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INTERVIEW

トップインタビュー中込智子 - これぞ大人の余興の醍醐味か? アラ還ならではの明日なき暴走か? LOFTを第二の故郷と呼ぶ現役パンク・ライターが同世代のバンドと繰り広げる酔狂の宴!

これぞ大人の余興の醍醐味か?
アラ還ならではの明日なき暴走か?
LOFTを第二の故郷と呼ぶ現役パンク・ライターが同世代のバンドと繰り広げる酔狂の宴!

2018.08.29

POGOとKENZIは険悪なわけじゃなかった

──KISS MARKは中込さんの人生に多大な影響を与えた面々から成るバンドということですね。

中込:はい。29年前はそんなこと全然思いませんでしたけどね(笑)。でもまぁ、みんな高円寺や阿佐ヶ谷に住んでましたから。KISS MARKのライブをやった時も、20000Vの楽屋がいっぱいなので近所だったシンちゃんの家を楽屋代わりにしたんですよ。みんなシンちゃんの家で着替えて髪もセットして会場入りしたんです。

──中込さんにお借りしたKISS MARKのライブ直前の写真を見ると、シンイチロウさんはなぜかセーラー服を着ていますけど(笑)。

中込:当時はそれが格好いいと思ってたみたいですよ。下北沢の屋根裏がまだロサンゼルス・アンティノックという名前だった時のこけら落としライブをLA-PPISCHがやったんですけど、その時のMAGUMIの衣装もなぜかセーラー服だったんですよね(笑)。

kissmark29.jpg──今回のライブにはLA-PPISCHではないものの、MAGUMIさんもTHE BREATHLESSとして出演していただけますね。

中込:ありがたいです。こうなったら今回もシンちゃんとMAGUMIにはセーラー服を着てほしいですね(笑)。ここまで自分の友達ばかりが集まるライブもそうそうないですし、それなら今は動いていない友達のバンドにも勢いで声をかけちゃえと思ったんです。それがarmy call UP TESTなんですけど、無理やりなお願いなのにやってくれると返事をくれたので嬉しい限りですね。実際問題としてKISS MARKはそんなに曲をやれないと思うので、MAGUMIとUP TESTに力添えをしてもらう感じです。KISS MARKは各自忙しいので練習の時間を取るのも一苦労だし、私はぶっちゃけマネージャーをやってるようなものなんです(笑)。全員に連絡を取って「いつがヒマ?」って訊きまくってますから。いまだにリハもできてないし、Jun Grayは今ごろ引き受けたことを後悔してるんじゃないですかね(笑)。

──UP TESTは、先ほど話に出たLOODSの西村さんが主宰していたR.B.F.(REBEL BEAT FACTORY)RECORDSから7インチと12インチをリリースしていましたね。

中込:UP TESTは8年前にGYMNOPEDIAがSHELTERで復活ライブをやった時にゲストで出たんですが、それ以来ライブをやってなかったので、ぜひ観たかったんですね。私は当時、R.B.F.というよりもLOODSのメンバーやスタッフと仲が良かったんです。今はニューロティカにいるカタルくんも最初は17歳とかで可愛かったです。で、西村くんは当時から良いバンドを見つける慧眼の持ち主でした。POGOも最初の7インチはR.B.F.から出したし、UP TESTと同期のNEWEST MODELもR.B.F.から出してましたからね。当時よくUP TESTとLOODSのライブをLOFTで観ましたよ。

──今回のUP TESTは、ボーカルのGUCCIさんとドラムのヒデローさんというオリジナル・メンバーが揃うライブになるそうですね。

中込:そうなんです。ベースは田中シンジが弾くと聞いています。UP TESTのメンバーも高円寺近辺に住んでいて、今回の出演者は新旧ご近所まわりの面々が圧倒的に多いんですよ。

──出演する側も今や接点が薄れてきて、何らかの口実がなければ集まる機会がないでしょうから、こういうライブをやれて嬉しいんじゃないですかね。

中込:だといいなぁ。みんな今でも仲はいいんですよ。誰かのライブでばったり会うとかありますしね。よく誤解されがちなんですけど、POGOとKENZIは別に険悪なわけじゃないんですよ。初期以降は対バンもほとんどしてないのに、その2バンドでよく高円寺の居酒屋で呑んでましたからね。

──まわりが必要以上に気を使ったりしたせいで険悪に見えたんでしょうか。

中込:じゃないですかね。よく比較されてたし、その2バンド間でメンバーが入れ替わったりしてたし、まわりから見れば仲が悪いんだろうなと思われても仕方ない部分もあったけど、実は仲が良かったんです。良太は今も八田(ケンヂ)くんと連絡を取り合ってるみたいですしね。

 

おふざけをやるなら真剣にやるべき

──話を伺っていると、旧LOFT時代の仲間の結束の強さを実感するようなイベントだといえますよね。

中込:みんなに声をかけて本当に良かったと思いますよ。ただ現実問題として、来るお客さんも出る側もけっこういい歳だし、出る側には優先事項も多々あるし、こうしたライブを実現させるのはなかなか難しいんです。それも「やるよ!」と二つ返事で応えてくれたみんなのおかげですね。特にシンちゃんには感謝しています。私が考えた悪ふざけのアー写撮影にもノリノリで付き合ってくれたので。ちなみに撮影場所は、高円寺のSTEAK HOUSE KYOYAの前なんです。革ジャンや服やアクセサリーをKYOYAさん(ex.THE WILLARD、ex.LAUGHIN' NOSE)と奥さんのりっちゃんに借りて、鎖はBARペリカン時代のマスターが持ってきてくださって、南京錠はTRASHのスタッフをやってたしげみちゃんが貸してくれました。ここでもやっぱり高円寺の友達にいろいろとお世話になってるんですよね。

