「Ode To Joy」のコンセプトはキャンディーズ
──愛さんも「Recollection」と「Dawn Praise the World」の2曲で清々しいボーカルを披露されていますね。
田渕:自分の中で“この歌詞は直接的で唄いづらいな”って思ったものでも、アイコンが唄ってくれると、不思議とそうは聴こえなくなるんです。さっぱりしてると言うか、そっけない感じがいいと言うか…うまい言葉が見つからないんですけど。
小林:自分では、家でCDを聴きながら一緒に唄ってる感じが一番いいと思ってるんですよ。鼻歌みたいに、何となく出ちゃった感じが一番いいんじゃないかって。だからなるべくそういう気持ちで唄えればなぁ、と。
吉村:2人とも唄い出しはもの凄くヘタなんですよ。でも、2、3回唄い直していくと急に凄い伸びがあって。アイコンが今言った、家で唄ってる感じとかも大事にしたいなぁと思ったんだけど、アイコンはそれがお風呂場的になっちゃってるんだよね(笑)。実際にアイコンからはそういう要望を受けたんだけど、お風呂場の一歩手前で抑えたほうがいいよ、って(笑)。
小林:でもね、夕方に外を歩いてて、どこかの家のお風呂場から歌声が聴こえてくることがあるじゃないですか? それが最高にいいなって思うんですよ。別に誰に聴かせるわけでもない歌っていうのが。
吉村:でも俺としては、同じ家にいる感じなら、パソコンの前に座りながらラジカセに合わせて唄ってる感じをもっと出したかったって言うか。パソコンの画面と近い感じでね。アイコンはそうでもないけど、ひさ子には結構何度も唄ってもらったよね。ブッチャーズでもそうなんだけど、今回はボーカルの加工をほとんどしてないんだよ。いいテイクを録るには音程的なこともあるし、たくさん唄ってもらうしかなかったからね。
田渕:確かに、前回のアルバムではこんなに唄わなかったですね。
吉村:やっぱり、ボーカルに関しては素直なところを引き出したかったからね。決してヘタなところを出そうとしたわけじゃなくて、良いところをちゃんと押さえたいっていう。
──上手く唄おうとして邪念が入ると良くない、というような?
吉村:いや、彼女達はまだそこまで到達してないね(笑)。
小林:チャコちゃんはカラオケに行くと歌がすごく上手いんですよ。でも、toddleになるとちょっと違ってて…ヘタって意味じゃないんですけど(笑)、ホントはもうちょっと楽に力を抜いた感じで唄えると思うんです。そこのハードルを高めにして、ちょっと無理めに唄ってると言うか。声も凄く大きく出したりとか。なんか“ちゃんと唄おう”っていう意識があるような気がして、それが凄くいいなぁって思う。
田渕:カラオケだと、元を唄ってる人がいるからそれをお手本にして唄ってる感じで、頭の中できちんとしたイメージができるんですよね。でも、toddleになるとお手本がないから、どこまでどう唄うかとか自分で判断がつけられなくなって、アイコンの言うように頑張ってる感が出てしまうと思うんですよ。
吉村:ホントに歌の上手い人は、目の前にあるローソクの炎を揺らさないで唄うんだよ(笑)。
──それじゃ金沢明子ですよ(笑)。でも、ボーカルの説得力はファーストに比べて格段に増したと思いますよ。
小林:歌の比重が前回よりも大きくなってると思いますね。録り方も違ったし、前は音ももうちょっと小さかったですしね。
田渕:あと、全然関係ないんですけど、toddleの歌をアイドル風に唄ってみたことがあるんですよ。そうしたら上手に唄えた気がした(笑)。
江崎:振り付けとか、凄く活き活きしてやってたもんね(笑)。
田渕:踊りながら唄うことはよくあるんですよ、レコーディングの時とかに。
吉村:でもね、ボーカルの調整はホントはもの凄く事細かくやってるんだよ。誰も知らない空白の2時間とかあったからね(笑)。エンジニアの清志と一緒に、「初めにこういう組み方で行こう」とか話し合って、それを俺が聴いて組み直して、それをまた清志が滑らかにしていって…。1曲に対して最低2、3回はそういう細かい作業をしてたんだから。
──それは随分なサービスをされていますねぇ…。
田渕:されてますねぇ(笑)。
吉村:それも時間があればいいんだけど、限られた時間の中でやるってなかなか大変なんだよ。で、女の子ボーカルの一番のサービスは最後の曲(「Ode To Joy」)ですよ。これはですね、キャンディーズをイメージしてます(笑)。ホントにそういうコンセプトでやったの。2人だけどキャンディーズみたいにやろう、って。
田渕:最初2人で唄ってて、途中で1人出てきて、その後にまた2人出てきてぐるぐる回るっていう。
吉村:ただ、ひさ子がランちゃんなのはいいんだけど、スーちゃんとミキちゃんの2役をアイコンにやらせていいものかどうか、俺は凄く悩んだんだけどね(笑)。ブッチャーズでもトライアングルって言うか、3つのミックスっていうのを「『△』サンカク」のロング・ヴァージョンでやったことがあって。歌じゃなくて後ろの音だけど。それを今回、歌に活かしたっていうね。“これはキャンディーズ・ミックスだ!”と思って。だからキラッキラしてるんだよ。
田渕:まさに朝起きて、走り出した感じがしますよね。
小林:で、この曲の終わりがなんかズッコケちゃう感じなんですよね(笑)。ドラムが妙なリバースで、明後日の方向に行っちゃうみたいなイメージがあるんです。助走を付けすぎて止まれなくなる、って言うか(笑)。
田渕:この曲が最後っていうのが凄くいいと思うんですよ。「うわぁー!」って叫びながらどっかに行っちゃうみたいな(笑)。