サブスクはアリ? ナシ?
──TA-1さんのお話の中でもちょっと出てきましたが、今年は特にサブスクリプション型の音楽配信サービスが日本でもかなり浸透したように思います。OSAWAさんはレーベル、TA-1さんはDJをされていたりする中でおふたりともレコードやカセットを扱うことが多いと思うのですが、そういった時代やサービスの変化についてはどうお考えですか?
OSAWA:僕も一応使ってます。Spotifyは無料版で、Amazon musicとか使ってますね。今回アメリカにツアーに行って、考えが180度変わったんですよね。今までレーベルをやっている身として思っていたのは、サブスクにのせるとモノが売れないとか、この曲順で聞いて欲しいとかがあるわけで。でも、今回僕らアメリカのレーベルからもリリースをして、向こうはCDを聞く環境がそもそもあまりなくて、まず広めるためにはSpotifyを重要視するんですよね。向こうのレーベルの人に「お前らSpotifyのページないの?」ってまず言われて。で、そこで作ってもらって、広めていって。サンプラーを無料で出したり、まず広めるということが向こうだとすごく重要なんだなと。僕の場合バンドとレーベル両方やってるのもあって複雑な気持ちもあるんですけど、バンドの気持ちを考えると広めたいっていう部分では配信とかサブスクをいっぱいやった方がいいのかなあ…とか。KONCOSはやってるんですか?
TA-1:僕はもう今年Spotifyしか聴いてないくらい(笑)。で、ここ5~10年とかの中で今年が1番音楽聴いてると思う。Spotifyがとても良くて、僕はお金払って使ってて同時にApple musicも入ったんですけど、1ヶ月使ってみてSpotifyの方が合ってるなと思ってApple musicはやめました。で、Spotifyを聴きまくってます。今の僕の生活でCDで新譜をチェックしたり、一回一回ダウンロードしてiTunesに入れて音楽を聴く時間が限られてきていて。音楽はレコードで聴かなくちゃダメ!とかは全然思ってなくて、音楽を聴いていられることに意味があると思うから、Spotifyは聴きたい時にすぐ、発売日に0秒で聴けるのがすごいハマってくれて。新しい音楽を常に取り入れられるようになって、すごく毎週が楽しみになりました。こういうことをうまく使っていかないと全ては回っていかないなと思って。でも僕はフィジカルはずっと作り続けたいと思っていて、フィジカルを作る人はもっとモノとしての価値は何なのかということを考えて出すべきだなと思ったし、アナログもCDも作りたければ作ったほうがいいけど、多分音楽はもうこっち(配信)になってCDプレイヤーはほとんど使わなくなると思う。変化するものはどんどん利用していった方がいいのかなっていうのは今年はすごく思った。それは自分が使ってみたっていうのも大きくて。去年くらいまでは僕も、よくわかんないしなぁ、みたいな風に思ってたんですけど、自分の好きな音楽がレコードやCDで出なくなって気づいたんですよね。最近のレコード屋の面出しは、再発や企画物が多いし、僕は新譜のシングルで今を知りたいんです。新しい音楽に出会えるライブはすごく大事だと思うからライブもよく見に行くけど、世界の最新の音楽はライブでは見れない。って思ってたらこんなところにこんなに簡単に聴けるツールが! って気づきました。僕が中学生の時ヒップホップに出会って毎日聴いていてワクワクしていた感じが蘇ってくるような感覚でしたね。
大配信時代に「モノ」をつくるということ
──配信中心になっていくことには抗わないという考えをお持ちの反面、レコードやカセットテープでのリリースも多いKONCOSですが、やはり両方やることが大事だと思いますか?
TA-1:やっぱり僕らのことを見に来てくれる、例えば100人とか200人のお客さんには手渡しできるものを手渡しして、それ以外の人に広める時に、CDを売るよりもSpotifyとかを使ったほうが広くと広まるから、配信とモノとだと目的とかターゲットが違うかもしれないですね。みんなそういう風になっていくんじゃないかなと思って。ライブの物販でCDを買ったり、きちんとセレクトされたレコ屋でCDを買うことはあるかもしれないけど、
量販店でのCDの立ち位置は微妙になっていく気がする。
OSAWA:あとはモノを作るっていうことで、1つ歴史的なモノとして残すためのモノでもあるよね、たぶん。
TA-1:そうそう、だから意志があって作るんだったらいいけど、ただただリリースしましたっていうCDはなくなっていくんじゃないかな。テーマがあって作った物はモノとしての価値があると思うけど。レコードもカセットも。だから逆にこれからはインディーズのレーベルとかの方が強いと思う。OSAWAくんとかがやってて、こういうバンドを出しましたっていうOSAWAくんの意志が見えるとお客さんも買いたくなるけど、例えばメジャーのレーベルでただ「最新シングルリリース」とかだと、もうモノは買わないよね。
──OSAWAさんもレーベルでこういう時代になってもやっぱりモノをリリースするということは続けていきたいですか?
OSAWA:僕もともとディスクユニオンで働いていて、やめてからは特にそう思う気持ちが強くなっていて、音を出すというより1枚の作品をその時代に遺すみたいな感覚で今ずっとやっているので。さっきTA-1くんも言ってたんですけどモノの方は音だけじゃなくて、もっとブックレットを豪華…というかその1作を買えばバンドのすべてがわかるような、例えばインタビューとかも全部載っててもいいと思うし。
TA-1:それ本当にずっと言ってるもんね(笑)。そういうものが残るんだろうなあと思う。
OSAWA:例えば2018年の11月にどんなバンドが出て、どういう考えをしてたのかみたいな、歴史的参考文献的なものをずっと出し続けるのが、誰にも頼まれてないですけど自分の役目だと思ってやってるので、これが例えば20年後のパンク好きに掘られて、いいレーベルだな、この時代のこのシーン何があったの!? みたいにアツくなってくれる人がいたらすごく嬉しい。