バンドのすべてが凝縮された「パトス」
──アルバムの中身のほうなんですけど。1曲目の「パトス」…最初からハイライトですね。
森川:うん。「パトス」はそもそもバンドの成り立ちにある“血と雫”という言葉であったり、“その雫が落ちないことを祈る”そういったモノが詞の中にすべて凝縮されてるんで。
──入魂・必殺のギター・ソロが…。
山際:そんな力は入ってないですけど(笑)。
森川:山際さん、ギター・ソロ、レコーディングの時はほぼ一発ですからね。
山際:ギター・ソロは一発です。何回もやるとね、新鮮味が薄まるような…。
──“パトス”っていうのは、一般には感情とか情熱と訳される…。
森川:ロゴス、パトス、エートスっていう言葉があって、まぁちょっと哲学的なんですけど。その単語を各々で引いて、調べてもらえたら「なるほど」って…僕が言うよりも、各自が理解してくれるんじゃないかと。
──ギター・ソロの途中からオルガンも入ってきますけど。アレは誰がやってるんですか?
森川:僕が弾いてる。
──アレがまたカッコいいですねぇ。
森川:ありがとうございます。オルガン・ソロは3テイクぐらい弾いたと思う。
──この曲、8分半ありますよね。
森川:1stテイクは10分ぐらいあったんですけど、最終的に収録したテイクはみんなの熱がすごい上がってるぶん、2分ぐらい縮まりましたね。
──1曲目から本当に、掴まれるというか。曲順と録った順は違うんですか?
森川:曲順は考えましたね、けっこう。「パトス」が1曲目っていうのは、最初のコンセプトの時にあったんですけど。その他の曲っていうのは、けっこう悩みましたけどね。
──「世界という女性よ」ですけど。ヘッセですよね?
森川:そうですね。もともとのきっかけは、頭脳警察の「さようなら世界夫人よ」。好きな曲なんですけど。幾郎さんと他愛もない話をしている時に…頭脳警察がやってる詩があるじゃないですか。アレはヘルマン・ヘッセのオリジナルの詩を翻訳者が訳してるんですけど、幾郎さんが「他の翻訳者にも面白い詩がある」的なことを言ってきたんです。「じゃあそれでアレンジして曲を作りましょうよ」なんて話をしてて。最初は半分冗談みたいな感じだったんです。一応、幾郎さんが翻訳してるんですけど、ほぼ幾郎さんのオリジナルに近いですね。ヘッセのオリジナルを元に、インスパイアで幾郎さんが詩を書いた。その詩に曲を付けて…っていうのが「世界という女性よ」。
──頭脳警察の「さようなら世界夫人よ」が70年代にありながら、なぜ今改めてあの詩に挑むことになったのかと。
森川:血と雫の可能性というか…僕らの楽曲は、如何様にもアレンジできると僕は思っていて。基本的なバンドスタイルの既成概念にある曲を演奏している意識がまるでないっていうのもあるんですけど。アレンジの可能性というのは常に持っていて。だからちょっと面白くアレンジできて、僕らのバージョンとして演奏できる曲を作ってもいいんじゃないかなっていう、純粋な気持ちというか。
──「違った解釈で改めて世に問う!」というワケではなく…。
山際:頭脳警察と対決するって?(笑)
森川:まったくないです。頭脳警察、好きです。
山際:リスペクトしてる。
森川:やっぱり日本語によるロックっていうと、耳に馴染んでるのはむかし自分が聴いてたバンドの曲だっていうのもあると思うんで。
──この曲のイントロに入ってるのが、木村さんのフルート?
森川:そうです。本来は間奏でソロを吹いてもらったんですけど、そのバックトラックが使えなくなってしまったんで、どうにかして活かせないかっていうことで、イントロに。
山際:コラージュ的に使ったんだよね、あのフルート。
森川:そう。で、曲の間奏部分では、本来木村さんが吹いてた部分は、山際さんがキーボード弾いてる。最初、僕が弾いてたんですけど、なんかしっくりこなくて。どうにもこうにも上手くいかなくて。バトンタッチしたらすごいハマったんですよ。さすがだなと思って。