90sエモサウンドを軸にフォーク/オルタナ/カントリーなど様々なジャンルを消化したグッドヴァイブスで音楽を鳴らすCBMDと、いい大人が異常に盛り上がるパッションに満ちたライブと確かな音楽愛・カルチャー愛と共に日本中を旅するバンドKONCOS。
長きに渡るその交友関係からすると、このタイミングでのリリースは意外とも思えるスプリット7inchが、両者がホームグラウンドとする下北沢SHELTERでの企画『POOL SIDE』からリリース。今、確かにおもしろいことを繰り広げている場所から発信されるこの1枚について、企画者である川本も交えて両バンドのメンバーに話を聞いた。[interview:4x5chin(KYO-TEKI)]
一緒にツアー行きましょう!
ー今回この2組でリリースすることになった経緯から聞きたいんですが。
高本:去年の夏の終わりにSHELTERでやったSUMMER DUDESツアーファイナルの打ち上げですね。気づいたら別の席でTA-1が飲み始めていて、「あれ? なんでいるんだろ?」と思ってたら、だんだん近づいてきて突然、「一緒にツアー行きましょう!」って言ってきた(笑)。川本くんもその場にいたしね。KONCOSとはたまに会うたびに、「最近どうなの?」っていう話はしてたと思うんだけど、今回はそれがその場で温まったというか。
ー『POOL SIDE』はこれまでリリースはしていないじゃないですか。この2バンドだから出してみようという気持ちになったとか?
川本:そうですね。カムバックとKONCOSの2マンは絶対自分がやりたいと思っていました。ツアーが決まってからスプリットの話も出てきた気がしますね。
(ここでライブ続きで多忙→寝坊のTA-1到着で一同爆笑)
TA-1:(声にならない声とパンパンの顔で)お疲れ様です! すいません! 遅刻しました!
高本:待ってたよ! 話し始めると結局、TA-1がいないとわかんない話ばっかりなのよ(笑)。
TA-1:昼から飲み続けていて…。こうなってしまいました…。だから止めてたんすよ…。すいません…ビールください…。
高本:これを見ると酒って怖いなと思うね(笑)。
TA-1:酒はこわいです。(と言いつつ注文したビールを注ぎながら)酒は炭酸水…。
よっぽどのことがないとバンドで一緒にスプリットなんてやらない。各々のスプリットの思い出
ー話を戻しますね(笑)。カムバックとKONCOSが今のタイミングでやるっていうのがすごくいいなと思います。
寛:ほんと久々に一緒にやりますよね? やってもおかしくない状況だったのに。だから素直に嬉しいですね。
ーKONCOSはもちろん、riddim saunterの時からの仲ですもんね。
高本:KONCOSは今を生きているというか死に急いでいるというか(笑)。KONCOSって衝動のバンドであり、こうだよねっていう定義がなかなかないバンド。今、彼らがどういう遊び方をしているのか知りたくて、おれらも混ぜてよみたいなとこはあるかもしれないですね。ぼくらは初老の遊び方をしていると思っているんで(笑)。ぼくらじゃ見られないものを彼らは見てきているはず。だからそういう視点で、また一緒にやったらおもしろいんじゃないかなと。
TA-1:バンドが2マンをやること自体は普通にある話だと思うんだけど、バンドはそれぞれ動いているからこそ、きっかけがなければただのバンド同士の関係だけで、またこんな形で一緒にやることもなかったかもしれない。ツアーからスプリットまで現実になったのは、やっぱり川本くんの企画が常に動いているからこそ。『POOL SIDE』は世代を問わずずっとおもしろいバンドのブッキングが続いているから、その延長線上でこの2組が一緒にやれるのは嬉しいです。
ー今回の作品のアイデアはどこからきたんですか?
CHUN2:KONCOSの動きには個人的にパンクのイメージがあって、ぼくらも今もパンクは好きなんですけど、昔好きだったのがSCREECHING WEASELとBORN AGAINSTがLOOKOUTから出しているポップパンクとハードコアの、ある意味対極みたいな組み合わせのスプリット。そんな印象で今の1枚があったらいいなーって話を川本君とした覚えはありますね。
ースプリットに関して思い入れのある作品はありますか?
高本:キャス・マックムースと、40歳くらい離れた伝説的なSSWのマイケル・ハーレイが出したスプリットはすごくかっこよかった。そういう風に若い人と関われるのもそうだし、内容もすごくよくて、自分たちもこういうことができたらなって思いますね。
TA-1:へぇー。なかなか出てこないなぁ。日本のバンドだとBACK DROP BOMBとECHO、キャプヘジとREACHとか、そういうイメージはありますね。
寛:僕もそれくらいですかね。あんまり思いつかないもんですね。
CHUN2:Snuffy Smileの7inchスプリットシリーズとかもあるよね。
TA-1:考えてみたら自分はスプリットを逆に作ってる側ですね。リディムの時はour favorite fab、最近では帯広のtoiletと。かっこいいバンドがいたら一緒にやりたいから、何かを参考にするっていうのはあまりなくて、自分たち主体でやるっていう思いはありますね。
高本:やばいね、天然90sだね!
