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INTERVIEW

トップインタビューKOZZY IWAKAWA - 自身のルーツを探訪した音の時間旅行が伝承するロックンロール温故知新【後編】

自身のルーツを探訪した音の時間旅行が伝承するロックンロール温故知新【後編】

2022.02.16

今やロック後進国である日本はロックを捨ててしまった

──そんな話を伺うと、岩川さんの世代からAKIRAさんの世代へ良質なロックンロールがきちんと受け継がれていくことの大切さを改めて実感しますね。

KOZZY:その伝承のきっかけの一つとして『R.A.M』を作ったつもりだし、ここ14、5年の間に作り方も録り方もバラバラだったものを整えて、鑑賞に堪え得る一つの作品として今こそ一般流通するべきだと考えた。昨今の音楽番組を見ていても今の日本におけるロックンロールの在り方がだいぶおざなりになっているのを痛感するし、本当にこのままでいいのか?! と思うしさ。もちろん僕が好きなものは本来主流じゃないし、地上波のメジャーな番組とは縁がないわけなんだけど、音楽の在り方としてどうなんだろうとは感じる。そこで僕としては自分の主義主張というよりも、古き良き音楽を伝えつつも次の段階へ進めるようなものの一つとして『R.A.M』を正規盤として出すべきだと思ったんだよね。みんなが心の底から好きな音楽を体現して、これをどうしても作りたいんだという強い心意気でやっているなら別にいいんだけど、なかなかそんなふうには感じられない。日本ではそんな状態がだいぶ長く続いているし、随分と長いこと進歩していないよね。

──日本経済と同じく長期低迷にあるのは否めませんね。

KOZZY:僕が最近愕然としたのは、ロックのレコーディングに必須であるニーヴ(Neve)のコンソールがフルで常備してあるスタジオが日本にはもう存在しないってこと。今や全部デジタルに置き換わっていて、もちろんデジタルへ移行すること自体はいいんだけど、ニーヴのコンソール卓は世界中のレコーディング・スタジオでマスト中のマストなわけ。古い機材だから手もかかるし、もっと便利なコンソールは他にいっぱいあるけど、ニーヴのコンソールがロックには絶対欠かせないサウンドを担ってきたのは紛れもない事実なんだよ。そのコンソールが日本にはもうない。それはつまり、日本はロックを捨てたってこと。僕はその事実を知って一気に冷めてしまって、もはや日本にいる意味がないと実感した。もちろん維持費もかかるし日本の住宅事情もあるんだろうけど、いくら何でもそこは切り詰めちゃダメだよ。ロックのバンド・サウンドはまずニーヴのフルコンソールありきなんだからさ。日本の業務スタジオで今やそんな場を提供できる所がないなんてどうかしている。別に僕みたいにテープで録れとは言わないし、パソコンで録れるならそれで構わない。だけど音楽にはパソコンじゃ代わりにならないところが絶対にあるし、目には見えないものや音にも聞こえないようなところに神が宿るものなんだ。それを忘れちゃいけないよ。

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──便利なものに飼い慣らされた挙句に本当に大切な核となるものを切り捨ててしまうようでは、AKIRAさんたちの下の世代にまで伝えるべき何かが行き届かなくなる可能性が出てきますよね。

KOZZY:ここ何十年も景気がずっと後退し続けているのも関係しているんだろうけど、日本は今となってはロック後進国なんだよ。アジアの国々の中でもだいぶ下だね。日本の平均賃金も30年間ずっと横ばいだと言うし、日本が裕福だと思っているのはおっさんだけだよ。日本は経済的にも文化的にももはや全く豊かじゃない。このコロナ禍の中で世界中のミュージシャンが活動自粛を余儀なくされているけど、巣ごもりする中で充実した創作活動に打ち込めている人たちはアメリカやイギリスに確実にいる。だから何も悪いことばかりじゃないし、音楽は水面下で凄くいい形で進化をしていると思うし、世界中のアーティストが自分たちの創作に向かう姿勢を見つめ直すいい機会にもなっている。ルーツに根差した音楽をやる連中が増えたり、メインストリームの音楽の中にも70年代のソウルをふんだんに採り入れたものが増えたり、音楽はこれからもっと面白くなると思う。そんな世界的な現状の中で、音楽にとって本当に大切なものをいともたやすく切り捨てようとする日本にはもはや絶望しか感じないよね。ここまで経済が後退する状況では余暇や趣味の部分をまず第一に削ることになるんだろうけど、音楽を制作する場を提供するスタジオから絶対になくしちゃいけない機材をなくすなんて現実を突きつけたところで、それが一体何になるんだろう? と思うよ。

