いろんな力が重なっていくということが、凄く大事なこと
――俳優ではない方も多く参加されていますが、みなさんが作中のキャラにばっちりとはまっているのもそういった一体感があるからこそなんですね。
かなた:ありがとうございます。いろんなジャンルの方に出ていただくのは僕の作品の特徴の一つなのかもしれないです。プロの方が生み出すクオリティーの凄さはありますが、そうじゃない方でも面白い人はたくさんいますから。
――わかります。
かなた:世間的に言うとメジャーな役者さんもいれば、そうでない人もいて、そういう人たちがこの映画で共存し交流も始まる、こうゆう感じで新しい日本のエンターテインメントが始まればいいなと思っています。
――今は個人で発信できるので、知らない文化圏に触れる機会を知る、繋がりを持ちやすい時代でもありますから。そういった面でも今の時代にあったキャスティングなのかもしれないですね。
かなた:僕はそうやっていろんな力が重なっていくということが、凄く大事なことなんじゃないかなと思っているんです。このキャスティングは僕の価値観の提示みたいなところがあるかもしれませんね。
――作品に触れるということはその作家の人間性が見るということであり、それが面白さの一つでもあると思うのでぜひぜひこれからもその点を出していってもらえればと思います。
かなた:ありがとうございます。
――そういった考え方の提示に繋がる部分でいうと、火野(正平)さんがお寺でお話しされていた「過去の意味は変わる、今は瞬間で未来に移り変わる、未来は今、今がすべて」という台詞が印象的でした。ふだん当たり前になってしまっていることに気づかせてくれる言葉で素敵だなと思いました。ほかにも数々の台詞が詩的で素敵だと感じました。台詞をつくられる際に大事にされていることはあるのでしょうか。
かなた:僕は脚本を書く際に何かしら自分の中にある感覚をベースに書くところがあります。今の火野さん台詞もコロナ禍の期間が僕にとってこれまでを振り返る時期にもなったので、そういう自身の中にある感覚が表れたということなのかもしれないですね。「過去・現在・未来」という部分は僕自身が考えてきたことで、いまを大切にすることが凄く大事なことだと思っています。そういう気持ちを持って行かなければと自分自身に言い聞かせている部分でもあります。
――素晴らしい考え方だと思います。先ほど脚本は七割で、後の三割は役者さんに任せていたということでしたが、実際の撮影で出てきたキャストさんの台詞で印象深かった事はありましたか。
かなた:台詞ではないですが、撮影で印象に残ったことはあります。それは旅の終わり海辺の夕方のシーンなんですが、空に火の鳥があらわれたんです。作品を観た方の中には、あれはCGだと思われた方もいましたが実際に起きたことで、雲と夕日のコントラストが火の鳥のようになったんです。それを実際の現場で見たときは神様からの贈り物をもらったようで、作品の成功を確信した瞬間でもあります。
――あれは実際に起きたことだったんですね。天が味方をしてくれたといっても準備していないと掴めないものですから、みなさんが真摯に作品に向かい合ったから撮影できたことだと思います。
かなた:伊勢志摩は神様の地でもあるので、映画の神様が微笑んでくれたなと思いました。あの空が出た時は現場も異様な雰囲気に包まれましたね。その時だけは我儘を言って、オープンカーに乗って井浦さんと成田さんと一緒に移動しました。コロナ禍で心の中につかえていたものが取れたような気持ちになりました。
――みなさんにとっての再生の物語になる部分でもあったんですね。
かなた:そうですね。今回、映画がもたらす力というものをすごく感じています。こんなことがあるのかと僕らも感じていて、祝福を受けられたんだなと思っています。作中の台詞にもありますが今を繰り返したものが未来に繋がっています。社会というのはいろんな人たちがいろんな形で繋がっていて、それぞれにエネルギーを発して進んでいるものだと思います。この『フェニックス』を観て、あの空を観て、この作品がみなさんの前進する力になると嬉しいです。
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