打倒オールディック、OLEDICKFOGGYを超えなきゃソロをやる意味がない
──というか、やはりお二人、とても仲良いですね(笑)。
SUZZY:いつもこんな感じです(笑)。
──今回、SUZZYさんのソロアルバムに小峠さんがサックスで参加されていたり、「2019 ~そして僕ら歩き始める~」のMVにもご出演されていますが、ソロ自体の構想はいつ頃からしていたのでしょうか?
SUZZY:2020年頃ですね。マネージャーから「ソロをやってみないか」と言われて面白そうだなと思ったんです。でもコロナでなかなかできなかったのが、いろいろ落ち着いてきたから本腰入れてやろうかなって。それでオールディック臭のしない人を集めてやろうと思ったんですよね。
──ギタリストのソロアルバムってギターのインストだったりいろんな形があると思うのですが、SUZZYさんのソロはしっかり歌っていますし、SUZZYさんがボーカルを務める新バンドのような印象も受けました。ソロアルバムを作る上でイメージしたものってあったりしますか?
SUZZY:布袋じゃない感じ?
小峠:なんで布袋さん基準なんだよ(笑)。
SUZZY:ギタリストのソロって個人的には成功例があまりないイメージがあって。良い成功例としてhideさんとかじゃないですか。だから俺もソロをやるなら打倒オールディックっていうか、OLEDICKFOGGYを超えなきゃ意味ないと思っていて。そういう意味も含めてなるべくOLEDICKFOGGYから遠ざけた世界をイメージしましたね。
──小峠さんはSUZZYさんのソロを聴いてどんな印象を持ちました?
小峠:物凄く幅広いアルバムだなと思いましたね。
SUZZY:布袋より?
小峠:布袋さんはもういいよ。名前を出すな(笑)。いや、でも思っていたより綺麗な声だなと。今回僕は2曲だけ参加させてもらったんですけど、「1993」だっけ?
SUZZY:「2019」ですね(笑)。
小峠:そう、「2019~そして僕ら歩き始める~」と「ドリフが聴こえる」にサックスで参加しているんですけど、「ドリフが聴こえる」とかは言われなきゃSUZZYが歌っているって分からないですからね。誰かゲストボーカルを呼んだのかなって。それくらい幅広く感じるのはやっぱりいろんな音楽をSUZZYが聴いているからだろうし、それだけ引き出しが多いからなんだろうなって。アルバム全体を通しても一辺倒じゃなく四方八方に飛んでるというか。でもどこか統一感もあるんですよね。
──先ほどSUZZYさんがソロの成功例としてhideさんの名前を出していましたけど、ジャンルや音楽性がどうこうではなく、在り方としてのhideさんのソロっぽさはSUZZYさんのアルバムから感じました。hideさんもSUZZYさんもバンドのイメージとはまた違う幅広いアウトプットの仕方をされていて。
SUZZY:僕もhideさんと同じ横須賀なんですよ。やっていることも違うし、意識はしていないですけど、ソロの成功例が誰かなって思ったらhideさんかなって。布袋さんも良い成功例だと思います。
小峠:いや、大成功だろ(笑)。
──「2019~そして僕ら歩き始める~」は今回のソロを象徴する曲でもあると思うのですが、この「2019」というのは2019年ということですよね? コロナ直前の年だと思うのですが。
SUZZY:そうですね。まあ、いろんな捉え方ができると思うんですけど、コロナを直接的に歌わずに数字で意識させたいなっていう。
──コロナという言葉を使わずにステルス的に感じさせるという。
SUZZY:そうそう。コロナ禍って今思えば大変だったじゃないですか。この曲が売れてくれたら間接的にコロナのことも忘れないなって。
──あの時期、バンドもライブが規制されたり大変でしたけど、芸人さんの仕事もやはり影響は大きかったですか?