CHUN2:もしかしたらスプリットって小さなシーンをおもしろく提示できるものなのかもしれないね。
高本:うん。それこそおれたち世代が聴いていた音楽はスプリット始まりで知ったものもけっこう多いよね。エモとエモの名スプリットとかたくさんあったし。Jimmy Eat Worldもそうだったよね?
CHUN2:JEJUNEとかmineralもそうだね。結局それがリテイクされて後にメジャー盤になって発売されるんだけど7inchのテイクはそれでしか聴けないっていう。またそれがかっこいいんだよね~。
高本:スプリットを聴いて両方のバンドを好きになることも多かったし、ネットもない時代だったからそれでバンド同士の繋がりを知って、さらにサンクス欄を読み込んで・・・掘ることに関しての最重要アイテムだったのかも。
TA-1:バンドとして並べてOKじゃないと成り立たないですもんね。そう考えるとスプリットっていいものですね。
高本:うん、そう思う。そして、そんなに思い入れないままTA-1はスプリットを出し続けてるのもある意味おもしろいなぁ。きっとなんかおかしなアンテナが立っているんだろうね(笑)。
ー曲についての話に戻しますか(笑)。お互いカバーした楽曲はどうやって決まったんですか?
TA-1:もちろんいろいろと好きな曲はあるんですけど、自分の中でもお客さんの中でも一番欲しくて聴きたいのは100%な名曲で、カムバックのライブにも欠かせない「Bored Rigid」だなって。それを自分たちなりに難しくしないでやるってことを目指しました。
ー演奏面ではどうでしたか?
寛:コードの呼吸の仕方が全然違うので新鮮でしたね。歌っててもめちゃくちゃ大変。あれ? つらいな! って(笑)。
TA-1:ギターで作ってるか鍵盤で作ってるかっていうのも違いだし、一音一音の長さが違うんだよね。曲作りにおいての発見でした。
高本:ぼくらは(KONCOS2人時代の音源ピアノフォルテから)「KO・NA・YU・KI BOY」をカバーしました。単純に良い曲だなって思ったのもあるし、最近はライブでやってないらしいじゃん? これを機にまたやったらいいんじゃないかなって思って選びました。すごくオーセンティックな曲だったし、(カメラマンの)ヤマテツに聞いても初期の名曲だって言ってたから、じゃあいいじゃんって。
TA-1:なんでこの曲なんだろ? っていう驚きはありましたけど、寛と2人のKONCOSの最初期の曲なので嬉しかったです。カバー曲を聴いて、カジヒデキさんも、「イギリスのバンドのクリスマスソングみたいですごくいいですね」って言ってくれてました。2拍3連のドラムのリズムも良かったですね。
高本:嬉しいなぁ。僕は結構がさついた声でバーンって歌うから、寛みたいにファンシーな感じに歌えない。
寛:え、ファンシーですか(笑)?
一同:(笑)。
高本:うん。ファンシーというか毒々しくないサイケデリックな感じが魅力だと思う。なかなか出せないんだよね。
CHUN2:カムバックではKONCOSがもってるようなネオアコ感みたいなものがそこまでないから、いかに土着にするか、泥水をくぐらせるかみたいなところがアレンジの肝でしたね(笑)。
ー泥水に漬けたあと、めちゃめちゃ磨いてる感はありますけどね(笑)。
清志:ほんと素晴らしいメロディーのある曲だなって思いますよね。レコーディングしてて楽しかった。気持ちが入りやすかったですし。
高本:カバーをしてみて気づいたのが、実はKONCOSって圧倒的に歌モノ。リフが無くてリズムと歌のみ! みたいな。それに対してどういうアンサンブルを乗せるかを考えてるバンドなんじゃないかって思いました。ライブを観ていてもそんな感じはしないんだけどね(笑)。だからお客さんもみんな歌ったりするんだろうし、いろんなジャンルの要素を入れたり、その時のモードでアレンジを変えたりできるんだと思います。
ーカムバックもみんなが圧倒的に歌える曲が多いと思いますが。
高本:僕らは歌モノって感じじゃないですよね。…やっぱりたぶんメロディックなんですよ、いろいろと(笑)。ずっと上の世代がいて、「後輩にしてはまぁまぁやるでしょ?」っていうポジションだった。でも今それじゃ絶対だめ。新しくておもしろいものを自分から。
ー最近のカムバックのモードってバンド内でなにかあったりしますか?
