本質的な『ヤマト』の魅力に惹かれている親子がいるというのは凄く嬉しい
──すごいお話しを沢山聞かせていただいてありがとうございます。これだけのメンバーの中に新たに入っていくというのは凄い環境ですね。
皆川:兎に角わからないことだらけでした。外で文句を言うのと中に入って意見を言うのとは全然違うので、恐ろしいところに来てしまったと思いました。
福井:そうおっしゃられてますが、この総集編も『2205』も皆川さんが居ないと全然別のものになっていたと思います。
──皆川さんにとって福井さんとはどういう存在ですか。
皆川:バンマスのような存在ですね。「こういうのがあるからどう」という提示も私からしますが、最終的に責任を取るのは福井さんなのでそういう感じですね。なので、重圧は凄いだろうなというのは感じました。
──『2205』の話も出て来ていますが、コチラには皆川さんはどのような関わり方をされているのですか。
皆川:文句を言う立場です(笑)。わかり易く言うと設定になるんでしょうか。
福井:ただの設定というとまたちょっと違うんですよね。『2205』に関してはで今までずっと伏せられてきた秘密が明らかになるのですが、その秘密の中身を考えてもらっています。
皆川:実は『2202』の小説版で最初に書いていたもので、それを見せたら福井さんから「これはやめてくれ、でも面白そうだから次で使おう」と言われたんです。
福井:取っておいてもらったんです。物語の根幹にかかわるところなので、設定というだけでは済まない形で携わっていただいてます。
──『ヤマト』は本当に世代を超えている作品で、誰しもお話しを知っていて、ささきいさおさんの主題歌も知っている。当時、リアルタイムで『ヤマト』を観られていた世代の方にはどういう作品だったのでしょう。
福井:私は実は後追いなんです。リアルタイムで観た『ヤマト』は『宇宙戦艦ヤマト2』という『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』をTVシリーズにしたものでした。小学校の4・5年生になって、再放送で1974年版のものを観て、「こんなすごい話だったんだな」と衝撃でした。まさか、アニメを観て泣くとは思いませんでした。観る前は「テレビマンガだろ、いい加減こういうのは卒業かな」という感覚もあったので、アニメでこういう物が作れるんだという驚きがありました。
皆川:私は、最初ものすごい暗い曲で始まったので怖かったんです。そしたらこれまで見たこともないような宇宙戦艦が出て来て、とんでもないものを見せられたと思いました。そして、よくわからないまま夕日の沈む中で大和を見つけるというシーンを見せられて、何が始まるんだろうと思ったのが第1話の印象でしたね。その後、1974年版『ヤマト』の劇場総集編をいとこのお兄さんに連れられて観に行ったんです。それもあって当時はお兄さん・お姉さんの年上のものという印象もありました。
福井:となると、本当のドストライクの世代は私たちより上の世代ということなんですね。その世代の人たちからするとちょっと違った捉え方をしているかもしれないですね。
──60代となると30代の私にとっては親がドストライクの世代に近い形になりますね。
福井:30代の方だと親が観ていた作品という面もあるんですね。
皆川:2世代の『ヤマト』ファンというのもいますからね。親は『2199』で子どもは『2202』が好みだという感じで、感想がわかれたりとかもあるらしいですよ。
──それもいい関係ですね。
皆川:観方が違っても本質的な『ヤマト』の魅力に惹かれている親子がいるというのは凄く嬉しいです。
──歴史を超える作品は普遍的でどの世代にも響く魅力がありますから。
福井:何かが引っ掛かったんでしょうね。これが『宇宙戦艦ヤマト』でなければ別なことになっていたかもしれないですね。
皆川:戦艦大和がモチーフになっているあのワンオフでバンと異物をぶつけられたようなデザインはみんなの脳に残りますからね。74年当時に描かれた絵の解釈とその後の作品での解釈とはまた微妙に形は違うんですけど、コンセプトとして戦艦が宇宙へ行くというのは一度観たら忘れられない形ですから、そこも魅力じゃないでしょうか。
──これだけ多くの世代に支持される作品の公開が迫るというのはプレッシャーもあるのではとも思いますが、今のお気持ちをお聞かせください。
福井:本当に思った通りに出来ました。『ヤマト』の世界はこれまでの常識を覆すようなことが起きて人類そのものが変容を強いられる世界で、今ととても近似値のある話だと思っています。私たちと地続きのこの世界を1人でも多くの方に観ていただきたいです。
皆川:本当に歴史のある作品で多くの人が今も愛してくださってる作品なのでもの凄い重圧があります。『2199』『2202』を皆さんはこんな重圧の中でやっていたんだと感じて押し潰されそうになりましたが、凄いものに関われました。『ヤマト』は本当に凄いな、良いなというのを、出来上がったフィルムを観て改めて感じました。この映画は気持ちのいいものに仕上がっているので、是非みんなに観て欲しいと思いますね。