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INTERVIEW

トップインタビューAKURYO - 抵抗のダンスを楽しもう!アンチな人たちとも、フィジカルな接触が可能な言葉を選びたい

抵抗のダンスを楽しもう!アンチな人たちとも、フィジカルな接触が可能な言葉を選びたい

2021.07.26

 Working ClassのAnti Fascistを標榜するラッパー、AKURYO。安倍政権下での強権政治や差別扇動に対して40曲近くのカウンター楽曲をsound cloudやBandcampに発表。様々なサウンドデモや抗議アクションではMCとしてもマイクを握ってきた。
 非常事態宣言下で東京オリンピックが開催。進むと思われていたワクチンは供給不足。そんな社会状況のなか、2021年7月14日にニューアルバム『黒いHoodie』がリリースされた。この音源の売り上げを全額「LOFT PROJECT」へ寄付することを表明。ヘイトデモ、気候変動、格差社会、性差別、オリンピック...現在の社会状況がそのまま反映されたこのアルバムはどのような心境で制作されたのか、ECDの言葉を今また引用した意味とともに伺った。(interview:成宮アイコ)

きっかけは、ECDさんへの報告

──ニューアルバム『黒いHoodie』発売おめでとうございます! 制作のタイミングはいつごろだったのでしょうか。

AKURYO:2020年にBandcampで『CLASS WAR』というアルバムを配信したんですけど、そのときに1曲あぶれた曲があったんです。それが、『黒いHoodie』の3曲目に入っている「Anthropocene」なんですけど、内容的にもボリューム的にもそぐわなかったので違うアルバムにコンパイルしようかなと思っていたんです。

──前作からの自然な流れだったんですね。

AKURYO:それで、また新しいアルバムを作ろうかなと取り掛かったのが、安倍晋三氏が総理を辞任した時でした。逃げるように辞めた安倍元首相には呆れて、改めて曲を書く気にはなれなかったんですけど、反独裁や反差別を言い続け安倍政権への抗議アクションに参加していたECDさんには、「安倍やめましたよ」って報告がてら1曲書こうかなって思ったんです。

──『黒いHoodie』のリリース文章に書かれていたフレーズ「どうして無力だと思いたがるのか。あるよ。ひとりにはひとり分。力が。」これはECDさんの言葉ですが、今すごく必要な言葉だったなと改めて思いました。

AKURYO:いやぁ、名言ですよね……。この言葉自体が頭の片隅にずっと残っていて、ふとしたときに思い出すんですよ。同じことを考えている人も多いみたいで、TLにもときどきこの言葉が流れてくるんですよ。ああ、いろんな人がこの言葉を支えにしているんだろうな、って。ECDさんの言葉ってストロングだから、そこに力をもらう人が多いんじゃないかなと思って引用をさせていただきました。影響力がデカい人だったんで、ECDさんが亡くなってから、「いつかは曲を書くんだろうな」って思ってはいたんですけど、すぐにはそんな気持ちにはなれなかったんです。でも、このタイミングかなって。僕はECDさんと付き合いがそれほど長いわけじゃないけれど、一緒にいろいろ動いてきたなかでエピソードがたくさんあって、1曲だけじゃ全然足りないですね(笑)。

──ECDさんとは、どこで出会われたんですか?

AKURYO:日本でラップをやっていれば誰でも名前を知っている大先輩ですし、「さんピンCAMP」のDVDが友達の家にあったり、音源を買って聴いたり、ライブも見に行っていてずっと知ってはいました。直接コンタクトをとったのは2009年です。当時、一緒に動いていたクルーの自主レーベルでアルバムを出したんですけど、その音源とリリースパーティーのインビテーションをECDさんのライブの日に渡しに行ったんです。僕が一方的に知っているだけで全くの初対面なのに、「ありがとう」って受け取ってくれて、リリースパーティーにも来てくれたんですよ!

──初対面だったのに会場に足を運んでくれたんですね。音源を聴いてきっとなにか通じるものを感じたのではと思います。

AKURYO:うわー! って思って超うれしくて! お礼を伝えて、そのときに初めてちゃんと話しをしました。僕がサウンドデモに呼ばれるようになったのは2012年くらいなんですけど、ECDさんは2011年の東日本大震災のあとから、素人の乱の反原発デモとかにスチャダラパーのSHINCOさんと一緒に出ていたりして。僕がNO NUKES MORE HEARTSっていう団体のデモに呼ばれたときに、DJとして野間(易通)さんが出ていたんですけど、野間さんとECDさんが繋がっていて僕とひきあわせてくれました。それで、ECDさんと一緒にサウンドカーに乗っていろんなサウンドデモをやるようになりました。

──わたしがAKURYOさんを知ったのは、おそらく「東京大行進」だったんですけど、目の前の風景やそのとき街を歩いている人へのリアルタイムの呼びかけをしているのがすごくかっこよくて、これはライブだなと思いました。サウンドカーに乗って矢面に立つことに抵抗はなかったんですか?

AKURYO:2009年に出したアルバムもなかなかの政権批判的な内容だったんですけど、僕のアティテュードはもともとそんな感じなので、サウンドカーに乗ることへの違和感はなかったです。ラップって即興のフリースタイルという手法があるんですけど、2009年くらいにラジカセを持って路上でフリースタイルをしていたので、サウンドデモでその状況に合わせて言葉を出していくのもそこに似ていました。フリースタイルってその人の地が出やすいので、普段から差別的な言動をしちゃうような人だとぽろっとその部分が出ちゃうと思うんです。だから、普段、自分が考えていることや行動の下地があった上でやれていることなのかなと思います。

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