俺らは俺らのやり方をするのが面白い
──そうですよね。いちばん最初に睦さんを雑誌で見たのは横浜のロカビリー/サイコビリーDJ特集で、驚異のボディ/マイク・パフォーマンスには定評がある、みたいな紹介をされていたのを覚えています。そこから登り詰めたわけですからね。
睦:もう元祖だよ、その手のパフォーマンスは(笑)。この前、アイドルの子たちがDJやっていた時にラップみたいのがかかったら、今時の子だからさぁ、見たこともねぇような変なポーズで踊ってんの。俺らさ、そんなのできないじゃん。
──抵抗ありますもんね。
睦:あるよ! できない、できない、そんなの。やるとしたらギャグじゃん。それを普通にやっててさ、「あー、これはもう俺たちの出番じゃねぇな」じゃなくて、ステージに立って出番を待つなら、おっさんを売らないと面白くねぇなと思って。おっさんをウリにしないと。
──俺、最近それ、わかってきたんですよ。そこについていこうとしたらエライ目に遭いますよね。
睦:大変だよ。
──無理が出るじゃないですか、絶対に(笑)。
睦:ターゲットは絞ったほうがいいかもしれないよね。10代、20代はもうやめときゃいいんだよ。30代、40代にヒットさせて。
──30代、40代、50代ですよね。
睦:そのくらいの考えでいけば、まぁいいんじゃねぇの? って思うよ。若いからってさぁ、その初期衝動を思いっきり蘇らせようとしても、「お前、嘘だろ!」ってなるって。お前! 知ってんじゃねぇかよ! もう経験済み! 経験もさ、恋も2度目だったらまだいいよと、好きじゃんお前、プロじゃん、20回恋したら、21回振られてるってことだろう! わかってんだよ、こっちは。なのにそれでまだ綺麗事ばっかり、絵空事? 信用しないよ、バカじゃねぇの? って思う。何を信じろって? 信じられないだろ!
──続いてロフトヘヴンでのレギュラー企画、『大衆キャバレー・ニューヤナギヤ』。新しい試みの企画ですが、いかがですか。
睦:これね、ホステスを入れるんだけど、そっちを集めるのが大変だよね。雇うわけだよ、ホステスを。大衆キャバレーだから。
──まだ行けたことがないんですけど、ホステスさんが数人配置されているんですか?
睦:バーレスクダンサーがいる。要はバーレスクダンサーの人って、曲がかかったら出てくるわけじゃん。派手な衣装で踊るでしょ。ホステス風と言うか、派手な衣装を着たバーレスクダンサーがフロアでお客さんと一緒にいてくれるっていう感じだよ。ホステスの役割をしてくれる。それが終わったら、俺らが2ステージ演って、飯も食えて、酒も飲めて、ゆっくりできる生演奏付きの大衆キャバレー。いちばんやりたかったの。昔あった、そういうキャバレーとかがなくなったからさ。スナックも大きいのがないでしょ? ちょうどロフトヘヴンは青い部屋だった場所だからね、もともと。青山のシャンソンのハコだったからさ。もしかしたらここなのかなぁ、と。いちばんフィットしたんじゃない? 天井の高さにしろ、なんにしろ、ハコの形にしろ、場所柄にしろ。だからロフトヘヴン。そこでシリーズ化して目指す形を作っていこうかなっていう考えがある。
──『大衆キャバレー・ニューヤナギヤ』は今まで何回開催されているのですか。
睦:まだ3回だよ。都内のライブってツアー始まっちゃうとやらないじゃん。だから「平日で」「仕事帰りで」っていうのにしようかなと。したいなと。『お昼のビッグショー』はあれはあれで人が入るから、年に2回くらいにしたほうがいいかなと。
──いろいろ考えてらっしゃるんですね。
睦:そうなるためにやってきたかな。未来が。
──5月5日にロフトヘヴンで開催されるラットボーンズのレコード発売記念ライブも楽しみですね。
睦:その前に1週間連続で新曲を演奏する修行と言うか鍛錬と言うか、経験値は確実に上がるよね。新作のCDこそ出してるけど、新曲をほぼメインで連続でやるわけよ。潤もわかると思うけどさ、だんだんツアーで新曲が仕上がっていくでしょ。
──仕上がっていきますね。
睦:それを、その1週間でツアーやる前に仕上げるっていう。
──すごいですね。連続で演奏したほうがたしかに仕上がりが如実ですもんね。メンバーのテンションも揚がりますし、疲労で力が抜けていい感じに馴染んでいく感覚ってたしかにありますね。
睦:仕上がっちゃうじゃん! ってお客様にも楽しんでもらえる。でも最初は仕上がってないけど、来てくれたお客様は曲が仕上がっていく様を見ていけるっていう楽しみも味わってもらえる。ヘタすると同じ曲を2回やるかもしれないよね。
──そういうことですね。ヘタしたら3回演奏することもあるかもしれませんね。
睦:ちょっとここ、こうやったほうがいいんじゃねぇ? って。
──睦さんは今、そういうこともできる環境を作ってますもんね。それを楽しむお客様が見に来てくれて。
睦:それでいいと思う。
──来てくれてるファンもすごく喜ぶと思います、絶対に。そこから、5月5日に照準を合わせていくっていうことですか。
睦:照準はまだ合わせてない。結局、仕上がる時ってあると思うから、ここまで! って決めてはいない。バンドも経験を積んできて仕上がりがだんだん早まってる。演奏していても唄っていても仕上がったらすごいラクだからっていうのはあるから。5月5日は雰囲気だったり、こういう所でやってますよっていうのを見せられたらいいと思っている。
──唯一無二のバンドになりましたね。睦さん、もともと唯一無二だけど。
睦:どうだろう。今はそこまでは考えてないんだけど、たとえば誰かと同じものをパクったとしても「ご自由にどうぞどうぞ」って思う。俺らもそれをパクるけど、誰かとはまるっきり違う表現をするからね、ってのは常に思っている。俺は俺の出し方でアウトプットするから、どうぞ貴社様は好きなようにやってください、って感じ。だから別に「勝つ」とか「負ける」とかは考えてない。俺らのやり方でこういうふうにやる、これが面白いもん。