緊急事態宣言下、真夜中の渋谷でゲリラ撮影を敢行
──せっかくメンバー勢揃いなので、ポップでキャッチーなmyeahnsの楽曲がどのように完成するものなのか、この「オレンジ」を例に伺いたいのですが。アレンジの第一歩となるギターリフを齊藤さんが考えるところから始まるんですか?
齊藤:「オレンジ」のリフは亮太君が最初から考えてあったよね?
逸見:イントロのリフは最終的に俺が考えたけど、一番初めはなかった。
齊藤:めちゃめちゃ短い曲だったよね。最初は1分台だった気がする。メロディがすごくいいので、それを邪魔せずアレンジしたというか…「オレンジ」はそれくらいしか覚えてないな。
逸見:俺が「オレンジ」で覚えてるのは、コード進行も理解してみんなで初めて音合わせをしたときに茂木君が8ビートを叩いたことです。別にそう指示したわけじゃなくて、俺の弾き語りを聴いたときから茂木君の中で8ビートが鳴ってたと思うんですけど、「やっぱりこういう8ビートがやってて気持ちいいね」と茂木君が言ってたのは覚えてます。myeahnsの曲で8ビートって意外と少ないんですよ。作りたいとは思っていてもなかなか出来なかったりで。
コンノ:ベースはだいたいドラムと一緒に大まかなフレーズが決まりますね。細かいニュアンスとかは途中で変わりますけど。亮太君の弾き語りや唄い回しを聴いた茂木君が適当に叩いてるのに合わせて弾いていく感じです。
逸見:茂木君が何となくビートを叩いてるのを聴いて、茂木君がそう叩くんだったらハル君はこう弾こうかなっていうのがあるんだよね?
コンノ:そうだね。
逸見:そこである程度リズムが決まります。
Quatch:キーボードが入るのは基本的に最後の最後ですね。ほとんどのフレーズは亮太と一緒に作っていきます。
──分数の短い曲が多いのもあると思いますが、どの曲も簡にして要を得たアレンジが施されていますよね。一見ラフなようでいて実は緻密な作りが前作以上に徹底されているように感じたのですが。
Quatch:余計なフレーズやムダが箇所があればなるべく削ることにしてますからね。「今のとこ要らなくね?」みたいな。
逸見:疑問に思う箇所があったら削ります。「これってなくていいよね?」という箇所があれば削ってしまいがちかもしれないです。
──冗長なギターソロもあまり入れないように意識していますか。
齊藤:入れないですね、いいのがない限りは。
逸見:ギターソロに関しては「何周する?」って話しかしてないです。それで雄介が「2週かなあ」ってなったら2週になる。
齊藤:長々と弾くのが好きじゃないんですよね。曲の中でちょっと弾いて、いいメロディに寄り添うものになればいいので。
──どのパートも逸見さんの歌やメロディを引き立たせるために余計なことはしないのが窺えますね。
齊藤:それは絶対そうですね。
──「オレンジ」と同じく先行シングルになった「ビビ」については、武田梨奈さん主演・アベラヒデノブ監督によるミュージックビデオについて触れないわけにいきませんが、真夜中の渋谷を舞台に1カット映像で撮影を敢行したのが画期的ですよね。
Quatch:完全にゲリラ撮影でした(笑)。
茂木:めっちゃバタバタで大変だったよね。急いでドラムセットを組まなきゃいけなかったし(笑)。
逸見:渋谷に集合したのが終電とかの時間、それから打ち合わせをして街に繰り出してリハーサルをしたのが2時くらいだったのかな。1時間半ほどリハを重ねた後に本番を1カメで撮りました。
──1カメのアイディアはアベラ監督の発案だったんですか。
逸見:そうです。基本的にこちらから監督に要望することはなくて、曲を聴いてもらって監督に撮りたい画を撮ってもらうだけで。アベラ監督がmyeahnsをこの曲で撮るなら、渋谷のセンター街のど真ん中で1カメで撮りたいってことだったんです。
──撮影したのはいつ頃?
逸見:1月の後半です。緊急事態宣言中で人がかなり少なくて、いつもと違う異様なセンター街の雰囲気はありましたね。
──武田さんが空手の型をキメている背後で逸見さんがのこのこ出てきてハーモニカを吹く画が妙におかしいんですよね(笑)。
逸見:あれは図々しくも俺のアイディアで、リハーサルの映像を見て思いついたんです。ちょうどハーモニカが入るところが武田さんが型をキメるシーンだったので、アベラさんに「ここで俺が後ろから入るのはどうですか?」と聞いたら「ああ、いいですね。そうしましょう」って。あの後、大急ぎでぐるっと回ってバンドセットのほうまで戻って大団円を迎えるっていう。