誰にも指さされないならもっと派手にやれ!
──そうやって今もずっとロフトに対して深い愛情を抱いてくださるのは本当にありがたいことです。
JOE:前のロフトは横にあるボロい楽屋から直でステージで、そこに上がるための2段の階段があったわけ。俺が若い頃、氷室(京介)くんに「あの階段の向こうに武道館がある」って言われたことがある。そいうのって夢があるじゃない?
ウエサカ:はい。
JOE:BOØWYもロフトで育って、ライブイン、渋谷公会堂、武道館、東京ドームと着実にステップアップしていった。BOØWYが初めて武道館でライブをやったときに呼ばれて、終演後に楽屋に顔を出したら氷室くんに「JOE、ちょっと来いよ」と言われてね。ああいう場所でのステージセットって、お客さんを出したらすぐにバラさなきゃいけない。それを大道具さんに崩すのを待ってもらって、氷室くんがわざわざ俺を武道館のステージに立たせてくれたんだよ。あの景色はすごい迫力だったし、ロックンロールには夢があると思えたね。だからNAkidZにはもっと高いステージを目指してほしいわけ。一人でも多くの人に見てほしい、聴いてほしいでしょ?
ウエサカ:そうですね。
JOE:だったらロフトを始まりとして、これから一歩ずつステージを駆け上がっていってほしい。俺たちが今からそれを目指すと70とかになっちゃうし、俺は今後B級アンダーグラウンドの王様になるから(笑)。でもNAkidZにはいま流行りの音楽を認めつつも自分たちの信念は曲げず、もっと高くて広い場所を目指してほしいよね。
ウエサカ:武道館はロックをやってる以上、一度は夢見る場所なので出てみたいですね。でも俺たちはまだ何も成し遂げていないので…。
JOE:そんなことないよ。これから成し遂げていけばいいんだし。
ウエサカ:今はただ、その都度掲げた目標を地道に達成していくしかないですね。
JOE:やるなら今だよ。30、40、50代と歳を重ねるにつれ、感性は変わっていくから。悪い意味じゃなくてね。大きい夢を持てるのは勢いがあるうちだよ。
ウエサカ:それは自分でもすごい感じてます。
JOE:焦る必要はないけれども、一歩ずつ階段を駆け上がっていこうというのはお客さんが何千人と入る前に言えることだから。今ならいくらでも言えるじゃん。
ウエサカ:そうですね。黙って自粛してる場合じゃないっていうか、誰に指さされようが自分たちらしいライブをやるしかないわけで。
JOE:指さされるのがロックだから。俺なんて40年近くあちこちから指さされっぱなしだよ?(笑)
ウエサカ:今の人たちは指さしすらしませんよね、俺たちみたいな奴らを。
JOE:だからもっと派手にやったほうがいいよ。警察の世話にならない程度に(笑)。だって俺たちが憧れたロックスターって世界中おかしな人ばかりでしょ? 普通じゃないことをやるのがロックンロールなんだし、そういうことに憧れてきたんだから普通の人にはできないこと、普通の人の感覚じゃ計り知れないことをやったほうがいい。
──何をやるにもコンプライアンスの重要性が叫ばれるこのご時世では、ロックミュージシャンも当たり前のように常識を求められるのでいろいろとやりづらいでしょうね。
JOE:昔は今よりも監視カメラが少なかったしね。俺はこの街(高円寺)のどこに監視カメラがあるのか全部知ってるけど(笑)。
ウエサカ:とにかくもっともっと派手にやってやるしかないですよね。
JOE:NAkidZは他人の目なんて気にせずに今のままやれば俺はいいと思う。俺がデビューした頃は空前のバンドブームで、猫も杓子もバンドをやってるような時代だった。1週間前にバンドを組んだばかりの連中がデビューしたりするような時代で、年間に200バンド以上がメジャーデビューする感じでさ。そんな風潮に当時から違和感があったし、何だこいつらとか思ってたから全然友達ができなかった(笑)。周りのやることなすこと全部が嫌いだったね。
ウエサカ:俺たちも友達は少ないし、全部が嫌いですよ(笑)。
JOE:そもそも“全部が嫌い”からロックは始まるんだよ。
ウエサカ:そうですね。俺も最初はローリング・ストーンズが嫌いだったし。
JOE:俺も最初は嫌いだった。何だこのクネクネしたボーカル、気持ち悪! って思ったし(笑)。今は大好きだけどね。
ウエサカ:俺も今は大好きです。
JOE:似てるね、やっぱり。どのタイミングでストーンズを好きになった?
ウエサカ:高校をやめた辺りですかね。自分が普通じゃないのかもなと思って、それまで気持ち悪いとかダサいとか思ってたロックをやってる人たちが実は格好いいってことに気づいて、こういう生き方のほうが自分には向いてるなと感じた瞬間があったというか。気持ち悪くてダサいと思ってた人たちを自分なりに真似し始めたら周りの奴らを見る目が変わってきて、関わる奴らも変わってきて…着る服、身につけるものも全部変わって、そしたら自分と似た奴らが周りにこんなにいるんだと知って、こっちの世界は住みやすいなと思うようになったんです。