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トップインタビューAKURYO - 抵抗のダンスを楽しもう!アンチな人たちとも、フィジカルな接触が可能な言葉を選びたい

抵抗のダンスを楽しもう!アンチな人たちとも、フィジカルな接触が可能な言葉を選びたい

2021.07.26

クソッタレな世の中だけど、抵抗のダンスを踊ろう

──1曲目「黒いHoodie」で、"お前は日本人か?" って肩をつかまれたり、ヘイトデモのカウンターで警官から、"にいちゃん、色々大変だな" って言われたエピソードが入っていますが、自分自身も似た経験があるのでとてもリアルな風景でした。

AKURYO:色々大変だなって、「なに言ってるんだろ?」って思いますよね。差別発言をくりかえすヘイトデモはちゃんと止めてよって。"彼らが言うところの秩序"ってなんなんだろう。まぁ、組織で動いていると警官も機械的にはなりますよね。その場その場のコミュニケーションでどうにかなる問題じゃないけど、それはあまりにもだろって思うことが多すぎる。

──こういう出来事が起こったとき、「これは曲にしよう」って心のなかで思いますか?

AKURYO:その場というよりも、「こないだこんなことがあってさ」って友達に話しながら、「あ、これ曲にしよう!」って思うことが多いですね。ラップ自体が話し言葉でもあるし、会話から生まれることが多いかも。実は1バースめの"お前は日本人か?"の部分は、10年前くらいに友達と「Fuck The Police」をテーマにフリースタイルをやってたのもきっかけで。実体験からスラスラ言葉が出て来たので一曲作れるなって感触は得ました。

──えっ?!  今の時間軸だと思って聴いていました。そう思うと本当に社会ってなにも変わってないですね……

AKURYO:そうなんですよ、変わってないんですよ! 衝撃ですよね。僕も書きながら、「これって10年くらい前のことだけど、今と状況変わってなくない?」って思って。ひきますよね(苦笑)。

──2曲目「不協和音」には気づきをもらいました。さすがに今は減りましたが、少し前は怒りの表明をすると下品だと言われたり、相手と同じ土俵に乗るのやめなよと言われることがあったので、"響き渡らせる不協和音"というリリックを聴いていたら、社会の不条理には不協和音を鳴らしていく行為自体に意味があるな、と。

AKURYO:ありがとうございます、これは民主主義やプロテスターへの応援歌として書いたんです。イントロに香港の活動家アグネス・チョウさんが釈放されたときの音声が入っているんですけど、アグネスさんが欅坂46『不協和音』を聴いて乗り切ったっていうことを言っていたんです。香港も大変なことになっているし、この曲を書いていたときはトランプ氏が大統領だったし世界中で民主主義がおびやかされていた。それは今もそうですけど、そのなかで象徴的なアグネスさんが不協和音っていうフレーズを出したので、それで1曲作ろうって思って書きました。

──3曲目「Anthropocene」は気候変動と格差社会についてのテーマではあると思うんですけど、これを聴いてAKURYOさんのサウンドカーでの姿を思い出しました。"爆音で踊り狂うANTIFA"という言葉がすごく印象的で。怒りの楽曲だけれど、"拳をあげる"とか"怒鳴り声"といったニュアンスではなくて"爆音で踊り狂う"っていうのがすごくいいなと思います。

AKURYO:僕自身、ダンスが好きなんですよね。スピーカーの前とかサウンドシステムの前とか、とにかく大きな音で踊るのが好きで、プロテスターの人やANTIFAの人たちにも、「こんなクソッタレな世の中だけど、大きな音で抵抗のダンスを楽しもうよ」って思う気持ちが常々あります。やっぱりサウンドデモとかレイヴって、映像で見ても最高なんですよ。ダンスはポジティブでもあるし、抵抗的なものでもあるし、素晴らしいものだなと思います。

──怒り続けると燃え尽きてしまいそうだなと思うところがあるので、こういう楽しみもありながら継続ができるやり方っていいですよね。

AKURYO:怒るのはカロリー使いますからね。「なんで怒んないの?」って言われても、その気持ちはわかるけど今はちょっとしんどいって思う場面って誰でもあると思うんですよ。今はSNSがあるから、声をあげなくても情報をシェアしていくっていうやり方もあるし。だから、怒れるときに怒れる人がブチ切れておこうって思っています!

──4曲目「続・東京2020」、"てんで機能不全のパブリック"ななかでまさに"俺達の命には無頓着"で、この歌詞のままの現実になってしまいました。

AKURYO:これはいちばん新しい曲ですね。本当はオリンピックについて曲を書く気はなかったんですけど、ジャケットを書いてくれた佐藤B咲くって普段が社会的なことや政治的なことを話す人ではないんですけど、「まじでこの状況でオリンピックやるのむかつく」ってラインを送ってきて、彼がこんなこと言うのめずらしいからそれで僕の気持ちに火がついて、1曲書いてみようかなって思ったんです。

──佐藤さんご自身からの反応はいかがでしたか?

AKURYO:「この曲がいちばんいい」って言ってました、作ってよかったです(笑)。

──まさにインタビューさせてもらっている今日、脳科学者の方がオリンピックに反対する声をあげる人を、"ノイジーマイノリティ"と表現していましたが、緊急事態宣言中のオリンピック開催やワクチン摂取の遅さ、命への配慮がどんどん鈍くなっていることに疑問をもつことがノイジーマイノリティと呼ばれるならば、不協和音を鳴らし続けたいですね。

AKURYO:ノイジーマイノリティって、ね……どういうつもりなんですかね。普通にイベントとしてオリンピックが好きな人もいるのはわかるけど、とてもじゃないけど今はそんな状況じゃないですよね。この楽曲製作時は、これからワクチン摂取が進んでいく雰囲気だったんですけど、実際ふたをあけたらワクチン全然足りてない! 僕の予想よりさらにひどい現実だった。ほんとうにお粗末だなと思います。

──5曲目「Exodus」では、"邪魔する奴らのケツは蹴っ飛ばす"と表現されていますが、スルーするでも置いていくでもなくて蹴飛ばすっていうところに、諦めていないぞいう熱を感じたのですが意図したところはありますか?

AKURYO:フィジカルな語感を意識的に使っていきたいと思っているんです。邪魔する奴らを置いていってスルーをするよりも、アンチな人たちともある程度はフィジカルな接触を匂わせる言葉を選びたいんですよ。音楽ってナマモノでラップは言葉だし、それを使えばアンチの人とも接触ができるかなって。あとは、コロナ禍でこういう状況だから、よりフィジカルなものを選びたい気持ちもありますね。僕はバンドが好きで、バンドへの憧れやリスペクトがずっとあるんですよ。だからせめて言葉だけでも、体感できる生々しいものにしたい。ひとりでやっているとサウンドは限界があるから、ラップでいかにバンドのようなフィジカルにもっていくか、って。たぶん、届けたい対象が自分の中で見えているのが大きいと思いますね。

──その対象のなかには、まだ声をあげる前の人も入っていますか。

AKURYO:入っています。思っていても声に出せない状況っていくらでもあると思うから、僕の音楽を聴いて一歩でも気持ちが前に進んでもらえたら嬉しいし、ラッパー冥利につきますね。

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わきまえない女たちへ
聴コエマスカ

All Sound & Rap by AKURYO
Art Work by 佐藤B咲く

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