信頼関係を築けたからこそ話してくれたこと
──the原爆オナニーズを撮りたいって思いから始まったのではなく、地方のバンドや同世代や若い世代のバンドを応援したい気持ちから始まって、辿り着いたのがthe原爆オナニーズだったわけで。
大石:そうなんです。だからTAYLOWさんを筆頭にメンバーの度量の大きさですよね。自分だけの熱量だけでは、話が進まないものですが、映画の企画自体をTAYLOWさんも面白いなと思ってくれたんだと思います。TAYLOWさんは若いバンドを誘ってライブをしたり、自分が面白いなと思ったら一緒にやる人であるからこそ受け容れてくれたのかと思っています。
──映画の中でも若いバンドを応援している姿勢がすごく出ている。グッとくるシーンがいくつもあります。
大石:ホント、そういうことを活動や姿勢で表していますよね。
──私もthe原爆オナニーズに何度かインタビューしたことあるんですけど、特に最初にインタビューの話が来たときは、TAYLOWさんにインタビュー? やれるかな? って思ったんですよ。今でこそ優しい人って分かったけど、最初はやっぱり恐れ多くて。そういう躊躇はなかった?
大石:恐れ多い気持ちはありましたが、猪突猛進なとこがあるので躊躇はなかったです(笑)。それでもやはり、the原爆オナニーズの度量の大きさだと思っています。撮影中に内容に関して口を出されることは全くありませんでしたし。
──TAYLOWさんも若いバンドを応援しているし、アンダーグラウンドシーンを持続させるって意志もあると思う。だから大石さんの思いが分かったんでしょうね。若い世代を応援しているっていう共通した思いを感じて、自由に撮らせてくれたんだと思う。
大石:そうだったら嬉しいです。海外のシーンの話をしたとき、TAYLOWさんが今まで見てきたものを、私も少しは追えているかなと感じましたし。
──大石さんがメンバーそれぞれに質問をぶつけるじゃないですか。「なぜ? なぜ?」って感じに。好奇心いっぱいで、ホント猪突猛進に(笑)。
大石:敬意を払った接し方はしてるつもりですけど(笑)、ちゃんと行くとこ行かないと撮れないなっていうのがあったんで。
──行くとこっていうのは、the原爆オナニーズの土壌に立つっていう?
大石:撮るからには自分の本音をちゃんと言っていこうと努めました。撮り進めるうちに、思ってもいなかった面がどんどん出てきて、質問したいこともたくさん出てきたんです。
──大石さんの質問する声が実際に聞こえてくることに、ちょっとびっくりしました。大石さんは自分を出したいタイプではなく、伝えたいものを出していくタイプだと思っていたので。
大石:基本的には自分を出したくないと思っていて、自分の声はできるだけカットしたかったんです。でもプロデューサーの近藤(順也)さんに見てもらったら、「ヒストリー映画ではなく視点は大石さんにあるから、大石さんがなんでこの視点で撮っているのか映画から見えてくるようにするため、声を入れたほうがいい」と言ってくれて。確かにそうだなと。だからうざいくらいに自分の声が入ってます(笑)。
──絶対に声が入ってて良かったですよ。ドキュメンタリーとはいえ、いやだからこそ、作り手の主語があるほうがいい。で、映画の前半は大石さんと主にEDDIEさんとの会話があって、後半はSHINOBUさんとの会話が増えていきます。SHINOBUさんは本音を正直に話していますが、あの流れはどんなふうに?
大石:SHINOBUさんは撮影を進めると、カメラの前で言いたいことがありそうと感じたんです。その言いたいであろう話を聞きたいなと思いました。映画はほぼ1年間かけて作ったんですが、1年という時間が良かったのかもしれません。3カ月だったら言ってくれなかったを、1年という時間で信頼関係を築けたからこそ、カメラの前で言っていいと感じてくれたんだとは思いました。
──大石さんもthe原爆オナニーズにいろいろな謎を感じたわけで、その謎解きをSHINOBUさんに託したような。
大石:確かにそうかもしれません。SHINOBUさんは観客としてずっとthe原爆オナニーズを観てきて、客観的な視点があった上で、実際にバンドの中に入ってみたら、外から見えていたバンドと全然違ったということを一番経験している人だと思いました。私もthe原爆オナニーズにそういう印象を持ったので、SHINOBUさんが話してくれるthe原爆オナニーズが、自分にとっても一番身近に感じたんです。