「The Sound of Silence」を今あえてカバーした理由
──アルバムのタイトルでもある「The Sound of Silence」はサイモン&ガーファンクルの60年代の有名な曲。なぜこの曲を? 歌詞から?
谷ぐち:歌詞からっぽいですよね。いろいろ暗喩とかあるんでしょうけど、コミュニケーション不在とかの歌詞だし、今の状況に当てはまってるし。でも歌詞からではなく、単純に俺、この曲が好きなんです。ミニ・アルバムでカバーを入れてもいいねってなって、曲を探して。カバーはなかなか難しくて上手くいかないことが多い。だったら好きな曲を提案してみようと。
飯田:YUKARIちゃんも異常にやりたがったんですよ。僕の世代は親が聴いてた曲なわけですよ。だから僕からするとマジか? って感じだったんですけど、YUKARIちゃんはできる気がするって。もんでん君もできる気がするって。で、やってみたら、確かにできるなって僕も思って。でもYUKARIちゃんはなんでそんなにやりたかったの?
YUKARI:なんかね、わたしが唄ってバンドでやってるって、凄いイメージできたんですよ。わたしは何かに対してイメージを持って作っていくタイプではないのに、この曲はなんでか絶対にできるってイメージが出てきた。
──谷さんが好きな曲ってことは知ってて?
YUKARI:全然知らない(笑)。曲はもちろん知ってたけど、特に意識して聴いたこともなく。でもどうしてもやりたい! って思って。そしたら歌詞も今の状況のことのようだし、凄いピースがハマった感じで。今まで何かが降りてきたこともないし、神がかり的なことは言いたくないけど、この曲は、こんなに運命的なことってある? って思うほどビタッとハマりましたね。
──リミエキならではの面白さがあるけど、意外とちゃんと原曲を活かしてるよね。
谷ぐち:そうです、そのままやりたかったんです。カバーってものを考えたら、The Lemonheadsのスザンヌ・ヴェガのカバー「LUKA」がめちゃくちゃ好きで。パンク/オルタナのバンドのカバーの成功例だなって。あとfOULとのスプリットでbloodthirsty butchersがやってるWIREの「Outdoor Minor」とか。アレもホントにいいな。そういうのを自分でもやってみたくて。原曲も好きな曲で、いい曲だなって思える曲を、その気持ちを持ってカバーできたらなって。
──そういう感覚ってFUCKERで弾き語りを始めたからっていうのもある?
谷ぐち:この曲をカバーするにあたって全然それは考えなかったけど、感覚としてどこかにあるのかもしれないですね、弾き語りを始めたことが。
──アルバムの最後に相応しいです。今作、今だからこそだし、進行形のリミエキが感じられるし、攻めてるし。
飯田:今、ホントに正解がない中で、自分たちは曲を作っているってことを形にしたいっていうのはありました。コロナ禍で活動ができなくなってしまっているバンドもいるし、厳しい状況で。そういう中で僕らは、いいか悪いかは置いといて、活動を続けてるってことを、こういうスタイルもあるんだってことを、ちゃんと見せていこうと思ったし、その気持ちが曲になっていると思うし。今のタイミングで出したいって思いましたね。このアルバムが流れの一つの到達点であり通過点であり。
正解ではないかもしれないけど、できることをやっていく
──うん。で、谷さんとYUKARIちゃんは感染してしまったけど、何か考えに変化ってあります?
谷ぐち:感染対策をちゃんと考えて、それでライブをやっていこうって決めるまで、コロナの情報は凄い調べて。調べた結果、感染しないってことは絶対にない。ライブに来場した中に感染してる人はいると思ったし、メンバーやスタッフにもいる。感染者が出るって想定していた。だから二次感染を防ぐ方法、リスクをいかに低くするかって方法もイメージはしていたんで。だから自分たちが感染してもその考えは変わってないんです。できることを探りながらやっていく感じです。俺は仕事が介助なんで、そことも随分話して。で、やろうと決めたし、やれるメンバーだし。ならばやっていこうと。
──ライブやるにしても今までにない実務的な大変さと、メンタル的にも大変さがあると思うけど。
YUKARI:自分が感染させる人になってしまうかもっていう。わたしが感染して、わたしから感染した人もきっといる。たまたま重症者は出なかったけど、もしかしたら人を殺してたかもしれない。そう考えるとヘヴィでした。でもね、考えに考えた結果、もうバンド止めとくかってことにはならなかった。今の段階ではまだまだ終息しないし、感染はする。それならば、感染をしないように、広げないように、対策を考えてライブを続ける。正解ではないかもしれないけど、できることをやっていこうと。
──何が正解かわからないし、明日は状況が変わってるかもしれない。そういう中で、感染対策も含めてできることをやっていくっていうのは間違ってないと思います。ライブも、むしろいろんなやり方を試せて楽しいかもしれない。
YUKARI:配信ライブとかトークライブとかね。配信ライブは最初はやりたくなかったんですよ。あまり積極的な気持ちではなかった。ホントのライブとはやっぱり違うし。でも今は、毎回は無理だけど、配信ライブもやっていこうって思ってます。ライブハウスに行けない人もいるわけだしね。
──そしてレコ発ワンマンが秋葉原グッドマンで開催。一度閉店して復活して再スタートのグッドマンでやるってのもいいですよね。
YUKARI:グッドマンにはお世話になったし、これからもやっていきたいし。
──しかも『The Sound of Silence RELEASE PARTY~Special 3stages ONE MAN SHOW~』と題して、一日に3回って!
YUKARI:なんか、ワンマンとか普通にやるのがイヤなんですよ。お客さんのそれぞれの一日が、うちらのワンマンで決まるって、そんな責任負うのがイヤなんです。もちろん絶対いいライブやるし、楽しい時間を過ごしてほしいんだけど。でもイヤなんです、ワンマンを普通にやって終わらせるのが。だったら3回やるわ! って(笑)。
※リリース日の翌日、12月3日(木)に吉祥寺NEPOにて『The Sound of Silence』全曲無料配信ライブが急遽決定。最高!