自分に100点をあげられないからバンドを続けている
──NAkidZの他のメンバー、チバシンヤさん(ds)もカミタニジュイチさん(ba)もG.D.に対して抱く思いはウエサカさんと同じなんですか。
ウエサカ:どうなんだろう。普段からあまり話さないし、俺から連絡もしないので。
JOE:同じく俺も。どこに住んでるのか知らないメンバーもいるからね(笑)。でもメンバーとはあまりベタベタしないほうが長く続くよ。ああだこうだメンバーに干渉する奴がいるとすぐに終わっちゃうから。ウチも初期の頃は練習の後に毎回飲んで、いろんなことをメンバーと話したものだけど、そういうのは売れない劇団と同じ。稽古帰りの劇団員が飲んでクダを巻くのをよく見かけるけど、そんなことで芝居が上手くなるわけがない。それと一緒で、バンドも練習終わりに酒を飲んで「あの曲のあの部分がどうのこうの」なんて楽器を持たずに喋ったって上手くなるわけがない。俺たちもよくそんなことをやってたけど、そういうのを通り越して俺はメンバーのことを信用してるし、集まるときは集中して集まる。だから練習もあまりしない。ドラムやベースの音に歌が乗っかるのは、いつも一緒にいてああだこうだ言ってたら絶対に合わないんだよ。合わせよう! と本能でキャッチするほうがスリリングだし、グルーヴが生まれるものだから。
──あえて予定調和を排するわけですね。
JOE:メンバーは遠い親戚みたいなものだし、信頼しているからこそ馴れ合わないほうがいい。ストーンズだって来日するときはメンバー別々のジェット機で来るでしょ。別々の時間に来て別々のホテルに泊まって、リハも別々にやって本番で合わせる。それでもやれるのはメンバー間の信頼があってこそだし、俺たちはまだその域ではないけど、信頼することの大切さを感じるね。たとえば俺の歌が走るとメンバーが合わせてくれるけど、それは普段から練習しすぎるとできない。その時々で各自の神経が張ってるからこそできるもので、だからステージでちゃんとできればそれでいいじゃんって思うわけ。
ウエサカ:そういう話を聞くと、俺らはちょっとスタジオに入りすぎてる気がします。
JOE:俺たちも若い頃はそうだったよ。メジャーにいたときはツアーがないと月曜から金曜まで4、5時間スタジオに入らされてた。でも行ったってやることがない。曲を作れって言われてもそんな毎日作れるものじゃないし。近所のスタジオなのにハーレー(ダビッドソン)で通ってたから、スタジオに置いてあった掃除グッズでずっとハーレーをピカピカに磨いてたよ(笑)。同じスタジオにいたアンジーやポゴは一生懸命練習してたけどね。
──G.D.やNAkidZのように、ロックンロールをルーツにして真正面から体現するバンドが近年少なくなってきていることに関してはどう感じていますか。
ウエサカ:肩身が狭い気はしますよね。
JOE:狭くはないよ。こっちがルーツなんだから。7thまではわかるけど、4とか3のついたコードなんて今さら使いたくないしね(笑)。でもそんなことはどうでもいいし、自分たちのやりたいことがはっきり決まってる以上、覚えなくていいことは放っておけばいいんだよ。これだけ純粋なロックンロールをやるバンドが少なくなってきた以上、NAkidZの存在は逆に目立って有利なんじゃないかな。
ウエサカ:ロックンロールって言ってるわりにギターが鳴ってないじゃん、みたいなことを感じるバンドが多くて。俺たちの周りはみんなロックを聴いて、「このアルバム最高だよね」とか「こういう録り方してていいよね」みたいな話をするけど、チャートに載る“自称ロックンロール”を聴くと俺らと全然違う世界みたいでうすら怖くなります。まるでパラレルワールドみたいに感じますね。
JOE:俺たちのやってることは世間的には格好良くないのかもね。別にそんなこと知ったこっちゃないけど。
──JOEさんがそれでも頑なにロックンロールにこだわり続けるのは、ロックンロールでやれることがまだ何かあるかもしれないからですか。
JOE:まあ、好きになっちゃったものはしょうがないよね。当時はB級ロックンロールと言われてたジョニー・サンダースを好きになったせいでパンクロックにどっぷりハマって、そういう音楽やスタイルが格好いいと信じて早40年くらい経っちゃったんだけど(笑)。結局、今もずっとバンドを続けているのは、自分に100点をあげられないから。やりたいことを100%できてないからやめられなくなった。それはあると思う。
