シェルターは西新宿時代のロフトと同じ匂いがする
──実際のライブはどうなっちゃうんでしょうね? 同じ躍動感でもAA=は緊張感と緊迫感のあるタイプだし、SMORGASのほうは開放的で伸びやかなグルーヴ感で。どちらもタイプが違いますが...。
来門:ホントどうなっちゃうんだろう? 想像もつかない。フロアもそうだけど、肝心の俺が嬉しすぎてどうなっちゃうんだろう? って(笑)。もしかしたら当日は俺、興奮しすぎて死んじゃうかも(笑)。だけど、言うても2組とも音楽なので、そういった意味ではグルーヴがあれば、お客さんを一つにする自信はあります。ぶっちゃけ申し訳ないけど、お客さんのことはあまり考えてなくて。俺たちが大好きなAA=に対して、どんなことができるか? なんですよね。もう全力で当たっていきます。
上田:対バン・ライブって基本、自分の好きなものを自分の好きな人に伝えたり、教えたりする場でもあるから。自分の音楽が好きな人だったら、その人が信頼したり、好きなアーティストは一緒になって好きになってくれるもんだろうと勝手に思ってる。なので、初共演に関して全く心配してないかな。
来門:もう、一番は自分たちが何をやりたいかだけなんで。自分たちが何をやりたいかを明確にしたり、意志としてキチンと発信すれば、それを信頼してみんなついてきてくれるでしょうし。理解してくれて混ざってくれるでしょうからね。
上田:とにかく楽しそうな笑顔でフロアをグチャグチャにしたいよね。
来門:AA=がいいライブを演りすぎて、お客さんが俺らを観る前に力尽きて、みんな俺らを観ないで帰っちゃうとショックですけどね。剛士さん、お客さんの体力、俺らの分まで残しておいてくださいよ。
上田:そんなの関係ないよ(笑)。もう俺らの段階でお客さんの体力をすべて絞り尽くす覚悟でやるから。それが対バン・ライブだし、先行で出る側の特権だから(笑)。
来門:そこが2マン・ライブの面白いところですもんね。「一緒には出てるけど、俺たちは決して、あいつらの前座じゃねぇから!!」って。
──柳沢さん的にはこの2バンドでどんな光景をシェルターで望みますか?
柳沢:大好きな2バンドなので、カッコいいイベントになるのは確実でしょう。絶対に楽しいことになるのは確信しています。
上田:8月のシェルターでこの2バンドの共演だから。こりゃかなり汗だくのドロドロになるだろうね。
来門:暑くて汗で床がドロドロになるかも。
上田:もう、みんなでドゥルドゥル(ドロドロ)になるしかない。
来門:剛士さんがシェルターで演るのは?
上田:3年ぶりぐらいかな。やっぱりどこか特別感があるよね。ロフトも同じなんだけど。
上田:やっぱり俺ら世代になると、ロフトと言えば今の歌舞伎町じゃなく、以前あった西新宿がパッと浮かぶんだけど。あそこは聖地だし、特別な場所だったよね。あれと同じ匂いがシェルターはするからね。逆に俺らの下の世代だと、あの西新宿だった頃のロフトと同じぐらいの聖地感があるんじゃない? 今のシェルターには。
──その3年ほど前にシェルターで演った際はいかがでした?
上田:とにかく暑かった。ただでさえ暑いんだけど、プラスしてあの日は空調が故障して冷房が利かなかったんだよね。もうみんな凄い汗だくで。
──出音もミッドとローがしっかり出るし、硬質な音も出るんで、AA=とは相性の良いイメージがあります。
上田:そうなんだよね。俺らの持つ攻撃性もキチンと表現できるハコかなって。そういった意味では俺たちの音楽性やサウンドとの相性は良かった。ただ、ちょっとうちらは機材も多かったりするので、最初はあのステージの広さに乗るのか? との懸念もあったけど。なんとかできて。
来門:先日もROSの際にDROPで一緒にやった時も機材の量が凄かったですもん。「AA=さんが到着しました」って機材を入れたら会場の半分が機材で埋まってた。
上田:あれでも全然少なくしたほうだよ。
──では、ステージの大きさによって持っていく機材も変えたり?
上田:変えてますね。アンプの大きさから変えるし。ステージの大きさに左右されないようなシステムを構築していて。ステージの大きさに合わせてパターンをいくつか組んでるんです。「これはAパターンだな」「これはBパターンだな」って。どのパターンでも音のクオリティは一緒なように。そこを同じに保てて常にやるべく、ずっと試行錯誤してきましたから。
──逆に来門さんにとってのシェルターは、もうホームグラウンドなのでは?
来門:そうなんです!! 最近、ステージのモニターも変わって、いい音で返ってくるようになり、ますますやりやすくなりました。もう、シェルターは想い出がありすぎて覚えてないです。大好き!
