何事もあきらめなければなんとかなる
──『湯河原音泉歌謡祭』をすごい楽しみにしてる人は多いですね。
睦:リピーターが多くなってるのが嬉しいね。「湯河原ファースト」で考えているからね。「湯河原にまた来たい!」って思ってもらえるのがいちばん嬉しい。
──掲げたテーマが「湯河原ファースト」って郷土愛そのものですね。湯河原をいちばんに考えるって。
睦:そうそう。俺ら中年が頑張んなくちゃいけねぇじゃん! って奮起して、老人たちと子どもたちをつなごうってなったんだけどさ。じゃあまずそのためには『湯河原音泉歌謡祭』に老人と子どもが来なくちゃ話にもならねぇだろ! ってなって、18歳以下と60歳以上は無料にしたわけよ。
──その流れでキッズのダンス披露を取り入れたんですか?
睦:そうそう。孫が出るからね。ジイジもバアバも孫を見に来る。それを取り持つのが俺たちボンクラ中年じゃねぇかと。本気でそう思って動き始めたわけよ。
──すごくいい発想ですね。
睦:そこから始まって、でもジイジもバアバも孫にお金を使うんだよ。だから中のグッズだけは充実させないと、っていう。
──なるほど。売れますからね。
睦:だから俺の物販、だんだんすごくなってきちゃったよ。もう山積み! 結局は饅頭まで出すわけだよ。
──はいはい(笑)。やっぱり売れますか?
睦:まぁ、饅頭は賞味期限がちょっと保つから。生ものじゃないから。そして、それを売るためにツアーをまわるっていう、逆になってきてんだよ。順序が。在庫抱えたくねぇよって。それは売るよね。売るしかねぇんだもん。そういうので今まで来てる。ずっとここまで。
──睦さんが前に、いつか「熱海秘宝館」みたいなのを自分でやりたいって言ってたじゃないですか。もう本当に現実味を帯びてきましたよね。
睦:うーん、やろうと思えば今でもできるんだけど。なんかさ、ちょっともう飽きてきて。
──飽きてきてって(笑)。回転が速すぎますよ!
睦:もうだって、イメージの中ではフランチャイズで60店舗くらい出来てるんだよ。もうこの4、5年でいろんなことを考えた。お菓子屋とかにも提供して…なんてさ。けど結局、売る場所がなきゃダメだっていうところに辿り着いた。
──店舗が必要ってことですね。それと最初の動きに耐えられる資金ですよね。
睦:うん。場所と、やっぱり金がかかると。そんなことより、俺、バンドマンだから。
──違うなと(笑)。
睦:グッズの中でさ、俺のマーチャンダイズ(物販)の中でやっていくっていうのはいいじゃん。で、卸しも行ったわけ。ちゃんと。
──卸して、そのままディストリビューションをしてもらおうということですよね。
睦:結局は中に入るだけだから何の得にもならない。「そんなことを考えてる時間ないんだよ! 俺は!」ってところに戻ったわけだ。だからもう、ダメになっていってる。そういった意味で「飽きてきた」って言ったんだよ。ルートの開拓はしたけどね。
──じゃあ、考えが淘汰されて今のスタイルに辿り着いてるってことですよね。でもしっかりチャレンジしたり、考えて行動に移してみるっていうのがすごいですね。そこまでちゃんとやってみて判断するのが。
睦:うーん、だから仕事に変えたからじゃない? 食っていくためだからね。
──そういうことですね。5月の2日、3日に『トーキョービッグランブル』を開催されますよね。今日、睦さんのSNSを読んだんですけど。新しい世代の台頭があって、自分がシーンの真ん中のちょっと後ろくらいにいるっていう感覚はどこから来てるのですか。
睦:位置的にそうでしょう。で、パッと後ろを見るとさ、老いぼれもいるんだけど、「まぁいいよ! いい! いい! 乗っかってきな! おんぶいいよ! 乗っかってこい! 連れてったる!」みたいな感覚だよ。
──俺は睦さんが最前線のイメージがあるんですけど。睦さんがそう言うことによって、シーンの人間はそういうイメージになる感じがするんですよね。それを見越しての?
睦:少なからず、意識はするじゃん。「アイツこんなこと言ってたよ」って。「じゃあ、その最前線のポスト、俺、行こうかな」って、別に許可制じゃないからね、そんなの。だからそんなふうに考える奴がいてもいいよね。面白いと思うよ。
──そうですね、サイコビリーのですね。
睦:そうそう。俺の中の立ち位置を明確にするっていうのもありかなと思ってる。いちばん後ろでもいいのかもしれないけど、考えたら「まだ俺、ここじゃねぇな」と。そこはイヤだなと。
──そりゃ違いますよね、全然(笑)。
睦:まだミッドフィルダーかどうかわかんないけどさぁ。まだすげぇ動くぞ、俺、って。
──まだ全然動けますよね(笑)。睦さんがこういう企画をやらないと、大きいイベントってないですもんね。
睦:うーん。なんだろうな。やっていけばいいんじゃないかな、回を重ねていけば。俺なんかだって、新しい世代のアイツらと同じ時期があったわけだから。歳で言えば10個、20個上なわけだから経験があるけど、アイツらだって若いだけで経験がないだけじゃん。経験積んでいけばさぁ。あきらめなければなんとかなるんだよ。だいたいあきらめて故郷に帰っちゃうからダメなんだよ。
──そうですよね。あきらめなかった人間が残っているだけ説はありますよね。
睦:だから消去法で俺は残ったわけじゃん。