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INTERVIEW

トップインタビューMAMORU & The DAViES - 初期ベストアルバム『ヒットパレード』を全曲リミックス&下北沢シェルターでのライブ音源を含むボーナストラック5曲を追加収録した究極の"デラックス版"が堂々の完成!

初期ベストアルバム『ヒットパレード』を全曲リミックス&下北沢シェルターでのライブ音源を含むボーナストラック5曲を追加収録した究極の“デラックス版”が堂々の完成!

2024.10.02

 2009年9月に発売され、息の長いロングセラー作品として愛聴されてきたMAMORU & The DAViESの初期ベスト盤『ヒットパレード』が、『ヒットパレード・デラックス』と改題のうえ15年の歳月を経て復刻される。
 完売につき長らく入手不可という状態が続いていた『ヒットパレード』の再販を新規ファンが強く望むことを受け、ワタナベマモルが選んだのは新旧リスナーが等しく楽しめる極上の一枚にするというささやかなトライだった。15年前に新録された「8月4日B級劇場」「今週週末来週世紀末」「死ぬ程に生きてみる」など精選の15曲を新たに全曲ミックスダウン、楽曲によっては適宜にホーン・アレンジが加えられ、膨大なアーカイブの中から発掘された未発表音源2曲と27年前に下北沢シェルターで行なわれた『想像しよう』発売記念ライブの貴重音源3曲(これが掛け値なしに素晴らしい!)まで収録するという大盤振る舞いにより、濃厚濃密な全20曲がぎっちり詰まった文字通りの"デラックス版"と相成った。
 30年に及ぶMAMORU & The DAViESの歩みを俯瞰する上で、バンドの核となる重要なレパートリーが凝縮したこの『ヒットパレード・デラックス』はビギナーにとってまさにうってつけの作品であり、往年のファンにはワタナベマモルの類稀なメロディメイカーとしてのセンス、時代を超えて愛されるロックンロールの妙味をあらためて堪能できる一作として歓迎されるだろう。また、漫然と再発するのではなく楽曲ごとに新たな彩りを加えるのは聴き比べを楽しんでほしいという彼なりのサービス精神が窺える一方、少しでも進化の証を見せたいといういち表現者としての意地みたいなものも感じさせる。
 依然として年間150本を超すライブを全国各地で敢行する過密スケジュールの合間を縫い、還暦を過ぎてもなお未完のマスターピースを追い求める炎のパブロッカーに『ヒットパレード・デラックス』の制作秘話を聞いた。(Interview:椎名宗之)

音も歌も余計なものがどんどん削ぎ落とされていく

──昨年4月に新曲「命の次にロックンロール」を7インチシングルでリリースして、そのまま新たなオリジナル・アルバムの制作へ突入するのかと思いきや、そうはなりませんでしたね。

マモル:新作作りの準備は常にしてるんだけど、いろいろあってね。メンバーが抜けたり、僕が声帯ポリープになったり。

──喉の調子は今いかがですか。

マモル:だいぶ良くなった。声帯ポリープはこれで二度目で、二度目だと声帯がちょっと固くなるんだよね。まあ、ボイトレしながら何とかやってる。唄うのに細かい部分は多少支障もあるけど、それがポリープのせいなのか歳のせいなのか最早わからない(笑)。

──転んでもただでは起きないのがマモルさんらしいというか、声帯ポリープの手術で1カ月ほどライブを休んだことが『ヒットパレード・デラックス』の制作につながったそうですね。

マモル:うん。『ヒットパレード』のマスターは自分で持ってるし、全曲ミックスダウンしてやりたい放題できたのは自分でレーベルをやってるからこそだね。誰かのレーベルに所属してたらこんな勝手なことはできないわけで。

──2009年に発表した『ヒットパレード』は在庫がなくなって、ツアーの物販でも需要があるので再発しようと考えていたそうですね。

マモル:ありがたいことにね。けっこうな枚数を作ったはずなんだけど、2年くらい前に在庫がないのに気がついて。「8月4日B級劇場」をライブでやると『ヒットパレード』が売れるんだよ。「あの曲が入ってるCDありますか?」って。ちなみに「ロックンロール賛歌」が入ってる『SESSiONS』(2010年10月発表)もとっくに売り切れで、あれも「ロックンロール賛歌」をライブでやると必ず売れた。そういうものなんだよね。