──音楽という娯楽に対して満足にお金をかけられない現実に不況の重い影を感じますが、『R.A.M』はロック後進国である日本において岩川さんが如何に孤軍奮闘しているかを実践した記録とも言えますね。

KOZZY:もはや自分が壺焼き芋を守り続けるおっさんに思えるね(笑)。子どもの頃、近所に広島でも珍しい壺焼き芋屋さんがあって、そこのおっさんが芋を壺で焼いているのをずっと眺めているのが好きでさ。壺の上に瓦を載せるのが面白くてね。いま思うとなんで瓦なんだろう? と思うけど。

──果たして本当に効果があるのかわからない瓦に価値を見いだすようなところが、実はロックロールでも大切な妄想力に繋がるポイントのように感じます。

KOZZY:そう、そこにロマンを感じる。壺焼き芋のおっさんが瓦を載せて蓋にしたのは、たまたまそこに落ちていたからだと思うけど(笑)。

何事もまず自分一人でチャレンジするのが信条

──そういう一見無駄に思えることにどれだけ意味を見いだせるかが大事ですよね。

KOZZY:その通り。僕が『R.A.M』でやってみせたリズム&ブルースもオールド・ロックンロールも簡単にパッとできるっちゃできる。だけどその完成に至る無駄なプロセスがとても大事で、ロックから無駄を省いたら何が残るんだよ? と思うね。お金だって大して残らないんだから(笑)。ケチるところはそこじゃないだろ? と思うし、今の音楽の制作に携わる人たちもミュージシャンも僕にはだいぶズレているように感じる。愕然とすることは他にもあって、たとえばメジャー・レーベルと契約書を交わそうとして、そこに記載されているギャランティのパーセンテージが最初から印刷してあったりする。プロの野球選手でも何でもそこは空欄にしてあって、一対一で交渉を続けた末に決めるものじゃない? 自分の取り分を最初から交渉もせずに決めるなんてどうかしてるし、それじゃミュージシャンとして大きな夢は見られないよね。まあ、そんなことを平気で言うから僕は業界の人たちに嫌われるんだろうけど(笑)。だけど真っ当な正論だと思うけどな。売れ枚数を増やすよりも取り分のパーセンテージをどれだけ大きくできるかが大事なんだよ。だって日本の人口もロック人口もあらかじめ決まっているんだから、そこを取り合っても僕らに勝ち目はない。そうじゃなくて自分たちの取り分を変えてもらわないと、僕らの蓄えも目減りする一方で次の創作へ向かえなくなるんだからさ。

──過度な報酬を要求しているわけではなく、実績に見合った正当な対価を補償してほしいということですよね。

KOZZY:うん。僕はその収益の分配率がつい気になってしまうというか、間に入る業者の人たちが本当に必要なのか? と昔から感じるタチでね。だからと言ってむやみにお金がほしいわけじゃない。音楽を制作する上で必要な費用がこれだけかかるということなら、その中で無駄な部分はできるだけ省きたいってだけ。中間搾取しようとする無駄な人っていっぱいいるからさ。

──岩川さんの場合、自身の利益を少しでも増やしたいというのではなく、表でも裏でもやれる仕事は他人任せにせず自分自身でやってみたいということですよね。

KOZZY:そうそう。必要に迫られてという側面もあるけど何事もまずは自分でやってみたいし、最初から「できない」とは絶対に言いたくたい。それが僕の信条だから。

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──わかります。あらゆる楽器演奏から録音作業までを一人で完結させる『R.A.M』の制作スタンスからもそれは窺えますし、ロッド・スチュワートの「MAGGIE MAY」をカバーするのもマンドリンを自分なりに弾きたいがために選曲したんじゃないかと思わせる節が岩川さんにはありますしね。

KOZZY:「MAGGIE MAY」はまずマンドリンを買うことから始まっているから(笑)。そんなことが曲がりなりにも成立しているのは、僕のこういう音楽を聴いてくれる人たちのおかげなんだよ。『R.A.M』を正規盤として流通させるのはある種の試みでもあるわけ。これが全然受け入れられないのなら落ち込むだろうし、逆にそれなりの需要があるようならロックンロールの未来は明るいと信じられるっていうかさ。それにこういうCDをわざわざ買ってくれる人たちが一定数いるということは自分にとってやりがいでもあるし、今後またオリジナル作品を生み出していく上での指標にもなるよね。

