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トップインタビューAKURYO - 抵抗のダンスを楽しもう!アンチな人たちとも、フィジカルな接触が可能な言葉を選びたい

抵抗のダンスを楽しもう!アンチな人たちとも、フィジカルな接触が可能な言葉を選びたい

2021.07.26

「女性の問題であれば男はなにもしないでいいと思ってる」に、背中を押された

──6曲目「わきまえない女たちへ」。これは、森(喜朗)氏の発言についてだと思うのですが、この楽曲を制作するのは覚悟もあったのではと思ったんです……というのも、ラップっていう世界には特に男性社会っぽいイメージがあって……。

AKURYO:あ、よくご存知ですね(苦笑)。この曲を出すのは怖かったですよ、女性が聴いたらどう思うんだろうって。そもそも2017年の#MeToo運動から僕自身の女性観や言動などを省みるようになりました。本や人から色々学んでいるところで森氏のわきまえない発言騒ぎが決定打になって、これは曲にしないとだめだって思いました。でも逆に、「しゃしゃり出やがって」って思わせてしまうかなって迷いもありました。ちょうどこのアルバムのリリース直前に映画『モキシー〜私たちのムーブメント〜』を見ていて、そのなかで学校の男性教師が女の子たちに、「女性の問題だから意見を言う気もない。君達を尊重し口は出さない」って言うシーンがあるんです。すると一人の女生徒に「女性の問題であれば男はなにもしないでいいと思ってる」って言われるんです。そこで、あっ! って気づいて、それでもう背中を押されましたね! ごもっともです……って。どうにか下支えになれないかなって、応援している人はここにもいますって気持ちを示したくて作りました。

──7曲目「聴コエマスカ」。"ちゃんと聴こえますかEとCとD"は手紙であり、ECDさんの背中を追うわたしたちの決意確認でもあるなと思いました。AKURYOさんにとってECDさんはどんな存在でしたか?

AKURYO:大先輩ではあるんですけど、話すとシンプルな人だし、いちミュージシャンとしてぶっ飛んでいるし、得体の知れない人でもあった感じもします。インタビューで話すと収まらないくらいの気持ちがありますね。

──いろんな人に、実際に行動を起こすきっかけをくれましたよね。

AKURYO:そうですよね、そこも尊敬するところでもありますし、とにかくでかい人物すぎて。僕から見たECDっていう人物像は、今後も曲を作って表現していきたいですね。あの人には言い残したことがまだまだあるんで、あっちで聴いてほしいです。

──声をあげてもあげても変わらない社会のなか、声をあげることに意味がないわけではないことは知っているけれど、いい加減諦めそうになる場面がこれからも多くの人の葛藤として出てくると思います。誰もが、「もうやめた!」と一抜けできてしまうなか、なぜずっと作品を作って声をあげ続けていられるのでしょうか。

AKURYO:今、それを聞かれて思い出したんですけど、このアルバムの制作期間ってブラック・ライブズ・マターのタイミングと重なっていたんです。それで、黒人の社会運動の歴史を見聞きしたんですけど、やっぱり歴史は長いしすごく過酷で、やっとここまで来たのにそれでもまだあんな事件が起こってしまう。あれだけ頑張っているのにまだこんな社会なんですよ、それでもまだ続けて抗議の声をあげ続ける。それって見習うべきだし、僕自身も勇気付けられたし、怒るべきときには怒らなくてはっていうのも教えられたし。不協和音のアウトロにインプレッションズの「People Get Ready」を入れてるのもリスペクトを込めてのものです。BLM運動の歴史って、経験と知識と行動の積み重ねなんだな、って気づきました。一発逆転なんてあるわけないから、行動や戦略も継承をしてずっとこれまで積み重ねて、さらにアップデートもして、すげえなこの人たちって。BLM運動のように特定のリーダーをおかずにSNSを使って各地で広げていくやり方は、日本では3.11以降、SNSデモとかで広まり始めている。そう思うと日本なんてまだ始まったばかりだなって、むしろこれからでしょって気持ちがありますね。変に焦らず、これから先の子どもたちや若い人へ道しるべになれるものを作っていけたらいいなと思います。

──生活と同じように積み重ねていくということですよね、そう思うと余計に、ECDさんのあの名言はこれからも響き続けるのだろうなと感じます。

AKURYO:そうなんですよ、そこに繋がっていくんですよね! ワクチン不足やオリンピック開催など納得いかない不条理なことがたくさんあるなかでも、変にヤケクソにならず、自分が培ってきた信念やスタイルやスキルを駆使して、それぞれが抗ったり生き抜いたりしていきたいです。

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photo:乱脈 at 大久保水族館

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