──どんな方々に今回のライブを観てほしいですか。

中込:当時、小滝橋の旧LOFTにPOGOやKENZI、LA-PPISCHを観に来ていた人たちには観てほしいですね。もちろんUP TESTを観ていた人たちにも。GUCCIにとっていちばん人が入ったライブは、UP TESTじゃなくてROAD CRUISEなんですよ。旧LOFTで尋常じゃない動員を集めてましたからね。GUCCIがその後にやっていたCREEPY CRAWLは、まだKoЯnが出てくる前にKoЯnみたいなラウドロックを日本でやっていた格好いいバンドだったんです。GUCCIはとにかく声がいいんですよ。顔は良太と同じ系統なんですけどね(笑)。

──今回のライブは50代になったからこそできる大人の余興といった感もあるし、いろいろとあるけど歳をとるのも悪くないなと思わせてくれるところがありますよね。

中込:KISS MARKもおふざけといえばおふざけなんでしょうけど、笑えるものほど真剣にやるべきじゃないですか。だからKISS MARKのメンバーにも真剣にやってもらいます! ちょっと話が逸れますけど、むかし上田現が『コリアンドル』という初のソロ・アルバムを作った時、LA-PPISCHの他のメンバーはヒマになるわけですよ。それでどうしたかっていうと、HGZという変名バンドを始めたんです。アルファベット3文字だとハードコア・バンドっぽく聞こえるからと命名したんですけど、実のところ『8時だョ!全員集合』の頭文字を取っただけ(笑)。そのHGZは、MAGUMIと杉本、ベースがスカパラにいた冷牟田(竜之)さん、ドラムがシンちゃんという顔ぶれで、カセットにしか残ってないLA-PPISCHの超初期の曲をレパートリーにするべく、私がわざわざ人数分をダビングして渡したんです。なんでそこまで手の込んだことをやるんだろうと思いつつも、おふざけをやる以上は真剣にやるべきだと当時から考えていたんでしょうね。MAGUMI、HGZの曲もやってくんないかな(笑)。

──実際、KISS MARKはライブ当日にどんな演目を披露するのでしょう?

中込:来てくださる方が何を観たいか、たぶん私と被ってると思うんです。私自身はぶっちゃけ、誰かのことを考えてるというよりも「私はこれが観たい!」という思いでオファーをしてますけど、お客さんの観たいものとあまり外れないと思うんですよ。ただ、同時に危険球が必要だとも思うのですが、まぁシンちゃんがボーカルという時点ですでに危険球なのかな?

──なんでも、良太さんから「××をやれ!」と指令を受けているそうですね。

中込:最初、良太に「KISS MARKをやってくれる?」と連絡したらゲラゲラ笑って「誰がそんなバンドのことを覚えてるんだよ!?」とか言いながらOKしてくれたんですけど、「その代わりシンイチロウとお前で××をやれ!」と交換条件を出してきたんです。で、「はい、やらさせていただきます!」と答えざるを得ませんでした。

──当日は中込さんもステージに立つんですよね?

中込:はい。ひたすら呑んでるだけだと思いますけど。棒立ちしてニコニコしながら。ホントに私、何をやってるんだろう?(笑)

──今回に限らず、中込さんにはこうした企画をぜひコンスタントにやり続けていただきたいですね。

中込:でもぶっちゃけ、声がけしたり調整するのはすっごくめんどくさいんですよ。しかも私の友達は見事にめんどくさい人しかいませんから(笑)。だけどたぶん、私はめんどくさい人が昔から好きだったんだと思います。そんななかで今回こんなブッキングができたんだから上出来ですよ。観るほうも出るほうも同世代でしょうし、ある意味、同世代が一緒になって楽しむ同窓会みたいなものですよね。当時、仕事でつながりのあった人にも会えたらいいなと思うし、言ってみれば強制同窓会ですね(笑)。私自身は実際の同窓会なんて出たことがないし、そもそも同窓会的発想はダサいと思うけど、今回のイベントは結果的にそんなふうになりそうだから今から同窓会みたいだと言っておきます。でもたまにしかやれないことですし、なんせ29年ぶりの暴走なので許してやってください(笑)。

 
(Rooftop2018年9月号)
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LIVE INFOライブ情報

kissmark_flyer.jpg中込智子55才記念29年ぶり2度目の暴走
【出演】
中込智子& THE KISS MARK
[佐藤シンイチロウ(vo)・小河原良太(gt)・春日弘(gt)・Jun Gray(ba)・塚本純(ds)]
MAGUMI AND THE BREATHLESS
army call UP TEST
DJ:ISHIKAWA(DISK UNION / a.k.a TIGER HOLE)
【日程】2018年10月2日(火)
【会場】新宿LOFT
【時間】OPEN 18:00 / START 19:00
【チケット】前売¥3,500 / 当日¥4,000(ともにドリンク代別¥600)
ぴあローソンチケットイープラスLOFT店頭にて発売中
【問い合わせ】LOFT 03-5272-0382

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