全ての出演バンドに共通の“熱の色”みたいなものがある
樋口:最初にLOFTに森くんが出てくれた時は20代前半で、私は当時30代でだいぶ丸くなってたけど(笑)、ブライアンは尖りまくってたからね。
森:いや〜、恥ずかしいっすね(笑)。
樋口:(記録を遡りながら)初めてLOFTに出たのは2012年のようだけど、そこから定期的に機材車に乗って来てくれてさ、(当時は)ギラギラしてるっていう言葉が合ってるね。どうしようもない苛立ちとか怒りが良い感じにライブに出てた感じで。
森:懐かしいですね…ギター投げたりしてましたからね。
樋口:今の森くんがちょっと苦笑いするような(笑)ライブの思い出とかもあって、そういう時から見ていた私からすると、それが良い感じにどんどん角が丸くなっていって、歳を重ねると発想が柔軟になっていくのかなって。今、こんなイベントの話ができるようになってるのも不思議だし、いろんな時期を見てきて良かったし、いろんな時期があっても大事な芯の部分がブレることはなくYOWLLがあるんだな、っていう答えに辿り着くと言うか。音もちゃんと進化していて同じことの焼き直しはしてないし、今の自分のモードをちゃんとその時代に合わせて出している印象があるし。ブライアンをあの当時、楽しませてもらった事実は変わらないし、それを経て、今のYOWLLで今の俺はすっごく楽しいよって、今の自分っていうのをちゃんと見せていると思う。
森:嬉しい、嬉しい。仰る通りです、同じことはやらないぞっていうか。ありがたいっすわ〜、ずっと見守ってくれてて。
樋口:そして今回、Enfantsにしてもガストバーナーにしても、以前やっていたバンドがあって。それを解体して、やっぱり音楽が好きだからバンドをやっていく、って新しい活動をやっている。(森と)同じような志のような方も出ていて、それも良いなぁって思いますね。
森:ガストバーナーも出演は即答で。“第二章目”みたいに歩み出しているバンドの苦労も(お互いに)分かってるから、いろんなことを助けてもらったりもしていてありがたいですね。
樋口:それで言うと、今が“第一章目”のようなバンドで、現在進行形で組み立てたばかりのバンドでやっている子たちも混ざってる。
森:若いシーンが本当にメチャクチャ面白いんですよ。初めてまだ半年です、みたいなバンドもいるんですけど、The CheseraseraとかLONEとか、キャリアのあるバンドのライブも観て食らって欲しいところもあるし、逆に、ライブハウスに慣れてる俺たちが若いバンドから食らうものもあるんで。ちゃんと、化学反応が起きて欲しいって思ってますね。
樋口:お客さんにとっても新たな出会いがあるけど、演者にとってはそういう刺激も生まれる1日になりそうだね。
森:(YOWLL FESに)集まる人は多分、全バンド好きやなって勝手に思ってますね(笑)。言語化が難しいんですけど、全バンド共通する…“熱の色”みたいなものがあるんで。
樋口:なるほどね。ラインナップを拝見した時、どういう真意の元ここに集まったんだろう、って気になっていたので聞けて良かったです。“若いシーンが面白い”と言っていたけど、それは関西に関してかな?
森:そうですね、関西で若手の人と(対バンで)当ててもらえることが多いので。関東では、少し揉まれてるバンド・ちゃんと(音楽で)食っていくことを考えてしっかりやってる、みたいなバンドと当たることが多くて。でも、そこに一歩踏み込む前のバンドってメチャクチャ面白い。そういうバンドを観ることで“もっとしっかりせな!”って思ったり、チャラいことを教えても仕方ないし、しっかり音楽を頑張ればちゃんと結果が出る…んじゃないか、っていう姿勢でやらないといけないなって。
樋口:それこそ前、チセツナガラの皆さんから“下道(=一般道)で来てる”っていう話を聞いた時に、すごいなぁ、すごくピュアだなぁと思ったりもしてね。
森:バンドってそんな感じで(笑)、ヨークシンもそんなことを言ってましたよ。ヨークシンは岡山で今頑張ってシーンを作ろうとしててるバンドなんですけど、自分の感覚では今、岡山はオルタナ・グランジが熱くて。岡山には良いバンドがいるって聞くし、中・四国がわりと大きいギターで面白いバンドがいますね。その辺に呼んでもらいつつ、自分も(ツアー等で)連れて行きつつ、ごちゃごちゃ混ぜている感じですね。
樋口:岡山のバンドも来るし、この日は本当にいろんな所から新宿LOFTに集まるね。今の若い世代は自分たちの世代と比べて全然違うんだろうな、っていう意味でも勉強になりそうだから、本当に楽しみしかないですよ(笑)。新宿LOFTでもホールとバーを使った往来型のイベントだったり、他のサーキットイベントとかも増えたじゃない? イベントタイトルは違うけど出演者が被ったりすることも結構あって、それは皆が着目してるアーティストが伸びるタイミングだったりもするからなんだけど。今回の出演者を見て…森くんの意思を入れたブッキングをしてくるって分かってたけど、出演者との関係性もそうだし、答えがちゃんとしていて嬉しかったんですよね。
森:(言わんとすることが)分かりますね、はい。旬のバンドを呼ぶと、もう遅いんですよね。今からが旬です、っていうバンドを探して呼んだ感じもあります。出るバンドは必ず、何か結果を出すと自分は信じてるんで。メチャクチャ良いものを持ってるバンドで、羽ばたいていくだろうっていうバンドばっかりです。
樋口:私じゃあできないなっていう内容にもなってるし、今のLOFTも森くんが言う通りでどんどん、若い人に出てもらいたいっていうのもあるし。森くんの角度から出てきた出演者が今後の新宿LOFTにも必要なんですよ。
森:LOFTのステージは敷居が高い、ってやっぱり皆思ってるんですよね。それは良いことだと思うし、出るからにはちゃんとせな、みたいなパワーがある箱なんで。そういう意味でハードルは高いですけど、自分が入り口になることで多少なりとも身近に感じてもらえたら、と思ってるんで。それはお客さんにとってもそうで、“LOFTってこんな所なんや!”って思ってもらえたらと思って。
樋口:新宿LOFTが今、アイドルの方たちからロックバンドから往年の方、ヴィジュアル系まで、良い意味でノンジャンルの会場なんですよ。その中で、ライブの日に自分のカラーを打ち出していくっていうところで1日1日を出演者の皆さんに作ってもらっているので。その意味では、新宿LOFTでのこの公演が一つのムーブメントになれば良いなって思いますね。
森:自分は“確実なこと”をやりたいんで。集客とかでなく、本当に良いものに人が集まってくるというのが、絶対に大事だと思ってやります。
樋口:高校生以下の学割チケットは1,000円で、破格の値段だしね。若い子はお友達と一緒に来て欲しいですしね。
森:歌舞伎町にドキドキしながらね(笑)。
樋口:新宿LOFTが今年、歌舞伎町に移転して25周年だけど、2年後は(オープンから)50周年になるんですよ。だから今回の出演者で2年後にはまた面白いことができたら良いな、ということも思ったりしますし。2年後には今回の出演者の誰かが(音楽シーンの)真ん中にいるかもしれないし。
森:そうですね、かなり良いバンドが揃ってるんで。後から“こんなすごい日があったんや!”ってなる日やと思います。あと今回、告知用の画像も自分でデザインしたんですけど…樋口さんがボーダーのシャツをよく着てるので、シマシマにしました(笑)。
樋口:本当にありがたいですよ。私はこの日、ボーダーシャツを着て参加しないとですね!