良い違和感が出せた
――映画は監督が主導権を握る部分が舞台に比べて多いイメージですけど、そこも関係しているんでしょうか。
内田:それは昔の邦画界のイメージですね。今は話し合いをして進めています。僕は良いことだと思います。映像業界は何故かプロデューサーと対立関係を作りたがりますけどね(笑)。
――同じ作品を作っているなら、対立しなくてもいいですから。
内田:意見を出し合って、良いものを取り入れればいいんです。
米田:監督とプロデューサーはいい関係を保っている人が多いと思います。内田監督は一緒にやっていても意見を聞いてくれる方です。最終的にその意見を取り入れるかの選択は委ねますが、話し合いは重ねています。
内田:一人の人間の感性で創ることが作家だという時代もありましたが、皆さんが想像しているよりも話し合いがもたれています。
――とはいえ、今作のように監督が二人となると大変そうですが如何でしたか。
米田:片山慎三監督・内田監督お二人のいい色が出ながら融合されているので、上手くいったと感じています。二人だからこそ、先ほどおっしゃられていた一言では言い表すことが出来ない部分に繋がっていると思います。『探偵マリコ』では良い意味での違和感がありますが、それは今の日本映画に足りない気がしているので。二人の監督だからこそ良い違和感が出せたのではないでしょうか。
――そうですね。それぞれに特徴があって、観ていて楽しかったです。
内田:そんなに違いましたか、僕は意外に似ているなと思っていました(笑)。そういいながらも、片山監督はこう来たかと思う部分もあって楽しかったです。
米田:役者のみなさんが、二人の感性を一つにしてくださったなと思いました。
――複数の監督で撮ろうというのはどなたのアイデアなんですか。
内田:僕がずっとやりたかった事なんです。最初は十人くらいでと考えましたが、さすがに難しいということで二人になりました。
米田:十人で同じ物語をリレーしていく作品もいつかやってみたいですね。
――歌舞伎町という舞台がそういった作品とも合っていますね。
米田:日本は面白いですよ。海外で歌舞伎町みたいな街はないですから。
内田:夜中の1時にあんなに人が居る街はないよね。
――歌舞伎町だとこの映画に出てくる忍者のような変な人たちも違和感がないですね。
内田:忍者はいるそうですよ。その話から着想を得て登場したキャラクターです。監修してくれた方も新宿のお店をやっている方で、本人たちはいたって真面目なんです。
米田:そうですね。みんな、自分の正義に向かって真っすぐ生きているから。
エンタメを求めているなと感じます
――久々にご一緒されたのが信じられないくらい、通じ合っていますね。
内田:久々に一緒にやって、米田さんはいつでも映像の世界に戻ってこれるなと思いました。徐々に大きいものもふっていきたいなと思っています。米田さんは物事もはっきり言ってくれるし、ありがたいです。映像業界は人材不足なので戻ってきて欲しい。
米田:今回のお声がけはありがたかったです。私も今の立場になって、舞台で活躍している役者さんやスタッフさんが映画やドラマに挑戦する場所をいつも作りたいと考えているので。
――違うジャンルを経験することで、フィードバックされることがありますからね。
内田:『探偵マリコ』では、姉妹を演じていただいた中原果南さん・島田桃依さんなど舞台で活躍されている役者の方に出ていただきましたが、刺激を受けました。舞台で鍛えてきた人は力がありますね。海外では舞台と映画の垣根がないですが、日本はまだわかれている部分があるのでそれを融合させていきたいと思っています。
――クロスメディアすることで、あの役者が出ているから舞台を見に行こうとなるきっかけにもなりますから。そこでお客さまの循環も生まれ、知らなかった世界に触れるきっかけにもなりますね。
米田:舞台に携わっていると、お客さまもエンタメを求めているなと感じます。あとはキッカケですね。
――1度体験してみないと分からないですから。
内田:今だと映画でも配信で見ようかってなりますからね。
米田:大スクリーンで観る・生の舞台で観るという醍醐味を経験してほしいです。キッカケがあれば今の人もそういう楽しみ方を知ってくれると思うんです。
――その通りです。
内田:僕は実は小劇場の経験がそんなにないので、舞台出身のみなさんとご一緒したのは刺激的でした。