多くの映画ファンに支持された『ニワトリ★スター』がフェニックスとして復活。インスタグラムで公開されたリモート短編作品『ありがとう』から動き出し雨屋草太と星野楽人の旅する姿が描かれている『ニワトリ☆フェニックス』。今だからこその形で再構築された本作にはどのような思いが込められているのか。監督・脚本を務めた、かなた狼に話を聞いた。
[interview:柏木 聡(LOFT/PLUS ONE)]
二人から自然に出てくるものであれば間違いない
――『ニワトリ★スター(以下、スター)』がバイオレンスな内容でしたが、『ニワトリ☆フェニックス(以下、フェニックス)』は真逆の青春ロードムービーで最初は混乱しました。
かなた(狼):真逆ですよね(笑)。『フェニックス』はPart2でもないですし、僕は再構築ムービーと読んでいます。
――『フェニックス』は短編『ありがとう』から始まった作品ということですが、もともとこういう物語を撮りたいという構想はあったのでしょうか。
かなた:それはなかったです。一度目の緊急事態宣言の時に全てが止まってしまったことで、アイデンティが崩れる瞬間というか、存在意義を感じられなくなってしまったんです。それは制作陣だけでなく俳優もそうです。
――今までの当たり前が崩れてしまいましたからね。
かなた:僕らの仕事はいろんな人から応援をしてもらうことで輝かせてもらっているので、いままでに貰った光を返すことが大事なんじゃないかということで、井浦(新)さん・成田(凌)さんと三人で何かをしようとなったんです。
――この三人なら『ニワトリ』だろうと。
かなた:はい。そこで禁じ手になりますが、もし(星野)楽人が生きていていたらという形で、(雨屋)草太と楽人がリモートで自粛をしているという作品をつくりました。それがありがたいことに多くの方にご好評頂けたので「また何かやろう」と動き出しました。そこで、映画なら前作で死んでしまった人間がもし生きていたらという世界を描いてもいいんじゃないかと思ったんです。それは映画だからできるんじゃないか、そういった寛容さも大事なんじゃないかと思って動き出しました。
――再構築の物語はどのように構成はされていったのでしょうか。
かなた:僕の感覚では脚本7割・アドリブ3割という感じです。二人のやり取りなんかは脚本にない部分もあって、撮影の場で起きたことを取り入れていきました。『スター』の時に井浦さんと成田さんは実際に撮影前に同居をしていて、そういったものを経た絆もあったので二人から自然に出てくるものであれば間違いないなという感じですね。
――そうなんですね。
かなた:ただ、『フェニックス』をこの形で撮ることには不安もありました。
――不安というのは。
かなた:『ありがとう』の時に三人で盛り上がっていましたが、ほかのみんなから「なんでそんなことをやるの。」と言われるんじゃないかと思ったんです。
――前作があの終わり方ですからね。
かなた:実際はみんな「やろう、やろう。」と言ってもらえました。奥田瑛二さんからも「またやれるんだな」と言っていただけて凄くありがたかったです。
再会を喜ぶ空気感を一番大事にしました
――みなさんにとっても待望の作品だったんですね。今作は旅に出ているということで、外に向かって行く物語ですが、そういった展開はコロナ禍ということの影響もあるのでしょうか。
かなた:あります。いま一番できないこと、旅する気持ち良さを映画で届けたいなと思ったんです。
――前作『スター』もそうですが、かなた監督の作品はすごく丁寧に物語を積み重ねられているなと感じました。そういった積み重ねを大事にした物語の描きかたというのは監督のコダワリからなのでしょうか。
かなた:そこは自分の感覚なので分からないです。この『フェニックス』は映画のセオリーも無視しているところもあるじゃないですか。そういった荒っぽいところもある中でも、空気感や台詞を大事にしたいという思いはあるので、そういった部分を感じていただけたのかもしれないです。
――前作と真逆のストーリーですが、作品を観られたみなさんの反応はいかがでしたか。
かなた:喜んでもらえていました。前作の『スター』は初監督の作品だったので、あれだけのキャストの方と対峙しないといけないという気迫しかなかったです。その時のメイキングを観てみると「こんな奴がいるとしんどいな。」と自分でも思ってしまうところもあります(笑)。今回はそんなことなく、同窓会みたいな感じで、現場でも楽しくやれました。
――そこはフィルムからも伝わってきました。絆が出来上がっている人たちが集まってまた楽しいことをやろうとしているんだな、幸せな映画だなと感じました。
かなた:キャストの人たちも次々に来て、再会するごとに喜びあって、そのまま撮影という感じでした。そこが上手く作品に出ていたということかもしれませんね。現場では再会を喜ぶ空気感を一番大事にしました。なので、演出をしたという感覚はあまりなかったです。
――みなさん自然体で演じられたということですね。
かなた:そうですね。映画はスタッフさんたちも含めていろんな人たちの人生の時間が集結してくるじゃないですか。
――そうですね。
かなた:狼組と僕の名前が入ったチームではありますが、それは名前が付いているだけで実際はチームがあっての作品作りなので、その一体感を感じていただけたらと思います。『フェニックス』での草太と楽人の旅と、狼組の『スター』からの旅の重なったという部分を感じ取っていただけたらと思いますね。