小峠:滅茶苦茶大きかったです。僕らでいうと単独ライブはできなかったし、テレビの収録とかも演者と演者の間にアクリルがあったりして本当にやり難かったなって。距離も遠いから話が聞こえないんですよ。リモート出演も多かったから突っ込むタイミングとか難しいし。突っ込みたいのにタイムラグがあるから。
──笑わせることが仕事なのに声を出して笑っちゃいけない空気もありましたしね。
小峠:ありましたねえ。マスクだってみんなしていたし。
SUZZY:そういう時期のことを忘れないための「2019~そして僕ら歩き始める~」ですね。
亡くなったドリフのメンバーに「だいじょうぶだぁ」って伝えたくて
──この曲もですし、アルバム全体的にもですが、昭和だし平成だし令和だなと思ったんですよね。生きてきた時代が全部音になっているような。
SUZZY:曲を作る上でベースとなる曲が実はどの曲にもあって、結構古い曲から探すことが多かったのでそう感じてもらえて嬉しいですね。でもサックスの曲がパッと思い浮かばなくて。それで漁っていたらMen At Workの「ノックは夜中に」に辿り着いて。サックスの代表曲みたいな曲なんですけど、たぶんそこは誰もやっていないなって。
小峠:へー。「ノックは夜中に」ね。
SUZZY:オーストラリアのバンドなんですけど80年代にビルボードで1位を取っているくらい有名な曲で。これを誰にも気付かせないように取り入れたらマネージャーの広中さんに「Men at Workですか?」ってすぐバレるっていう(笑)。
──確かにMen at Workですね。僕はてっきり工藤静香かなと思ったのですが(笑)。
小峠:ああ、なるほど!
──そういう音楽の聴き方って面白いですよね。「ドリフが聴こえる」はKING CRIMSONですし。そこに小峠さんのサックスも入ってくるし、ドリフだしっていう情報量の多い曲で。
小峠:この曲、「ドリフが聴こえる」ってタイトルになったんだね。
SUZZY:そうなんですよ。
──小峠さんにとってドリフはどのような存在ですか?
小峠:ドリフは僕が最初に触れたお笑いかもしれないです。僕ら世代って、ドリフがあって、『ひょうきん族』があって、『ダウンタウンのごっつええ感じ』があって、その最初のお笑いがやっぱりドリフなんですよね。だから笑いの基本というか、今、いわゆる「ベタ」と言われているものを一番最初にやった方々だと思うんですよね。
──今スタンダードになっている言葉が実はドリフから生まれた言葉だったりもするじゃないですか。そういうお笑い以外のところにも影響を与えまくっているのは凄いですよね。
SUZZY:「最初はグー」とか。
小峠:確かにそうだ。今当たり前になっていることが当時は凄く革新的だったし、『8時だョ!全員集合』を生放送でやっていたことも凄いですよね。加藤茶さんから聞いたことがあるんですけど、生放送だから絶対に放送時間内に収めなきゃいけないから、アドリフとか入れると舞台袖からすぐ巻きのサインが出るみたいなんですけど、ある日、始まった瞬間に巻きが出ていたみたいで(笑)。まだ押してもいないのに(笑)。
SUZZY:先を読んでいたんでしょうね(笑)。
──ドリフって僕ら世代の共通言語でもあると思うんですよ。この曲を聴いてどうしてもドリフの皆さんが全員集合していた時代を思い、涙が出てしまいました。
SUZZY:ドリフって僕らを思いっきり笑わせてくれたじゃないですか。でも既に3人のメンバーが亡くなっていて、彼らが笑わせてきたこの世界を見たらなんて思うかなって。だから「だいじょうぶだぁ」って伝えたくて。
──その曲に小峠さんがサックスで参加されていることにも意味を感じますが、小峠さんはもともとサックスをやっていたのですか?
小峠:いや、始めたのは4年前くらいですね。『BLUE GIANT』っていう漫画がきっかけで。ジャズ自体はもともと好きでしたけど『BLUE GIANT』を読んですぐ始めました。