テンションを上げる音楽
——テンションが落ちた時に、そういう気持ちを払拭するのに聴く音楽って何ですか?
椎名:モチベを上げるための音楽ですか。
卓偉:テンション下がんないでしょ?
椎名:やかましいな! 下がるわ。
一同:(笑)
椎名:大体低いよ、テンション。卓偉と会ってる時とかは、別に無理してなくてテンションが上がるのよ。それはやっぱり仲がいい奴といれば上がるのよ。
卓偉:僕もそうです。
椎名:だけどつまんない奴といる時にテンションが上がるわけがないじゃん。
卓偉:確かにそうですね。歳を取ってくると、合わない人とは一緒にいられないですね。時間も空気も苦しいですね。
椎名:時間がもったいないでしょ。ただ今の質問はそういう時のことではないと思うんですけど。例えば元気がない時とかですよね?
——あっ、はい。
椎名:俺はちょっとマニアックなんですけど、ゲームの音楽とかを聴くとテンションが上がりますね。昔遊んでたゲームのピコピコしたファミコンのPSG音源とかFM音源って言われてるもので、昔自分がそれで曲を作ってたので、その音とかを聴くと、「懐かしいな〜」ってテンションが上がりますね。元々僕の原点なので。これ聴くと上がるんだよねって、はっきりと言えるものってある?
卓偉:車を運転してたりして、たまたまラジオをつけて、自分の好きな洋楽がかかって、「今日はいいな」って思うことはありますよ。
椎名:それは素敵だよね。車を運転してて、ラジオをつけて、自分の好きな洋楽がかかる…。まず免許を持ってないし、車を持ってないから、それがまずは起きないわけですよ。
一同:(笑)
卓偉:もう自虐(笑)。
椎名:自虐じゃないよ、別に(笑)。
卓偉:初めて会った時に、何ならポルシェとか乗り回してるのかなって思ったら、マネージャーさんが、「免許を持ってないですよ」って。
椎名:そうそう、タイミングを逃しちゃって(笑)。
ターニングポイント
——音楽人生が長いお2人ですが、あのことが長く続けることへのターニングポイントだったなって思う出来事はありますか?
椎名:俺ははっきりと、ターニングポイントはSURFACEの解散なんで。ここが一番の分岐点なんで。その前のレーベル移籍っていうのもあって、そこは1つの軽い分岐点ではあるけど、SURFACEっていうのは変わらないんで。やっぱりSURFACEから肩書きが変わってソロになって個人名になる。中島卓偉と同じ、椎名慶治っていう個人名で勝負しなきゃいけない時っていうのは、どうなるんだろうっていうのがありましたね。SURFACEが2010年に解散して、その年にすぐソロ作品を出すって決めて。会社から、「止まっちゃ駄目だ。止まっちゃうとその後に動けなくなるから。すごく申し訳ない言い方をすると、解散を武器にしなさい」って言われて。そこがやっぱりターニングポイントでしたよね。
卓偉:僕も同じようにレコード会社が変わったり、事務所が変わったりっていうのがあるんで、どこがっていうことで言うと、いっぱいあるんですけど。
椎名:『TAKUI』から『中島卓偉』に名前が変わった時じゃないの?
卓偉:ファンが思っているより、自分はそうでもないんですよ。それよりも『TAKUI』って名義でデビューして、作詞・作曲のクレジットは『中島卓偉』でやると自分で決めて、デビューして3ヶ月後くらいで森重樹一さんにお会いすることが出来たんですよ。それもラジオだったんですけど、「出てくれるんだ!」って。自分が好きだと言ったら、「そんなに早く会えるのか!」みたいな、申し訳ないなって思ってたら。
椎名:でも怖くなかった?
卓偉:怖かったですよ。当時、森重さんが38歳くらいで自分が20歳で。その時に言われたのが、森重さんが紙資料を見て、クレジットには『中島卓偉』ってなっていて、「この名前は誰が付けたの? 字画も全てめちゃくちゃいいね」って言われて、「どうしてこっちでデビューしなかったの?」って言われたんですよ。
椎名:えっ、マジで!! 森重さんに!
卓偉:そうそう。「今はこれ(『TAKUI』)だと君は思ってると思う。TAKUIていうのが表立った活動をしている人で、曲をコンポーザーするのが中島卓偉っていうような、いい意味でセパレートする気持ちも分かるし、それを使い分ける時もあると思うけど、それはいつか一致させなきゃいけない日が絶対来るから。それはTAKUI寄りじゃなくて、中島卓偉寄りのはずじゃないか」と。「漢字で格好いい人って絶対にいるんだよ」って話が出たんですよ。
椎名:お前がそれに入ってるってことでしょ。
卓偉:はい。画数とかでもなくて、例えば『矢沢永吉』とか『椎名慶治』とか、そういうものでいうと、どうでもいい漢字の名前のアーティストはいっぱいいるけど、漢字で訴えかけるものがものすごい強いからって。
椎名:確かに『中島卓偉』って漢字書きはめちゃくちゃ格好いいからね。
卓偉:有難うございます。森重さんもそういう風に言ってくれて。やっぱり『森重樹一』って名前もワンワードとして格好いいじゃないですか。
椎名:めちゃくちゃ格好いいよね。俺もリスペクトしているボーカリストだから。でもさ、デビュー3ヶ月でそれを言われて戸惑わない? 俺は満を持して『TAKUI』でデビューしたのに、3ヶ月でそれを覆すようなことを言われて、新人の中島卓偉は「えっ!!」ってなるじゃん。
卓偉:それこそターニングポイントかもしれないですね。それがずっと残ってて。デビュー前にバンドをやってた時は、普通に中島卓偉だったわけですよね。それがソロでバンドっぽくやるからってことで、そういう名義を当時はいろいろと考えてそうなったはずだったんですけど、最後に「男として」って言われて。「いつか『中島卓偉』になりたい時が来るから、そのタイミングは自分で」…。
椎名:それが何年後?
卓偉:5年後とかですね。
椎名:一応、『TAKUI』のまま頑張るんだね。俺も同じようなことがあった。俺はICEっていう2人組のアーティストがいて、ICEがすごく好きだったんですよ。で、ICEに会いたいと言って、ラジオのゲストに来てもらったんだよね。デビューして間もない頃で、その時に宮内さんが俺たちに残した言葉が、「いろんなことがあるけど、腐らずに何があっても続けることだよ」って。今でも忘れない言葉で、ずっと肝に命じてたね。
卓偉:自分がペーペーで、デビューしたての頃に言われた先輩からの言葉ってめちゃめちゃ入るじゃないですか。それはやっぱりいい意味でインパクトがあって。それで『中島卓偉』になった時に、いろいろ理由が分からないからやっぱりファンは「何で変わるんだ」みたいな大批判もあったんですけど、森重さんに報告したら、「絶対に間違いないから。今、土台が出来たってことだから、土はもう出来てるんだから、種を植えるなり水を撒くなりする時期が今から来たってことだと思って、頑張んなよ」って言ってくれて。
椎名:いちいち言葉が格好いいね。
卓偉:格好いいんですよ。やっぱり続けてる人じゃないですか。
椎名:デビューして3ヶ月で会って、いい助言をもらって、数年後に対バンするところまで行くわけじゃないですか。大先輩とね。それは素晴らしいよね。向こうも忘れてないわけじゃん。
卓偉:本当に嬉しかったですね。
椎名:いい話。ムカつく!
一同:(笑)