ヒロト君が遊びに来てくれたんだよね。ドクター・フィールグッドのトリビュート(『ニッポンのロックンロール』、2007年12月発表)をヒロト君の事務所に送ったら凄い喜んでくれて、その後、『ヒコーキもしくは青春時代』(2008年8月発表)や『ヒットパレード』もできたら送ってたんだけど、『ヒットパレード』のレコ発を突然見に来てくれて。たぶん普通にチケットを買って来てくれたんだと思う。その日は二部構成で、ヒロト君は一部が終わって楽屋へ挨拶してくれたんだよ。汗かいて着替えるのに裸でいたら「ヨォ!」なんていきなり入ってきて、「アルバム良かったよ」って言葉に電話番号とメールアドレスを書いた手紙を僕に渡してくれてさ。ヒロト君は事前に何も知らせずにそういうことをしてくれたんだけど、あれはとても嬉しかったね。
──そんな縁もあって、その後の『SESSiONS』でヒロトさんがレコーディングに参加されたわけですね。
マモル:そうそう。「ロックンロール賛歌」と「ペンキ塗りのブルース」にハーモニカとコーラスで参加してくれて。「何かあればここに連絡してくれ」って手紙に書いてあったから連絡してみた(笑)。
──打てば響くというか、自分の信念を貫き通せば届くべきところへ必ず届くものなんですね。
マモル:自分でMAGIC TONE RECORDSを立ち上げて間もない頃だったけど、やっぱり自信につながったよね。『ヒットパレード』といえばその出来事が凄く印象に残ってる。まあ余談なんだけどさ。
──ヒロトさんのザ・クロマニヨンズのように、毎回アナログを出すのはやはり憧れがありますか。
マモル:できれば全部レコードで作りたいくらいだね。僕は最近、家でレコードしか聴かないんだよ。「命の次にロックンロール」を作った時までレコード・プレーヤーをしばらく持ってなくて、自分でレコードを作るのにプレーヤーがないのはマズいなと思ってちゃんとしたのを買ったんだけど、それ以来、家ではレコードしか聴かなくなった。CDで持ってるのもレコードで何枚も買ってるけど、やっぱりレコードはいい。何がいいのかわからないけど、レコードで音楽を聴く行為そのものがいい。音の良さは正直よくわからないけど、あの盤の重さや裏返すとか手間を取るのが愛着につながるのかな。手間だろうが面倒だろうが聴き続けるし、それに飽き足らずにこの先もずっと音楽をやり続けるんだと思う。僕は音楽がないと生きていけない人間だからさ。それが自分にとって一番の生きがいで楽しいことだから、これからもずっと楽しいことだけをやり続けたいね。