『New Vintage Axis』というタイトルに込められた意味
──鐵槌はどんなセットになりそうなんでしょう?
昭司:いつも通り、フラットな感じだね。どこでやっても誰とやってもそうだし、自分たちのやるべきことをただやるだけ。古い曲をやるとか、何か特殊なセットは考えてない。この日に来るオーディエンスは俺たちの客とだいぶ毛色も違うだろうし、そういう人たちに対して現状の鐵槌を見せて純粋に判断してほしいから。だって俺たちの古い曲をやったところで、鐵槌を知らない人たちには何の意味もないでしょう?
──鐵槌は今回の公演に合わせて、昨年発表したアルバム『士』(さぶらい)のタイトルトラックをミュージックビデオで公開するそうですね。
昭司:うん。本当はもっと早く公開したかったんだけど、なかなかタイミングが合わなくてね。でもアルバムを配信するので、ちょうどいいのかなって。ぜひこの機に音、映像を多くの人と愉しめればと思ってる。これも踏まえてのセットで臨むよ。
──鐵槌の東京でのライブは当分ないそうなので、今回のライブを逃すと当面見られませんね。
昭司:来年はアルバム用に曲を作ろうと考えているので、主だったライブをいくつかやる形にして、ライブをやるスパンをなるべく開けようと思ってね。
Atsuo:(iPhoneの動画を見せながら)これ、このあいだシェルターでやったCOCOBATとSMASH YOUR FACEのライブなんだけど、DJで出演していたベッド・インのちゃんまいが鐵槌の曲をかけてたんですよ。
昭司:へぇ。そう言えばFUUDOBRAINがSNSでそのイベントの告知をしていたよね。
──FUUDOBRAINと言えば、今回はFUUDOBRAINが制作するオフィシャルイベントTシャツも販売されるんですよね。
昭司:バックのバンドロゴとか、そうそう見ない並びだから面白いし、レアな一品になると思うよ。
──さて、本編のトリはenvyとなるわけですが……。
Atsuo:その話に入る前に、今回のイベントを仕掛けたのが昭司さんだってことをここで話しておいたほうがいいんじゃないかな?
昭司:このあいだゴッタツとも話したんだよ。“〇〇 presents”とかちゃんと銘打ったほうがいいんじゃないか? って。
後藤:最初はそういうのはナシで、っていう話だったんだけどね。
Atsuo:僕はそういうのはちゃんとしたほうがいいって散々話してきましたけど(笑)。
昭司:それは知ってる(笑)。
河合:“〇〇 presents”で一番しっくりくるのは鐵槌だよね。最初に僕に声をかけてくれたのは昭司さんだったから。昭司さんは20数年前から知ってる先輩だけど、歳も離れてるし、シーンも違うし、接点もなかったんですよ。それがコロナになる前、あるきっかけで一緒に飲むことになって、そのときに僕らに興味を持ってくれていることを知って。で、コロナが収束に向かう頃に「ノブ、そろそろやるか?」と声をかけてくれて。とは言え、いきなり鐵槌とenvyの2マンだとそれもかなりの劇薬だなと思ったし(笑)、昭司さんと対話を重ねていくうちに良い日程で良いハコが取れたので、じゃあやるかと。それでBorisとBAREBONESに声をかけて、OKをもらって。そもそも昭司さんが声をかけてくれなければ今回の企画はなかったし、もし“〇〇 presents”を打ち出すなら、やっぱり昭司さん発信だったから“鐵槌 presents”となるべきだと思う。
昭司:そうなるか。
Atsuo:最初のミーティングで“〇〇 presents”と表明しないようにしようみたいな流れになっちゃって、それからが大変だったんです。昭司さんが仕切ってくれないから(笑)。
昭司:だって、大バコの動かし方っていうものがあるじゃない? そういう経験はenvyとBorisのほうがあるし、俺としては動向を見ながらじゃないと表立って動けないわけだよ。いつもやってるハコのキャパとは全然違うし、だから大バコなりの動き方をAtsuoに聞いたりとかしたわけ。
田中昭司(鐵槌 -Sledgehammer-)
──そうした企画の成り立ちや趣旨、当日のトピックなどを伝えるのがこの座談会の意図なので、結果オーライでしょう。『New Vintage Axis』というイベントタイトルも実に秀逸だと感じましたが、これはどなたの発案だったんですか。
Atsuo:4人で話し合って決めました。
昭司:あれがいい、これがいいって。
Atsuo:それもまず、昭司さんにいくつかタイトルの候補を考えてもらって、それをみんなで擦り合わせて決めました。
昭司:ノブが「メールでは何なので、みんなで顔を合わせて決めましょう」って言ってね。
──“Axis”=“軸”という言葉が文字通りイベントの基軸ですよね。
河合:“New Axis”=“新しい軸”に“Vintage”=“年代物の、上質な”という言葉を足しているのがミソって言うか。僕らも歳を重ねて枯山水のような境地ですから(笑)。
Atsuo:4組のバンドが一つの軸を持っているという意味合いもありつつ、それぞれが違う4つの軸を持っているということでもありますよね。90年代前半からバンドを始めて生き残ってきた4組だし、それぞれが共通して大事な軸を持っていたっていうのを言い表しているんです。
昭司:“生き残り”っていうのが大事だね。死に損ないじゃなくて“生き残り”。
──30年ものあいだ点在していた“軸”が一本の線となって今日まで続いているという解釈もできますね。
昭司:(河合に)もう30年も経つ?
河合:BLIND JUSTICEから数えると、30年は超えてますね。