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トップインタビューKOZZY IWAKAWA - 自身のルーツを探訪した音の時間旅行が伝承するロックンロール温故知新【後編】

自身のルーツを探訪した音の時間旅行が伝承するロックンロール温故知新【後編】

2022.02.16

 崩壊しつつあったバンドの再生を目論んだザ・ビートルズの(というよりポール・マッカートニー主導の)プロジェクト"ゲット・バック・セッション"は"原点回帰"がテーマだった。迷ったときは原点に立ち返る。それが古今東西、老若男女の流儀なのだろう。ビートルズの劇場公開映画3作品の中で『レット・イット・ビー』が一番好きだというKOZZY IWAKAWA(THE MACKSHOW, THE COLTS)の最新ソロ作『R.A.M』は、ロックンロールの礎を築き上げた偉大なる先人たちに対してありったけの愛情と畏敬の念を込めた至上のカバー・アルバムだ。世界的にもう何年も前から絶滅危惧種の指定対象でありガラパゴス化の一途を辿るロックの在り方に一石を投じる作品であり、ロックの原点に立ち返ることで今やその失われてしまった大切な何かを今に伝えながら問うというコンテンポラリーな視点と技術を組み合わせている。ビートルズやローリング・ストーンズが手本としたロックンロールの雛型やリズム&ブルース、思春期にオンタイムで影響を受けた70年代末期から80年代初頭のロックをただそのままなぞらえるのではなく、また従来のロックの教科書的選曲でもなく、マイケル・リンゼイ=ホッグ監督の『レット・イット・ビー』を経てピーター・ジャクソン監督が『ザ・ビートルズ:Get Back』を完成させたように新たな見地を交えたクリアかつカラフルな対象の蘇生とでも言おうか。それが図らずも岩川浩二というロックンロールに人生を捧げた表現者の音楽遍歴と折り重なるのも面白い。古い教えを学び新しい解釈を得る温故知新の精神はロックンロールに不可欠で、大事なことは歴史が教えてくれる。日本屈指のロックンロール職人による時空を自由に行き来できる音の時間旅行アルバム、その企画意図と制作過程について岩川本人に聞く。(interview:椎名宗之 / Live Photo:YOSHIMASA YAMANAKA)

■□■□■インタビュー前編はこちら■□■□■

90年代初頭、グランジの台頭で自分の進むべき音楽性を模索できた

──ローリング・ストーンズのレパートリーからは「UNDER MY THUMB」と「WILD HORSES」が選ばれていますが、岩川さんにとってはオンタイムで聴いたストーンズというよりも少し遡って聴いたクラシック的な2曲ですよね。

KOZZY:「WILD HORSES」に関して言えばアコースティック調の曲を唄ってみたくてね。他にそのタイプの曲がなかったし。60年代のストーンズは当時のガールズ・グループのようにポップな曲調にしようとして失敗したみたいなイメージがあって(笑)、そのどっちつかずなとっ散らかった良さがあるんだよね。「UNDER MY THUMB」はまさにその時代ならではのストーンズの混沌とした良さがある。自分がマイナー調のコードでアコギで唄うテイクがあったので、それに演奏を付け加えたらけっこう面白くなった。

──アコギと言えば、「PIGGY IN THE MIDDLE」のイントロを聴いて「STARMAN」を連想したんですけど、岩川さんの音楽からデヴィッド・ボウイからの影響はあまり窺えませんね。

KOZZY:もちろん好きだけどデヴィッド・ボウイみたいになりたいとは思わないし、明らかになれないから(笑)。自分がその人になりきれて楽しめるかが『R.A.M』における選曲基準の一つなのかもね。他人の曲をカバーするのはいろんな目的があるだろうけど、ボウイの曲は僕にはあまりフィットしないんだと思う。唄うのも難しいからね。

──ボウイがバンドではなくソロ・アーティストなのもあるんでしょうか。

KOZZY:それもあるかもしれないけど、ボウイがデラムからデビューする前のシェル・タルミーと組んでいた時代、グリン・ジョンズがエンジニアを務めた時期の曲は凄く格好いいのがあるよ。タイトでキレの良いサウンドで、それが狙いだったのかそうなっちゃったのかはわからないけど、僕もあんな音で録ってみたいと思うね。

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──今回の収録曲の中で時代的に一番新しいのがワンダー・スタッフの「THE SIZE OF A COW」で、最新とは言え1991年発表の曲で(笑)。だけどバスター・ブラウンからワンダー・スタッフまでを網羅したカバー・アルバムを作れるのはまさに岩川さんの面目躍如と言えますね。

KOZZY:ここまで振り幅の大きいアルバムを作るのは僕くらいなものだろうね(笑)。ワンダー・スタッフも凄い好きで、人気があったときにイギリスまで見に行こうと思ったくらいでさ。結局チケットが取れなくて行くのをやめて、来日するのを待っていたら解散しちゃったんだよね。ケルトっぽい楽器を入れてみたりするルーツ的な要素のあるバンドで、楽曲の組み立て方が上手いなと思ってた。