──とおっしゃってますが、当日のハコでもあるシェルター側はいかがですか?
柳沢:うちはスタッフの子で両アーティスト好きな子たちがいるので、その子たちも凄くこの2マンは楽しみにしているんです。そういったスタッフが喜んでくれるイベントって、自分の中でもいいイベントだなと思っていて。もちろん音楽もそうなんですが、そのようにスタッフも喜んで、ライブハウスの人たちが盛り上がっていけば、そのぶん仕事へのモチベーションも上がり、より良いステージ作りができたりしますからね。そんなスパイラルも楽しみにしているんです。
ライブハウスには精霊がいる!?
──そう言えば上田さんは、先日のAA=ツアーでロフトでも演られてたじゃないですか。今度はロフトへの思い入れを聞かせてください。
上田:ロフトは移転しても、やはり変わらないところは変わらないですよね。ステージのあの2トーンの市松模様、あれを見ると「ああ、ロフトだな...」と感じるし、安心する。もちろん、それを受け継いだシェルターの市松模様を見ても、それは感じるんだけど。自分のロックのイメージするライブハウスってまさしく、あんな感じなんです。僕らがよくお客さんで通っていた頃のライブハウスってピリピリとした緊張感があったじゃないですか。あの空気感や雰囲気を残したライブハウスかなって、特に今のシェルターは。
──アンダーグラウンドさもありますもんね。
上田:「やわなヤツは出れないよ」と、ひとつ敷居がある感じ。バンドマンが出たいと思うカッコいいライブハウスだもんね。それって実はロックでは大事な要素の気がしていて。バンドやアーティストに「あのステージに立ちたい!」って向上心やモチベーションを引き上げるだろうし。実際、いま大きくなっているバンドでも、シェルターに出たかったけど叶わなかったバンドも知ってるし。「あの頃、凄く出たかったんだけど、出してもらえなかったんだよ...」なんて話を聞いたこともある。でも、それって凄く大事な気がするんです。それに対してまた反骨精神が芽生えるし、そいつらはそいつらでまた伸びるでしょうし。
来門:あと、ライブハウスって精霊みたいなのがいるんですよ。その精霊が現れて好かれると、奇跡的なステージになるという。それはロフトにもシェルターにもいて。それが現れたら楽勝ですね。自分たちの実力以上のライブができちゃう。俺も気づいたらスゲぇライブを演っていたなんてことが何度かあって。何をやってもハマって、もう、スーパーマンみたい。まぁ、逆に全く現れなくて、無理矢理自分で自分のスイッチを入れなくちゃならない時もありますけど(笑)。ただ、こいつがかなりイタズラ好きで。たまに足とか引っかけてくるんです。ちゃんと用心しとかないと、ある時いいところでイタズラされちゃう。これにも何度か引っかかりました(笑)。
上田:精霊かどうかはわかんないけど、ライブハウスの持ってるパワーは確実にあるよ。時々感じたり、その力を借りる時もあるから。
来門:ステージ上って、誰かが想いを込めるじゃないですか。それが残ってるんでしょうね。
上田:あと、それらが残って、積み重なっているのがライブハウスの歴史だったりするから。で、そこから出てくる新しいバンドたちも、そのステージ上に宿っている熱い想いや歴史、それらと戦って認められなくちゃならないわけで。それの積み重ねで本物が出来上がっていく。「なんでもOK!」「大丈夫、大丈夫!」「みんな楽しい!」「最高!」だけだと生まれないものが絶対にある。
来門:オーディエンスが観たいのは完璧な演奏や歌が上手い、演奏が上手い、それらはもちろん、それを越えた奇跡的なものでしょうからね。その境界線を越えた時に会場全体であり得ない光景が広がる。それが信じられないほど美しかったりするんですよね。
上田:ライブは演者だけのものじゃないから。お客さんも交えて一緒に作り出す空間だから。
来門:要は自身がどれだけ熱くなれるか? で。そのためにもさらに熱くさせてくれる対バンが必要な時もあるし、重要なんですよね。その点、AA=は、ちょっとその域を越えちゃってる存在だけど。あとはオーディエンスとはいい関係でいたい。友でありライバルでもある。もう、アウェーのお客さん大歓迎ですから、うちら。
上田:音楽って結局は生き様じゃん。それをどうカッコ良く魅せられるかで。特にキャリアを積んでると、みんなそこを見るし、求められる。どのような生き方をしてきたのか? どういった考えやイデオロギーを持って活動しているのか? そこに共感しないと、なかなかついてきてくれない時代でもあるから。俺らはそこも魅せる覚悟で挑むよ。ここまでやってきた、その説得力も含めて、"どこを切ってもAA="と感じてもらえるライブを演るから。