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INTERVIEW

トップインタビュー『偶然と想像』濱口⻯介(監督)- 不確かな偶然が、人生を大きく静かに揺り動かす、魔法のような3つのストーリー!

不確かな偶然が、人生を大きく静かに揺り動かす、魔法のような3つのストーリー。濱口⻯介(『ドライブ・マイ・カー』監督/『スパイの妻』共同脚本)がライフワークとして送る初の短編集

2021.12.10

「偶然」と「想像」はつながっている

 
──「偶然」に関して言えば、監督は、役と俳優の狭間から生まれる「何か」、撮影中に起こる偶然を待つために時間をかけるということですが、これはどういうことなんでしょう?
 
濱口:偶然をコントロールすることはできないですが、偶然が起こりやすい状況はあると思うんです。例えば、毎日同じ電車に乗っていれば、違う会社の人とも会う確率は高まるというような。役者さんによい偶然が起こりやすいシチュエーションにしていくというのが大事で、そのための準備として時間が必要だし、本読みやリハーサルも入念に行います。
 
──『ドライブ・マイ・カー』の中でも、劇中劇の「ワーニャ伯父さん」を役者達が本読みする場面が結構長く描かれていて、濱口作品ができあがっていく過程がリアルに伝わってきました。演技をする前にひたすら本読みを繰り返していく手法は濱口監督独特の手法なんですか?
 
濱口:独特というものでもなくて、演劇では伝統的な手法のようです。僕は映画監督のジャン・ルノワールのドキュメンタリーで本読みを無感情でひたすらやっているのを見て、ああこういうやり方があるのかと影響を受けました。本番で役者同士が初めて感情が入った声を聞く時に驚きがあり、そこに偶然が生まれやすい。
 
──もう一つのテーマである「想像」についてですが、これは制作の途中から思いついたテーマなんですね。
 
濱口:「偶然」と「想像」がつながっているものだというのは、今回やってみてすごく感じました。偶然というのは想像を超えた所からやってきて、その偶然に対して想像力を使いながら、自分の人生を取り戻していくということがあるんじゃないかと。
 
──偶然が人生を変えるものになるかどうかは、それに気づく想像力も必要ということでしょうか。
 
濱口:偶然を自分の人生の中に迎え入れるというか、自分のルーティーンの中にないことをやってみた時に、それまでとは違った人生が開けたり、なりたかった自分に近づけたりすることがあるかもしれない。もちろんこれはフィクションですが、もしかしたらこんなことがあるかもしれない、そういう可能性を信じることができたらいいなと思っています。
 

 

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LIVE INFOライブ情報

偶然と想像
 
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2021年12月17日(金)Bunkamura ル・シネマほか全国公開
 
監督・脚本:濱口竜介
出演:古川琴音 中島歩 玄理 渋川清彦 森郁月 甲斐翔真 占部房子 河井青葉
配給:Incline
©2021 NEOPA / fictive
 
第一話「魔法(よりもっと不確か)」
出演:古川琴音 中島歩 玄理
 撮影帰りのタクシーの中、モデルの芽衣子(古川琴音)は、仲の良いヘアメイクのつぐみ(玄理)から、彼女が最近会った気になる男性(中島歩)との惚気話を聞かされる。つぐみが先に下車したあと、ひとり車内に残った芽衣子が運転手に告げた行き先は──。
 
第二話「扉は開けたままで」
出演:渋川清彦 森郁月 甲斐翔真
 作家で教授の瀬川(渋川清彦)は、出席日数の足りないゼミ生・佐々木(甲斐翔真)の単位取得を認めず、佐々木の就職内定は取り消しに。逆恨みをした彼は、同級生の奈緒(森郁月)に色仕掛けの共謀をもちかけ、瀬川にスキャンダルを起こさせようとする。
 
第三話「もう一度」
出演:占部房子 河井青葉
 高校の同窓会に参加するため仙台へやってきた夏子(占部房子)は、仙台駅のエスカレーターであや(河井青葉)とすれ違う。お互いを見返し、あわてて駆け寄る夏子とあや。20年ぶりの再会に興奮を隠しきれず話し込むふたりの関係性に、やがて想像し得なかった変化が訪れる。
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