最初はボーカリストではなかったという意外な共通点
──G.D.はベーシストが流動的なのを除けば、JOEさん、原(敬二)さん(gt)、(佐藤)博英さん(gt)、DEBUさん(ds)はずっと不変のメンバーじゃないですか。35年間同じ面子でバンドを続けてこれたのは、楽曲作りやパフォーマンスとはまた違った才能があるからだと思うんですよね。
JOE:ベースは確かにいろいろ変わったけど、35年の半分以上は岡本(雅彦)が弾いてるからね。俺はライブの本番中に他のメンバーのことを気にしないようにしてるんだけど…まあ、DEBUのドラムがあまりに乱れると気になるけど(笑)、基本的に岡本がバンドの指揮官で、斜め後ろから俺を気持ちよく唄わせようとしてくれるんだよ。だからすごく安心できるし、「好きにやりなよ」と背中を押されてる感じがする。そうやって岡本がリズムをキープしてくれて、それに乗っかる2人のギターがいて、自然と俺を気持ちよくさせてくれる。だけどトリオはもっとシビアだよね。ウエサカくんは弾きながら唄うから余計大変だと思うけど。
ウエサカ:そうですね。ピンボーカルというポジションには憧れるし、本気で格好いいボーカルが他にいるならギターに専念したいくらいなんです。実際、ウチも最初はピンボーカルがいた4人編成だったんですよ。でもそいつが抜けて、それまで唄ったこともなかった俺がボーカルをやることになったんです。俺はギターを持ってるからまだステージに立っていられるけど、ピンボーカルって本当に格好良くないと様になりませんよね。実は今もずっとピンで唄える奴を探してるんだけどなかなか見つからなくて、同い年でピンボーカルを張れる奴がいるならまた4人になってもいいかもしれない。
JOE:へぇ、そうなんだ。
ウエサカ:俺はもともとギターヒーローになりたかったんです。このままロックンロールが廃れると、俺より若い奴らがギターを弾きたくならないと思うし、下の世代がギターを弾きたくなるような音楽をやりたいんです。
──ウエサカさんが憧れたギターヒーローというのは?
ウエサカ:レッド・ホット・チリ・ペッパーズのジョン・フルシアンテです。あとはジミ・ヘンドリックス。ジョニー・サンダースも好きだけど、ブルースをルーツに持った人が好きなんです。スティーヴィー・レイ・ヴォーンもそうだし。
JOE:シブいねぇ。その辺のギタリストはどうやって知ったの?
ウエサカ:学生の頃に先輩が弾いてたんですよね。最初にレッチリを聴いて自分でも音楽をやろうと決めたので、その時点でジミヘンへ辿り着くルートがすでにあったというか。
JOE:実は俺もギタリストになりたかったんだよ。この店(CHERRY-BOMB)に飾ってあるギターは俺モデルだからね。だけど俺は唄いながら弾けない。いっぺんに2つのことができない。だからウエサカくんが羨ましいよ。
ウエサカ:弾こうと思ったことはあるんですか?
JOE:亜無亜危異という大好きな先輩バンドがいて、ギターなら藤沼(伸一)先輩よりも俺は亡くなってしまったマリ(逸見泰成)に憧れててさ。リズムを刻むサイドギターで、俺も最初はそんなふうになりたかったんだよ。東京に出てきたときはギターをやろうと思ってたし。でもひょんなことから俺が唄うことになって、弾きながら唄えないことに気づいてね。それからずっとピンボーカル。今やすっかりギターは弾けないけど、でもだからこそギターには今も憧れがあるんだよね。
──JOEさんはスリーピースバンドに憧れがありますか。
JOE:自分にはできないことだから憧れはあるよ。ポリスみたいなバンドも好きだったし。でも上手くないとスリーピースはできないんだよね。俺は目立ちたくなかったからサイドギター、リズムギターになりたかったんだけど、なぜかそうはならなかったね。
──もともとギタリスト志向だったのがボーカリストになった点はJOEさんもウエサカさんも同じですね。
JOE:そうだね。ロッカーズでいえば鶴川(仁美)さん、亜無亜危異でいえばマリのポジションが憧れだった。
──とはいえ鶴川さんもマリさんも圧倒的に華がありましたよね。
JOE:そうそう。ボーカルをやることになって、ずっとやろうとは思ってなかった頃にコンテストに何回か出て賞をいくつかもらったことがあるんだよ。それがベストドレッサー賞とかベストパフォーマンス賞とかで、歌は全く評価されなかったんだけど(笑)。