──古今東西の名曲を自身の作品の延長線上に並べることは自ら創作のハードルを上げているようなものですからね。

KOZZY:プロのアスリートと同じように常に自分に対してプレッシャーを与えないとダメだし、そうしないといつまでもお山の大将のままだから。そのためにも僕が大手を振ってバスター・ブラウンの「FANNIE MAE」をあえて1曲目にするようなアルバムを作るんだよ。お前らにやれるか?! みたいなところもあるし、そういう表現の全責任を自分で取る覚悟もある。演奏はドラム、ギター、ベース、ハーモニカ、ピアノ、ボーカルまで全部自分でやって、録音もミックス、マスタリングまで全部自分でやって。そこまで一手に責任を負いながらどうしてほしいのかと言えば、やっぱりみんなに楽しんで聴いてもらいたい。そんな作品をメジャーの流通に乗せて売ることで自分は報酬を得て、作者は収入を得る。それが正当な評価だし、僕はそこで得たお金で新しいマイクを買ってまたいい録音ができればいい。そうやって狭いマーケットなりにも潤滑に経済を回していくのが理想なんだよ。なんてことを言うと地元野菜の生産者みたいだけどさ(笑)。

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R.A.M

2022年2月2日(水)発売
STREC-003(2枚組CD)
価格:¥3,850(税込)
LABEL:B.A.D RECORDS UNITED
発売・販売:ソウルツイスト合同会社(SOUL TWIST INC.)
All instruments played by KOZZY IWAKAWA
Recorded, Mixed & Mastered at ROCKSVILLE STUDIO ONE
Recorded, Mixed & Mastered by KOZZY IWAKAWA

amazonで購入

【DISC-1】
01. FANNIE MAE
02. BAMA LAMA BAMA LOO
03. WALKING THE DOG
04. MEMPHIS, TENNESSEE
05. MUDDY JUMPS ONE
06. THAT'S ALL RIGHT
07. THAT'LL BE THE DAY
08. MAYBELLENE
09. LAWDY MISS CLAWDY
10. IT'S ALL OVER NOW
11. WHO KEPT THE SHEEP
12. LITTLE RED ROOSTER
13. SHAKE YOUR MONEYMAKER
14. IF I DIDN'T LOVE YOU
15. RABBIT FOOT BLUES
16. CRAWLIN' KING SNAKE
17. FOLSOM PRISON BLUES
18. THIRTY DAYS
19. MR. MOONLIGHT
【DISC-2】
01. UNDER MY THUMB
02. WELCOME TO THE WORKING WEEK
03. TRAIN IN VAIN
04. NO MATTER WHAT
05. PIGGY IN THE MIDDLE
06. INSTANT KARMA!
07. MAGGIE MAY
08. TIGER FEET
09. LONELY SUMMER NIGHTS
10. REVOLUTION ROCK
11. RAT RACE
12. IT MUST BE LOVE
13. THE SIZE OF A COW
14. YOU DON'T BELIEVE ME
15. WILD HORSES
16. CRIPPLED INSIDE
17. LOOKIN' OUT MY BACK DOOR
18. YOU'RE SIXTEEN

L.U.V

2021年12月9日(木)発売
STREC-002(2枚組CD)
価格:¥3,300(税込)
LABEL:B.A.D RECORDS UNITED
発売・販売:ソウルツイスト合同会社(SOUL TWIST INC.)

amazonで購入

【DISC-1】
01. Tokyo Girl
02. Whatever Gets You Thru the Night
03. Remember Me to Myself
04. The Night in the Valley
05. California Girl
06. Indian Summer
07. It's So Easy
08. That's My Jam
09. Hey Tonight
10. 恋のヴァレンタインビート
【DISC-2】*Xmas Songs
01. ジングル・ベル
02. サンタが街にやってくる
03. フェリス・ナヴィダ
04. ウインター・ワンダーランド
05. ホワイト・クリスマス
06. 恋はキャンディ・ケイン(アルバム・ヴァージョン)

LIVE INFOライブ情報

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まだ間に合う! さる2月12日に下北沢CLUB QUEにて開催されたリリースパーティーはStreaming+にて配信中!
Rockin' Valentine's Party “L.U.V vs R.A.M”』
出演:KOZZY IWAKAWA / AKIRA / THE ROCKSVILLE(トミー神田、YAMA-CHANG、高木克、ブギウギ・ケンタロー ほか)
DJ:JOHNNY(THE COLTS)ほか
◉2021年12月に初ソロアルバム『L.U.V』を発表したAKIRA(Luv-Enders)と、2022年2月に裏カバー・ベストアルバム『R.A.M』を発表したKOZZY IWAKAWAによる合同リリースパーティ&ヴァレンタイン・スペシャルライブ! 世代も国境も時空も越えて自由に旅する音楽世界旅行をぜひご一緒に!
配信チケット:Streaming+
2月18日(金)20:00まで販売(アーカイブ視聴は2月18日23:59まで)
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