高本:そうですね、ぼくらってインディーロック卒業生なんですけど(笑)、今もう1回大学受け直すみたいな気持ちです。
ー以前インタビューで、「いつの時代でも聴かれるような歌も歌いたいし、初めてレコード屋に行った時のワクワクする感覚も持っていたい」ということも言っていましたが。そういうことですかね?
高本:そうですね。結局、自分たちにとっておもしろい音楽、積み重ねてきたものは、なくなったりはしないんですよね。それをゼロにするつもりもないし。ただ新しい音楽は自分から入れないと入ってこない。歳を重ねても新しいものもどんどん聴きたいし、離れた世代では新しいムーブメントが既にあって、その人たちの視点でヤバいものはもう確実に存在してますから。ぼくらは全部はわからないかもしれないけど、少しはかじらせてもらう為に、もう1回受け直そうかなってところです、今。
ーすごくいい話ですね、これ。
高本:それに歌は普遍的なものですからね、良いものはずっと変わらないし。
TA-1:確かに若くてかっこいいバンドもいっぱい出てきてる。
高本:ぼくらとかTA-1の世代はたぶん恵まれてて、先輩におもしろい音楽から情報からなにから教えてもらってた。下を見る余裕も考える時間もなかった時期はあったと思う。
TA-1:そうですよね。まさか下の世代ができるなんて意識する余裕もなく、ずっとがむしゃらに活動してきた。
高本:でも今そのままじゃ絶対にまずい。明らかにかっこいいものや新しくておもしろいことが起こってるから、それは見たいし知りたい。だから斜め後ろのすぐ近くから見てます(笑)。そういうところの感性もKONCOSとは昔から近いかもしれないですね。
TA-1:POOL SIDEやシェルターにはそういう面でも、自分たちのやりたいことは確立していきつつ、おもしろいと思ったものは素直に認めたり取り入れたりできる・しているスタンスのバンドが集まっている気がしますね。世代みたいなことを越えて。
熱い気持ちを掲げてスプリットツアーに行くよりは、おもしろおかしくやれた方がぼくららしいのかなって。
ーそんな思いと音源を携えて元々の目的だった東名阪ツアーに行くわけですけど、楽しみは?
高本:KONCOSをお客さんとして見るのと、一緒にツアーを回って見るのとではやっぱり違うから、今のKONCOSがどういうライブをしてくれるのか楽しみです。あとはやっぱり初老の遊び。8人しか入れない店に8人で行くとか営業時間が2時間しかない店に行く、みたいなことやりたいですね(笑)。
CHUN2:あのー、けっこうぼくらツアーで本気にふざけに行くので怒られたりするんですよ(笑)。
TA-1: やりたいですね! カムバックのこと好きすぎて、昔から機材車乗って福岡までぼくひとりで付いて行ったりしてましたから(笑)。よく考えたらやばいですね。
CHUN2:あの時から変わってないからね。ていうか髪型(前日の朝、深夜のライブを終え、翌日のイベントの集合時に突然ボウズにしてきた)は当時に戻ったね(笑)。
TA-1:初期衝動です。ぼくはゴローさん(元CBMD/MIN-NANO) が大好きで、今回ジャケットのデザインとして関わってくれたのも嬉しい。ぼくも物販を自分でずっと作ってるし、すごく影響を受けていて好きな存在・バンドなんですよ、カムバックって。だからまたここに戻ってきたと言うと違うけど・・・。
ー後ろ向きな意味合いではなくってことですよね。
TA-1:そうそうそう! 歳を重ねたからこその説得力を体現できてこうやって見せれるのは嬉しいことですよね。
高本:今のぼくらは、ぼくらなりにいろいろなことを経てきて、間口はけっこう広いと思うんで、ちょっとでも気になったら軽いノリで観にきてほしい。『POOL SIDE』っていう企画自体がそういう趣旨だと思うし、歳を重ねた人も若い人も、なんかもじもじしてたら是非。
TA-1: 例えば、最近ライブハウスから足が遠のいていた人とか、少しでもきっかけになればいいなと思っています。
川本:ライブハウスの人間からすると、ずっと昔から好きだったカムバックと今働く原動力となってるKONCOSが一緒におもしろいことをやれているのは、夢があるなと思ってます。自分の思い入れを抜きにしても本当に素晴らしい作品とツアーになると思うので!
TA-1:ジャケがあがってきたとき感動したよね! ヤマテツの写真とゴローさんのデザイン、そしてこの2組で並んでいるのを見て、嬉しい、ありがとうございます! って気持ち。
川本:好きな人達だけで作り上げた1枚なのも最高ですよね!!
(2018 April 下北沢にて)