30年ものあいだバンドを続けられたのはなぜか
──ちょっと話が逸れますが、なぜここまでバンドを続けてこられたと思いますか。
河合:考えたこともないですね。僕らはいろいろあって、続けられなさそうな時期もあったけど、いろいろ乗り越えてやってこれたのは、やっぱりバンドが好きだからじゃないですかね。僕にとって音楽は少なくとも仕事ではないし。もちろん仕事としてバンドをやるのがダメってことではなくてね。たとえばBorisはバンドを生業としているけど、音楽との向き合い方は人それぞれだから。音楽をやめようと思ったことはないな。続ければ続けるほど大変だけどね。
Atsuo:続ければ続けるほど、ある時点からやめられなくなるよね。
河合:そうですね。続けていく責任も増えていくから。
Atsuo:そこまで続けると自分たちの歴史が支えてくれるものがあると言うか、その歴史から外れるのが難しくなっちゃうところもあるし。
──Borisの場合、海外へ行くたびに新規のオーディエンスを増やしている印象がありますよね。
河合:あの増え方は異常だよね。海外へ行くたびにフォロワーが1万人くらい増えるらしいから(笑)。……あ、わかった。バンドをやめられなかった理由。それは、昔作った曲を弾けなくなるのがイヤだったから。今やめたら若いときに作った曲を一生弾けないんだと考えたら、やめられなかったですね。
Atsuo:そういうのあるよね。曲は自分たちの子どもみたいなものだから、演奏しなくなるのは子どもを殺すのと同じようなものだし。「どのアルバムが一番のお勧めですか?」ってよく聞かれるけど、自分たちの子どもに優劣はつけられないよね。
河合:「三男が一番です」なんて言わないもんね(笑)。
後藤:(昭司に)そんなこと考えたことある?
昭司:全然(笑)。
Atsuo(Boris)
後藤:俺は単純にバンドが好きだし、やめる理由もなかったね。一時期、仕事や子育てで全然動かないこともあったけど、またやらなきゃと考えてたし。
Atsuo:BAREBONESは15年振りに3枚目のアルバムを出すくらいのペースだから(笑)。でも後藤さんもこれまでのバンドを数えたら30年以上でしょ?
後藤:広島時代の高校生から数えたら40年だよ(笑)。まあ、何も考えてないよね。バンド抜きの人生なんて考えたことがない。特定のジャンルとかじゃなく、いつもバンドとして何かやっていたいんだろうね。別にハードコアじゃなきゃいけないってことはないし、今はたまたま3人でBAREBONESみたいなバンドをやってるってだけでさ。
昭司:そうだよね。音楽が好きって言うよりもバンドが好きなんだと思う。バンドでライブをやるのって異空間でしょ。普通の生活からかけ離れたものだし、この歳になってもまだまだ楽しめるものだから。バンドみたいに面白いものってなかなかないよね。
河合:バンドのメンバーと言っても赤の他人なんだけど、それがいくつになっても一緒にワイワイできるのがバンドの凄いところだよね。朝まで肩組んで飲んで、年齢関係なくどれだけ言い合いをしても最後は笑顔で帰れるなんて、バンドくらいなものだし。
Atsuo:「この音楽が好き」という共通点だけで、ずっと一緒に過ごせるわけだからね。そういう数値化できないものって社会の中で蔑ろにされがちだけど、音楽の力は軽視できないものだと思う。
後藤:音楽は凄いよ。言葉は関係ないもんね。
河合:そう、海外へ行くとより実感する。いろんな国の人たちが観に来てくれるし。
Atsuo:日本語で唄っていても当たり前のように聴いてくれるしね。
昭司:海外のバンドだって鐵槌のカバーを日本語で唄うから、言葉は関係ないよね。