フジロックに携わることはライフワークの一つ
──去年はコロナ禍を経て1年ぶりのフジロック開催でしたが、やはり感慨深いものがありましたか。
池畑:開催自体はもちろん嬉しかったけど、ロンドンチームがいなかったからね。俺には彼らの存在が凄く大事だし、毎年苗場で元気でやっている姿を見るのも含めてフジロックなので。今年はジェイソンとゴードンは来られそうなんだけど、他のメンバーはまだ難しいみたい。でも各自が今やれることをやって来年につなげればいいと思っているから。ステージ以外にもロンドンチームが作るサーカスやパレスみたいな遊び心に溢れたスペースがあるのがフジロックらしさだと思うし、他の国内フェスでは味わえないものだよね。
──唯一無二ですよね。モアファンエリアはそれなりに手が込んでいるけどハンドメイドの温かさがちゃんと感じられて。
池畑:そうだね。それがゼロから作り上げられるまでを見て感化されるし、俺もまた頑張ろうって気になる。ここまで来たらフジロックに携わることは自分のライフワークの一つだよね。
──ジプシーズもコロナ禍を経て『Honest I do』というクアトロツアーを開催するに至り、いろいろと復活の狼煙を上げるタイミングですね。
池畑:ジプシーズはツアーの前後でレコーディングに入る予定だったんだけど、ちょっと時期が合わなくてね。早ければ8月、もしくは9月にかけてやれればいいなと思ってる。花田も下山(淳)も細かく動き出したから、みんなのスケジュールを擦り合わせるのが大変なんだよ。俺としては常にバンドとして動ける態勢にしておきたいし、彼らにはそう提言したいんだけどね。俺自身はこうしてフジロックに関わらせてもらいつつ、バンドはバンドでしっかり継続させたい。そうやって気に留めておかないと、あっという間に時間が過ぎてしまうから。コロナ禍のこの2年もそんな感じだったしさ。
──あと6年ほどしたら、また『BIG BEAT CARNIVAL』を開催していただかないといけませんし(笑)。
池畑:それは今のところ何も考えてない(笑)。磔磔でやったとき(2018年10月に開催された『BIG BEAT CARNIVAL IN 磔磔SPECIAL 3days』)は「次にやるのがまた10年後だとみんなくたばってるかもしれないから、5年後にやろうか」なんて話していたんだけど。
──となると、来年(2023年)開催ですね。
池畑:…やっぱり10年後でいいかな(笑)。
──“ROUTE 17”に限らず、演者としてフジロックで今後やってみたいアクト、セッションの構想はありますか。
池畑:2017年の“ROUTE 17”ではエルヴィン・ビショップに、2019年の“ROUTE 17”ではホットハウス・フラワーズのリアム・オ・メンリィに入ってもらったことがあったけど、あんなふうに海外のミュージシャンとのセッションを増やしたい。コロナ禍になる前の3年ほどは日高さんと一緒に海外へ出かけて、面白いバンドがいたらフジロックに出ないかと声をかけていたんだよ。エルヴィン・ビショップやホットハウス・フラワーズもその中で出会った人たちでね。エルビンには自身のヒット曲の「Fooled Around and Fall in Love」を、リアムにはカーティス・メイフィールドの「New World Order」をそれぞれ唄ってもらったんだけど、凄く良かった。観客としてまっさらな気持ちでライブを観るのはやっぱり凄く大事だし、刺激を受けるね。体力、気力はまだ充分にあるし、プレイも自分ではどんどん良くなっている手応えがある。それを若い世代が見てどう感じるんだろうという視点も絶えずあるね。だから国内外のフレッシュな音楽には常に触れていたいし、それを“ROUTE 17”にフィードバックしたい。“ROUTE 17”は自分の音楽人生を凝縮させたようなステージだから。その前の年に自分が取り組んだことや培った人脈が翌年のステージに活かされたりするからね。
──いっそのこと、“ROUTE 17”がステージごと海外へ進出しても良い気がしますね。世界でも充分通用するでしょうし。
池畑:それもいいね。数年前、日高さんやロンドンチームの面々とグラストンベリー(・フェスティバル)に行ったときに狭いスペースでセッションがあって、全然盛り上がってなかったんだよ。それで俺がドラムで入って、即興でホワイト・ストライプスの曲を合わせたら凄く盛り上がってさ。それが俺の“グラスト・デビュー”(笑)。凄く楽しい経験だったし、向こうでやるのは望むところだね。まあ、海外でやるときもまた日高さんに「やるのか? やらないのか?」って言われそうだけど(笑)。