1年の公開延期を経て7/22より待望の劇場公開が決定。劇場アニメ『サイダーのように言葉が湧き上がる』。ひと夏のできごとが少年・少女を大きく成長させる。世代を経ても変わらないもの、想い出を共有すること。リアルな言葉と想い出の強さを思い起こさせてくれる本作について監督のイシグロキョウヘイさんと脚本を務められた佐藤大さんに伺いました。[interview:柏木 聡(LOFT/PLUS ONE)]
二人が向かい合う物語になっています
──1年延長を経てやっと公開ですね。心待ちにしていました。
イシグロ(キョウヘイ):やっと公開です。
(佐藤)大:良かったです。
──『サイダーのように言葉が湧き上がる(以下、サイダー)』フライングドッグの10周年作品ということで作られた作品なんですね。
イシグロ:2015年9月にフライグドッグの尾留川(宏之)さんから「SFのオリジナルの音楽ものはどうですか」とお話をいただいたところから始まりました。その時は僕一人で大さんはまだ参加していなかったです。
──最初はSF作品だったんですか。
イシグロ:そうなんです。一年半くらい一人でやっていたんですけど僕は話づくりのプロじゃないので上手くいかなくなったんです。なので、話づくりが出来る人に加わってもらおうと大さんにお声掛けさせていただきました。その時にいきなりSFなくしましたけどね(笑)。「SFは苦手だからやめましょう。」とは僕から言ったんでしたっけ。
大:最初に「いただいた設定では映画の尺には入んないですよ。TVシリーズじゃないですよね。」という話をしたんです。「映画です。」と改めて言われたので、それだとこの物語は入らないですよねということで考えが一致したのでSFはなくしたんです。
イシグロ:二人ともSFはやめようと思っていたのか。それで実景ベースの物語としてすすんでいったんでしたね。
大:そうそう。僕はむしろSFで音楽ものということで呼ばれたんだろうなと最初は思っていましたから。
──大さんはSF・音楽作品をいままでに多くやられていますもんね。
大:大:映画でやるにはこの設定が複雑で壮大すぎると思ったんです。なので、もう少し地に足が着いた身の回りのストーリーにしましょうと方向転換の提案をしました。もう1つのテーマである音楽に関しても、イシグロさんがバンドもの・アイドルもの・ミュージカルものではない音楽ものをやりたいんだな、ということはわかったので、そこから改めて、音楽とは何だろうということから話し合いが再スタートしたんです。
──その時点でボーイミーツガールの物語にするという案は出ていたのですか。
イシグロ:そもそも群像劇という形だったので恋愛は少し入っていましたけど、二人の間ではボーイミーツガールじゃなかったです。
大:『グーニーズ』的な、ひと夏の冒険ものを考えていました。だから、ジャパンやタフボーイ、ビーバーもチェリーやスマイルと同じくらいのメインの予定でした。
──かなり、初期のものから変わったんですね。現代劇でも群像劇から恋愛にシフトしたのは何故なんですか。
イシグロ:群像劇ではキャラへの感情移入をしづらいので、アニメでやるのは難しかったんです。そんな中でどうしようかという話をしていって、元の物語の中で描いていた恋愛にフォーカスを充てなおして今の形になりました。でも、目線を変えたというだけで、実景の物語にしようということになってから話の筋は本当に変わっていないです。編集をし直したという感じです。
──確かにフジヤマさんのレコードを探す物語ですから、宝探しの物語と言えばそうですね。
イシグロ:元の物語を作っていたことで功を奏したのは、各キャラの背後関係を考えていたので、そこが視点を変えた本作の形でも自然と滲み出ましたことですね。少ししか説明してないんですけど、そこに居る理由みたいなものが植え付けられたので結果的に良かったと思います。
──だから、誰もモブになっていないんですね。
大:これまでもここからもちゃんとあって、全員が実際に生きていそうなキャラクターになっている気はしています。なので、その工程は凄く重要でしたね。だから、恋愛面で言うと最後まで意外とあの二人を誰もサポートしないという形になってしまいました(笑)。
──確かに恋愛面では誰も助けていない(笑)。
大:普通の恋愛ものだと周りの人が温かく見守ったり、先んじて相談に乗るシーンとかがあるんですけど、一切ないんですよ。でも、それが凄い良かったなと思っています。チェリーはコミュ障なので、誰にも打ち明けられないです。
イシグロ:フジヤマさんがその役割を担えそうですけど、やらないですね。
大:結果的にチェリーとスマイルが頑張る、二人が向かい合う物語になっています。だから、良いのかなと思っています。