時間軸の変化が通底したテーマとしてあるのかもしれない
おおくぼけい:こうして初めてインタビューを受けて話しながら思ったんですけど、肋骨は音も歌詞も映像も時間を超越したようなところがありますよね。未来を想像した曲なのに実際は過去のことを唄っていたり。
マリアンヌ東雲:そうかも。そもそもライブは時報の音で始まるじゃない? あれはワタクシが使うことにしたんだけど、ライブの前にあんな緊張する音を聴きたくないじゃないですか。でもあの時報の音が鳴る中でALiさんのVJが始まって、おおくぼ君が出てきて…というイメージが最初から自分の中で断片的にあったし、肋骨ではそんなことがやりたかったわけです。ずっと意識していたわけじゃないけど最終的には辻褄が合うんですよ。
おおくぼけい:即興というのは現在進行形でもあるけど、それも徐々に過去になっていくわけで。あまり意図してなかったんですけど、こうして話していると3人の共通したテーマとして時間軸の変化があるように思いますね。
ALi:「時からの誕生」というカバーもやってますしね。
──時間軸で言えばテールエンドとなるのは過ぎ去った昨日ですが、今この瞬間はすでに明日の初めを追尾している…といったところでしょうか。肋骨の楽曲は時間軸を自在に飛び越えるというか。
おおくぼけい:キノコホテルもアーバンギャルドも偉大なる先人に敬意を払って過去の音楽を継承しつつ、新たな表現を生み出していますよね。その意味では過去から未来へ、現在から未来への転生が自然と肋骨にも投入されている気がします。
マリアンヌ東雲:結局、過去と未来のどちらかだけで生きている人なんていないし、時間の感覚ってめちゃくちゃですよね。ちょっと疲れたと思って横になって、一瞬で目が覚めたかと思ったら5時間も経っていたり。かと思えば、時計をじっと見ていていつまでも時間が進まないと感じる時もあったり。一人ひとり同じ空間にいても時間の進み方や感じ方は違うものだし、時の流れは本当に捉えどころのないものですよね。
──成り行き任せで始まったユニットかと思いきや、意外と深いテーマが根幹にありそうですね(笑)。
おおくぼけい:アダムの肋骨からイブが造られたところから始まって(笑)。
マリアンヌ東雲:このインタビューで3人がやっといろんなことに気づけたところですから。
おおくぼけい:本人同士だと照れもあって、なかなかこんな話もできませんからね。
マリアンヌ東雲:こうして訊かれてお話してると、ああなるほど、みんな思ってる以上にいろいろと考えてるんだなって感じですけど、内実は頭に浮かんだことを即興で話しているに過ぎないんです。
ALi:これもまた即興的なセッションみたいなものですからね。
おおくぼけい:マリアンヌさんも僕もそこそこの経験を積んできたからこそ肋骨のような即興ユニットをやれていると思うんです。いろんな出会いがあって刺激を受けて咀嚼して、その果てに残ったものが各々やっているバンド以上に出ているんじゃないかと。“電撃的お耽美ユニット”だけに、電撃的な感じで(笑)。
──なるほど。いろんなことが淘汰されて、肋骨という大事な骨組みだけが残ったわけですね。
ALi:それさえあればいいというか。肉付けはこれから変幻自在にしていけばいいんじゃないですかね。
マリアンヌ東雲:肉を付けようが削ぎ落とそうが、骨格があればどうとでもなりますから。今以上に変化していく可能性もあるし、かといって具体的なビジョンがあるわけでもない。そのうち気が向けば2人のどちらかが曲を作って、それを聴いてああなるほどとか思いながらまた淡々とやっていくような気もします。
おおくぼけい:個人的にはそろそろアルバムを作りたいと思ってるんですけど。
マリアンヌ東雲:いいわね。またいい歌詞を書かせて頂戴よ。
おおくぼけい:配信リリースする曲を完成させた後、マリアンヌさんが曲を書いて僕が歌詞を書く時期が珍しく続きましたからね。
──分業はそのパターンもありなんですね。
マリアンヌ東雲:「風葬」とかがそうよね。おおくぼ君が先に詞を書いて、それにワタクシが曲を付けて。
おおくぼけい:「風葬」は7月18日のライブでもやるだろうし、それ以外にも僕が作詞した曲を何カ月か後にリリースするのもいいだろうし。一応、歌は録ってありますから。
──目下、レパートリーは何曲ほどあるんですか。
おおくぼけい:10曲くらいですかね。
マリアンヌ東雲:既存の曲もいいけど、もっと新しい曲があったほうがいいわね。
おおくぼけい:曲はいくらでもできるんですよ。僕は書き上げるのも早いし。
マリアンヌ東雲:じゃあ書いてよ。
おおくぼけい:マリアンヌさんだって書けるじゃないですか(笑)。
ALi:肋骨はアコピとバイオリンが並ぶ画が様になるし、ヨーロッパとか海外のアーティストっぽいんですよ。YouTubeでも国内外の方からコメントをもらってるし、海外を視野に入れた活動を展開していくのもいいですよね。
おおくぼけい:海外はぜひ行きたいですね。
マリアンヌ東雲:ワタクシは海外のフェスに出てみたい。なんとなくベルリンとかがいい(笑)。
おおくぼけい:こうなったらボウイに倣って、目指せ“ベルリン三部作”ですね(笑)。