ロフトのステージの先には夢がある
JOE:ウエサカくんもそうだと思うけど、みんなそれぞれ新宿ロフトに対する思い入れがあるじゃない? 俺はロフトのオーディションに2回落ちてるんだよ。G.D.の前にやってたバンドなんだけど。もうボロクソに言われてさ、「出してやってもいいけど昼の部から修行しろよ」とか言われて「冗談じゃねぇよ、こっちは夜の部からやりたいんだよ!」なんて言い返す時代もあった。それからバンドが変わって、G.D.の前身バンドでたまたま夜の部に出られることになったわけ。それは内側に潜り込んだというか、ロフトの事務所に押しかけて電話番をしたり姑息な手を使ったからなんだけど(笑)。最初は月曜から木曜の平日に出る3、4バンドの一つ。それがライブを重ねてだんだんトリに近づくようになって、今度はハードルの高い金曜、土日にやりたくなる。そのために頑張ってお客さんを増やしていったら週末もやれるようになって、初めて土曜の夜にロフトでやれたときはすごく嬉しかった。しかもトリでさ。その打ち上げをやりたいとロフトのスタッフにお願いしたんだけど、その日はあいにくゼルダのオールナイトが入ってて「出てけ!」って言われてね(笑)。結局、歌舞伎町に流れて飲んだけど。そうやって一歩ずつ徐々に階段を登っていく感覚はNAkidZにもあるんじゃないかな。ロフトに対する熱い思いがウエサカくんにもあるのを俺は感じるんだけど。
ウエサカ:俺らもピンボーカルがいた時期にシェルターのオーディションに落ちてますし、それはすごく悔しかったです。その後、杉山オサムさんというエンジニアに音源を録ってもらうようになって、「どうしてもシェルターやロフトに出たいんですけど、どうすればいいですか?」とオサムさんに相談したんです。そしたらロフトへ連れていってくれて、紹介してもらってCDを渡したのが柳沢さんだったんです。それから柳沢さんにメールしたら俺らを面白がってくれて、やっとシェルターに出させてもらうようになったんですよ。JOEさんがおっしゃるように徐々にですよね。ロフトのバーステージに出られるようになって、去年は無観客だったけどメインステージで配信ライブまでやれて。ちょっと前の自分たちには想像もできなかったことです。
JOE:一つの目標が達成できたら次はここへ行こうっていうのが絶えずあるわけじゃん。それがあるからモチベーションも保てるしさ。
ウエサカ:そうですね。ロフトへの憧れありきでここまでやってこれたところはあると思います。
JOE:去年、初めてNAkidZを見たときにすごく嬉しそうだなと感じたし、ロフトのメインステージに立つ喜びを3人が噛み締めているように見えたんだよね。諸先輩方にも怯まず精一杯やっていたのが格好良かった。
ウエサカ:まだ数えるほどですけど、ロフトのメインステージでライブをやるときは機材を壊しがちなんですよ。
JOE:自分の?
ウエサカ:いや、ロフトの。
JOE:そんなのどんどん壊しちゃえ! (平野)悠さんに払わせておけばいいよ(笑)。
ウエサカ:機材は壊すし、すごい緊張するし…それでもロフトでライブをやらせてくれる柳沢さんを始めスタッフのみなさんには感謝しかないですね。
──ロフトのステージには他のライブハウスとは違う空気がやはりあるものですか。
JOE:今のロフトのステージは小滝橋通りにあったロフトのステージと同じ高さにしてあるんだよ。ステージの幅は若干広いけど、動き回るスペースは昔とほぼ一緒。先代の社長だったシゲ(小林茂明)もよく言ってたよ。「ロフトのステージはたかだか何センチ何ミリの高さだけど、この先に夢があるんだよ。自分次第でこれから立つステージは何メートルの高さにでもなるんだ」って。そんな話を20代で聞いたものだから、今もロフトのステージは特別だよね。ロフトのフロアに倣ってこの店の床も市松模様にしてあるしさ。まあ、元はCBGBだと思うけど(笑)。でもそういうのって大事だと思うんだ。他の人にはどうでもいいことだけど、自分にとってすごく大事なことにはずっとこだわり続けるっていう。地方のライブハウスでももちろん一生懸命ライブをやるけど、ウチのバンドはロフトで生まれ育ったし、いまだにロフトではちゃんとしないとな、って思う。