──全曲ミックスダウンして一手間加える試みは、最新のロックンロールが常に一番というマモルさんならではのこだわりのようにも感じます。

マモル:ポリープになってなかったらやってなかったかもしれないけど、手術の後にたまたま暇だったから1曲いじってみたんだよ。「ノーテンキ」とかだったかな。まず『ヒットパレード』のデータを全部起こして、ちょっとやってみようと曲をいじり始めたら面白くなってきちゃって、そのまま止まらなくなっちゃった。

──不要な音をカットしたり、EQ補正(EQ=イコライザー。低音、中音、高音のバランスを調整することで音の印象を変える機能)やリバーブを新たに加えたり。

マモル:ミックスダウンする必要もないといえばないんだけど、ただ再発するのもつまらないしさ。音響に詳しくない人には別にどうでもいい話だし、基本的に当時録った音は変わらないんだけどね。ただ新しいレコーディングもしばらくなかったし、ミックスダウンの勘が鈍るのもイヤだったので。全面的にミックスダウンしてやろうというよりも、最初はちょっと暇だったからやってみたっていうのかな。

──ミックスダウンするにあたって気に留めたのはどんなところでしたか。

マモル:そもそも15年前とは音の処理の仕方が違うんだよね。今の自分のスキルとやり方でいい感じにしたかった。

──当時のレコーディングはすでにDTMが主流でしたよね。

マモル:でもあの頃はまだ手探りだった。今はどうEQしようか、どんなふうにリバーブをかけようかとか意図してやってるけど、当時は勘だったから(笑)。最初はみんな素人だからだいたい勘から始まるんだよ。8トラックカセットMTRで『プライベートカセット』を作った時だってそう。いろいろ試して「なんか上手くいかねぇな」ってところから入る。

──今は勘頼りから脱却して、長年培った経験とスキルを活かせていると。

マモル:こんなリバーブをかけようと思ってやってみたら「やっぱりこのやり方で合ってたな」みたいなね。次のレコーディングでそのやり方が活きたりする。そうやって機材に触れてないと感覚が鈍るんだよね。

──音の調整ばかりではなく、たとえば「8月4日B級劇場」はチューバやトロンボーンの音を足していますよね。

マモル:「百戦錬磨のオトコ」にもホーン・アレンジを加えたりね。「命の次にロックンロール」の時にホーン・アレンジを施した手法が面白かったので、今回もそれを試してみた。管楽器のアレンジはもともと好きなんだよ。そういうのができるようになったのは明らかにソフトウェアの進化だね。「命の次にロックンロール」も「誰が吹いてるんですか?」とか訊かれたので余り大っぴらにしたくないんだけどさ(笑)。

──ホーン・アレンジといっても原曲の良さを邪魔しない塩梅なのが絶妙ですね。

マモル:「8月4日B級劇場」に関していえば、キンクスの中期のサウンドが好きでね。あの時期特有のヨレヨレのトロンボーンとかが凄く好きなんだよ。なんというかイギリス風で豪華じゃない感じ(笑)。

── 一方、「百戦錬磨のオトコ」はソウル・ミュージック調のホーンですが。

マモル:うん。あれは原曲そのままで直球のアレンジ。もともとソウル調のホーンを入れてみたかったのが実現した。

──ミックスダウンしたことで全体的にアコギの音が粒立った印象を受けましたが、その辺りは意識されましたか。

マモル:「今週週末来週世紀末」とかはそうだね。もとの『ヒットパレード』にはアコギが2本入っててね。誰かがやってたコーラス効果をマネしてみたのかな(笑)。それがちょっと過剰な感じもあったので、今回は1本使わずにして。最近は楽器の音を少なくしたいのもあってさ。結局、レコーディングを続けていくと音作りがだんだんシンプルになっていくんだよね。必要な音と必要じゃない音が選べるようになる。リズムがあって歌があって、それにハーモニーがあれば音数が少なくても大丈夫。

