頭をかきながら魂を込めて
――心にグサッと来るかと思えば、結婚式のスピーチで感動したりして、その物語のバランスも素晴らしかったです。それはみなさんの自然体の演技だからこそより響いたんだと思います。
的場:役者の力もありますが、市井監督がそれだけ思いを込めたからそう感じていただけているんです。市井監督は本当に1カットごとに頭をかきながら魂を込めて撮影していました。もちろん、役者も良いものを観てもらいたいからそれぞれ役作りして集中して入っていきますけど、市井監督が最善のものを届けたいと悩む姿を観ていたのでその想いにこたえたいと演じていました。
――1カットごとに悩まれていたんですね。現場で市井監督とはどのようなお話をされたのでしょうか。
的場:細かい芝居に関しては修正をもらいましたけど、役に関して激論ということはなかったです。表情をもう少し押さえてくださいなど本当にちょっとしたことなんです。
――ニュアンスの差ということですね。
的場:そうです。間としても半間もなく、もっと短い間なんです。そこまでこだわるというのは素敵じゃないですか。そういうやり取り、姿を見て、市井監督は素敵だなと思いました。本当に頭をかきながら台本を見つめている姿が素敵で愛らしい、本当に本気で考えられているんだなということがその姿から伝わってきました。
――本当に、熱意を込めて作られた映画なんですね。
的場:市井監督だからこそできた作品だと思います。その姿を役者やスタッフは全員観ていました。「お前ら行くぞ」というタイプではないですけど、僕たちもこの想いに答えないといけないなと感じましたね。
余:集中していることは伝わっていたので、市井監督の言葉には説得力がありましたね。
――その皆さんの想いはスクリーンからも伝わってきました。
余:こんな鬱々とした時間が流れている日々ですけど、仲間や家族を大切にしたいという温かい気持ちになる作品になっているので、多くの方に楽しんでいただければと思います。
的場:僕はこの作品を通して、空気のような存在という意味を改めて知ったような気がします。今まで空気のような存在というのは、居ても居なくても変わらない存在のことだと思っていました。でも、空気というのはないと死んでしまうんです。今は空気のような存在というのは居ないと死んでしまう空気くらい大切な存在だという捉え方に変わっています。ご結婚されている方はこの映画を通してお互いのパートナーということを改めて感じていただけるんじゃないかなと思います。色々な愛の形があるじゃないですか、結婚している方・事実婚を選ばれている方・同性同士、この作品にはそんないろんな愛の形が集約されています。そこを観ながら愛というのはどういうものなんだろと考えるきっかけになってくれればと思います。そして作品を観て笑ってもらえたら一番嬉しいですね。
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