しりあがり寿の事務所「有限会社さるやまハゲの助」の社内ロックフェスとして始まった「新春!(有)さるハゲロックフェスティバル」(通称「さるフェス」)。マンガ家と劇作家による奇想天外なこのロックフェスは、回を重ねる毎にその独自性と混沌さを増していき、毎年これで最後か!?という危機を乗り越え、昨年(2018年)ついに10周年を迎えるに至った。そして2019年はいよいよ新章に突入する「さるフェス」だが、奇しくも平成という時代が終わり、日本も新しい元号に変わるという。変わっていくもの、変わらないもの、その両方にある奇跡の瞬間を、今年も「さるフェス」で共に体験し、みんなで新しい一年を迎えようではありませんか。(TEXT:加藤梅造)
どんどん老いて軽くなっていく
河井克夫 この前のクリスマス、午前中に時間が空いたんで教会に行ったんです。そこで聖体拝領をしてきました。
村山章 じゃあ、ウエハースとか食べたんだ。
おオはしさつキ ワインがキリストの血で、ウエハースがキリストの肉なんですよね。
しりあがり寿 あれっておいしいの?
河井 おいしいとかそういうものじゃないですよ。
──そんなわけで今年もいよいよさるフェスの時期になりましたが、今日は恒例の直前座談会をお送りしたいと思います。
村山 去年が10周年だったので、そこで何か区切りをつけようとも思っていたのですが、結局何の区切りもつかないまま、なし崩し的に11年目に突入します(笑)
しりあがり ようするに区切りをつけるのも面倒だってことがわかったんです。
河井 普通の会社なら儲からない事業はやめようってことになるんですが、そうした企業論理もないから、なんだかんだでやめられないんですね。
──いまの世の中にこんなわけのわからないイベントが続いているだけでも素晴らしいと思います。
河井 以前(2013年)フェスのテーマが「不老不死」だった時がありましたが、イベントが続いているということ自体は不死と言えますが、はたして不老と言えるかどうかは微妙な問題ですね。
しりあがり 確実に高齢化の波がきてますからね。今年は河井さんやサイモンガーさんなど50歳を迎える人が多いんです。
河井 いろいろな場面で老いを感じるこの頃です。
しりあがり 次回からさるフェスは50歳の人達に任せるっていうのはどう?
村山 それだといつもと同じメンバーですよ!
河井 次の世代というと、誰かいるのかな。
しりあがり 今の若い人達はバンドとかやらないでしょ? 一人でモショモショやる方が多い?
──確かに一人で全部やるミュージシャンは増えましたね。
しりあがり せーので演奏するのとかバカみたいなのかな。ドラムがカウント取ったりするのとか。
おオはし 当初は内容をがらっと変えようって言ってましたよね。結果的にはほとんど変わってませんが。
しりあがり 代わりに出てくれる人もいないし…。
おオはし でも今年は例年になく反響がいいんです。
村山 ギリギリまで決まらなかったんですけど、蓋を開けてみれば豪華なラインナップになりましたね。
河井 だいたい50代ですけどね。
しりあがり 毎年変えよう変えようとはしてるんですが。
村山 もう流れに抗うことをやめたんですか?
しりあがり いや、でも今年はのぐお(註:初代さるフェスメンバー)が出ないんだよ。これってすごい変化じゃない?
河井 出ないことで評価されるのぐお…。
村山 のぐおは沖縄に移住しましたからね。その前は鳥羽ジャングルが四国に移住したし。
しりあがり みんな地方にいってさるフェスを伝導しているんです。
おオはし してるかなあ?
河井 イベントってもともとローカルなものだから、遠くの人はなかなか出づらくなりますね。
しりあがり 老軽(ろうかる)ですね。どんどん老いて軽くなっていく。ウエハースみたいに(笑)