──ライブハウスでもそうですよね。ステージの音数が少ないほうが音もクリアで抜けが良いですし。

マモル:最近は歌詞もどんどんシンプルになってきたからね。音も歌も余計なものがどんどん削ぎ落とされていく。

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ヒットパレード・デラックス

発売日:2024年10月2日(水)
定価:¥3,000+税
品番:MAGI-0018
形態:CD
レーベル:MAGIC TONE RECORDS

【収録曲】
01. ヒットパレード
02. 今週週末来週世紀末
03. ロックンローラー
04. 8月4日B級劇場
05. ノーテンキ
06. 恋をしようよ
07. DO THE DAViES
08. 荒川へ行こう
09. オイラの部屋へおいでよ
10. 二人で歩いた
11. ささやかなパーティー
12. 死ぬ程に生きてみる
13. 想像しよう
14. 期待はずれ
15. 百戦錬磨のオトコ
16. オンボロ列車【ボーナストラック】
17. 天才きどり~アコースティックバージョン~【ボーナストラック】
18. 冗談だろ【ボーナストラック】
19. 死んだ奴の事は誰も悪くは言わないさ【ボーナストラック】
20. 誤解【ボーナストラック】
*18, 19, 20は1997年10月28日に下北沢シェルターで行なわれたライブ音源

【トモフスキー(TOMOVSKY)推薦コメント】
いま、聴いてるんだけどさ、
すごい、音、いいー! こうゆう、質感、大好きな感じ。いやぁ、、すごいなあ、マモルくん。
知らないヒトのために、ちょっと言うと、、、マモルくんはライブではグリグリのロックンローラーで、ウワァー! って、ライブキングなんだけど、実はアルバムの音作りにも、すごい熱量、探究心、向上心を持っててね。お互い同じ時期に、自宅での音楽作業みたいのにハマったんだよ。
最初は、カセットのMTRとかだよね? 演奏は生でも、それをアルバムってゆうカタチにする時に、いろいろあるんだよね、楽しい試行錯誤が。それを面倒くさがると、しょぼい宅録になっちゃったり、あるいは、ライブをそのまま録音した方がマシじゃん? みたいなコトになっちゃって、悔しいんだよ。だから、いろいろ始まるの、すごい試行錯誤が! ライブとは別の、でもライブにも負けない感じを目指す作業の旅。長いよー
で、ついに極めたね! マモルくん。この感じ、このやり方だ! みたいなトコに到達したんじゃん?
すごいや。オレは、まだまだだよー。ああ、すごいな、いつのまに!
さすがだよー、ほんと。カセットコンプみたいな古いあったかい感じもありつつ、ちゃんと輪郭とかクッキリしてて、、何よりも気持ちいい! ナイス! わあああ!
って、、やたら、音のコトばかり触れてしまったけど、、メロディとか歌詞とか、もちろんバッチリだから、マモルくんをこれから知るヒトにも完璧だね、このアルバム! ほんとーに、完成、おめでとー!

8月4日B級劇場 〜2024MIX Ver.〜 c/w 天才きどり

発売日:2024年8月4日(日)
定価:¥1,800+税
品番:MAGI-0017
形態:7インチシングルレコード
レーベル:MAGIC TONE RECORDS

【収録曲】
A面|8月4日B級劇場~2024MIXバージョン~
B面|天才きどり

LIVE INFOライブ情報

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ワタナベマモル・ヒットパレードデラックス ツアー2024
10月5日(土)国府津amp
10月6日(日)東大和PuB LOOPS 105
10月8日(火)四日市VEEJAY
10月9日(水)広島おうちバーひらひら
10月10日(木)米子のあ
10月12日(土)尼崎 Dolmen & 遊
10月13日(日)神戸チューリップハット
10月14日(月・祝)小牧Backdrop
10月18日(金)渋川カーサミドリ
10月19日(土)桐生Jazz&Blues Bar Village
10月20日(日)船岡サンセットブルーバード
10月26日(土)横須賀Fuck Yeah
10月27日(日)西早稲田BLAH BLAH BLAH【ゲスト:ドラムスキー(トモフスキー)】
10月30日(水)北見ブルーチッパー
10月31日(木)釧路ガソリンアレイ
11月2日(土)苫小牧JAM
11月3日(日)札幌フライアーパーク
11月4日(月・祝)恵庭モジョハンド
11月5日(火)美瑛町ハーミット
11月7日(木)富良野インディー
11月8日(金)旭川Mr.ウォルシュ
11月9日(土)札幌Cafe 45records
11月10日(日)函館バンドワゴン
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