──「THE SIZE OF A COW」が発表された1991年と言えば、岩川さんがコルツを結成した年ですね。

KOZZY:ちょうど自分でもルーツ・ミュージックやワールド・ミュージックを貪欲に採り入れた音楽をやってみたい時期だった。と言うのも、90年代初頭にニルヴァーナが出てきて「ああ、これはもうダメだな」と思ったわけ。小さい頃からずっと好きで聴いてきたロックがグランジみたいに持て囃されるようになって、もはや自分の出る幕じゃないなと思って。ロックがこんなふうになっていくなら自分の志向とは違うなと実感したし、それなら自分はどんな音楽をやっていきたいのかを真剣に考えざるを得なかった時期だったね。そこで岐路に立ったことでロック以外のいろんなジャンルの音楽を知ることになったからそれはそれで良かったと思うけど。

──本作には「LOOKIN' OUT MY BACK DOOR」が収録されていますが、『L.U.V』には「HEY TONIGHT」が、もっと遡ればラヴェンダーズのアルバムには「UP AROUND THE BEND」が収録されていたことからも、岩川さんのCCR好きがAKIRAさんに伝承されていたのがわかりますね。

KOZZY:『L.U.V』というアルバムは彼女と僕の年代の合流地点みたいな音楽が集約されているっていうかさ。時代的には1991年から95年頃、CDが世界的に凄く売れた頃だよね。レコードがCDに移行して数年、今もずっと現役で音楽を続けているいいバンドが次々と現れる一方で、ロックの名盤が立て続けにCD化されて再評価に繋がった。CCRもその一つだったんじゃないかな。当時はカフェをやっていたのもあって、AKIRAは僕の聴く音楽をよく一緒に聴いていたものだから、CCRも自然と彼女の中に刷り込まれたんだと思う。

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R.A.M

2022年2月2日(水)発売
STREC-003(2枚組CD)
価格:¥3,850(税込)
LABEL:B.A.D RECORDS UNITED
発売・販売:ソウルツイスト合同会社(SOUL TWIST INC.)
All instruments played by KOZZY IWAKAWA
Recorded, Mixed & Mastered at ROCKSVILLE STUDIO ONE
Recorded, Mixed & Mastered by KOZZY IWAKAWA

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【DISC-1】
01. FANNIE MAE
02. BAMA LAMA BAMA LOO
03. WALKING THE DOG
04. MEMPHIS, TENNESSEE
05. MUDDY JUMPS ONE
06. THAT'S ALL RIGHT
07. THAT'LL BE THE DAY
08. MAYBELLENE
09. LAWDY MISS CLAWDY
10. IT'S ALL OVER NOW
11. WHO KEPT THE SHEEP
12. LITTLE RED ROOSTER
13. SHAKE YOUR MONEYMAKER
14. IF I DIDN'T LOVE YOU
15. RABBIT FOOT BLUES
16. CRAWLIN' KING SNAKE
17. FOLSOM PRISON BLUES
18. THIRTY DAYS
19. MR. MOONLIGHT
【DISC-2】
01. UNDER MY THUMB
02. WELCOME TO THE WORKING WEEK
03. TRAIN IN VAIN
04. NO MATTER WHAT
05. PIGGY IN THE MIDDLE
06. INSTANT KARMA!
07. MAGGIE MAY
08. TIGER FEET
09. LONELY SUMMER NIGHTS
10. REVOLUTION ROCK
11. RAT RACE
12. IT MUST BE LOVE
13. THE SIZE OF A COW
14. YOU DON'T BELIEVE ME
15. WILD HORSES
16. CRIPPLED INSIDE
17. LOOKIN' OUT MY BACK DOOR
18. YOU'RE SIXTEEN

L.U.V

2021年12月9日(木)発売
STREC-002(2枚組CD)
価格:¥3,300(税込)
LABEL:B.A.D RECORDS UNITED
発売・販売:ソウルツイスト合同会社(SOUL TWIST INC.)

amazonで購入

【DISC-1】
01. Tokyo Girl
02. Whatever Gets You Thru the Night
03. Remember Me to Myself
04. The Night in the Valley
05. California Girl
06. Indian Summer
07. It's So Easy
08. That's My Jam
09. Hey Tonight
10. 恋のヴァレンタインビート
【DISC-2】*Xmas Songs
01. ジングル・ベル
02. サンタが街にやってくる
03. フェリス・ナヴィダ
04. ウインター・ワンダーランド
05. ホワイト・クリスマス
06. 恋はキャンディ・ケイン(アルバム・ヴァージョン)

LIVE INFOライブ情報

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まだ間に合う! さる2月12日に下北沢CLUB QUEにて開催されたリリースパーティーはStreaming+にて配信中!
Rockin' Valentine's Party “L.U.V vs R.A.M”』
出演:KOZZY IWAKAWA / AKIRA / THE ROCKSVILLE(トミー神田、YAMA-CHANG、高木克、ブギウギ・ケンタロー ほか)
DJ:JOHNNY(THE COLTS)ほか
◉2021年12月に初ソロアルバム『L.U.V』を発表したAKIRA(Luv-Enders)と、2022年2月に裏カバー・ベストアルバム『R.A.M』を発表したKOZZY IWAKAWAによる合同リリースパーティ&ヴァレンタイン・スペシャルライブ! 世代も国境も時空も越えて自由に旅する音楽世界旅行をぜひご一緒に!
配信チケット:Streaming+
2月18日(金)20:00まで販売(アーカイブ視聴は2月18日23:59まで)
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