"ハードコアガールポップ"バンド、リアル3区が3rdアルバム「だいたいかんちがい」をSHELTER UNITEDからリリース! 政治批判や高齢者の免許自主返還を促す曲など、現代を生きる我々に直接刺さりまくるシビアな問題をも、ポップなサウンドに詰め込んだバラエティパック。5月13日のSHELTERワンマンののちの活動休止が決まっているが、そんな彼女らに現在の心境を思いのままに語ってもらった。(interview:義村智秋・安 佳夏[下北沢SHELTER] )
生き方がハードコア
——まずリアル3区を知らない人に向けて自己紹介をお願いします。
キーコ(Rap,Key):はい! 私たちは、よく「ハードコアガールポップ」って自称してるんですけど、ハードコアな音楽をやっているわけじゃなくて。今回のアルバムもめちゃくちゃポップな仕上がりになってます。
ゆめ(Vo,Sampler):THIS IS JAPANのマネージャーさんに「あの子たちは生き方がハードコアだね!」って言われて。それいいなと思って使ってるんです(笑)。
キーコ:音楽はポップスをやってるんですけど、人柄や行動? 生き様がハードコアらしいです(笑)。
——今回SHELTER UNITED から「だいたいかんちがい」をリリースすることになりましたが、まさかの、その直後に活動休止ということで…理由とか聞いちゃって大丈夫ですか?
キーコ:はい、一番大きな理由は今までずっと一緒にやっていたサウンドプロデューサー(Yutaka Kaburaki)がバンドを離れることになったからなんです。リアル3区は、詞と曲はメンバーが書いてるんですけど、アレンジに関してはそのプロデューサーがメンバー同様にがっつり入って作ってくれてて。だからこの先バンドを続けていくとしても彼がいないと音楽性はだいぶ変わるだろうし、新しいリアル3区のサウンドを固めるには時間もかかるし。なので、このタイミングで今まで作ってきた曲を一旦全部まとめてアルバムとしてリリースして、ひと区切り付けようということですね。
——なるほど。「一旦」「ひと区切り」とおっしゃっていますが、環境が整えばもう1度やる予定はあるんですか?
キーコ:予定はないですけど、環境が整うなんていう素晴らしいことが起きたら絶対やりたいと思ってます。解散じゃなくて活動休止って言ってるのはそういう意味なので。もしメンバーの仲が悪いとかだったら解散したほうがいいと思うけど。
亀(G,Vo):うちらのいいところなんて仲がいい以外ないもんね(笑)。
リーダーがシフト制
——活動休止して、リアル3区の3人としてではなく、それぞれ生きていくわけですが。生きていくっていうと大袈裟かもしれませんが…
キーコ:逆に「活動」っていう言葉よりは「生きていく」のほうがピンときますね。、活動休止しても私たち自身は全然変わらないと思う。
ゆめ:もともとリアル3区やってるから他のバンドをやっちゃダメっていう縛りはなかったから、亀ちゃんとか結構忙しいよね。
亀:リアル3区をやめたから何か始めるっていうのはないけどね。
ゆめ:誰がリーダーとかっていうのもなかったしね。
キーコ:本当はゆめにリーダーとしてガンガン引っ張ってやっていってほしかったんですけど、この人お酒飲まないとすごくシャイで人見知りなんで…。
ゆめ:リアル3区のリーダーは時間帯で替わるシフト制なんですよ(笑)。お酒を飲んでない昼間のメールとか事務作業は私がやってるけど、でもシラフでいられるのが19時くらいまでだから。
亀:19時過ぎてお酒を飲みだすと…。
ゆめ:クズになる(笑)。
キーコ:ゆめが飲み始めて酔っ払ったあとは私がリーダーです。
亀:外交的なことを結構キーコがやってるよね。飲んでてもちゃんと仕事モードにいける。
ゆめ:私は飲んでると全員にタメ口になるので…。
キーコ:SHELTERのステージから「義村! ウーロンハイ! 」って言った時はマジでやばいと思った。
一同:(笑)。
——じゃあ飲みの時間帯のリーダーがキーコさんなんですね(笑)。
キーコ:帰ったらもうぐったりですよ…。
ゆめ:で、2人がつぶれて寝た後は亀ちゃんが。
キーコ:なんか亀ちゃんは朝が早いんですよ。だから午前中の作業とかメールチェックとかをしてもらって、昼過ぎにゆめがムクッと起きる。私たちそういうバランスはいいんですよね。
——活動休止した後はそれぞれ新たな活動の予定はあるんですか?
亀:私は何も変わらずですね。今やってる他のバンドで引き続き音楽活動していきます。
キーコ:私は具体的には決めてないんですけど、やるならリアル3区とは全然違うこと…弾き語りとかやるのかもしれない(笑)。
ゆめ:私はもともと曲を作りたい人ってわけじゃないので制作はしないと思うんですけど、歌は歌っていきたいです。人の書いた曲を歌うのがすごい好きで。そういう依頼があれば積極的にやりたいですね。リアル3区の中でもキーコの書いた曲のほうがキーが合う。自分で書くとなぜかキーが高くなっちゃって…。
キーコ:「誰だよこんな曲書いたやつ!」ってめっちゃキレてるときあるよね…。今回の「だいたいかんちがい」では9曲中7曲をゆめが作曲してるんですけど、後の2曲、「SOUP」と「あそぼーよ」っていう曲は私が書いてて。特に「SOUP」のほうは私がずっと聴いてきた音楽からインスピレーションを得て、それをゆめに歌ってほしいっていう気持ちで書きました。そしたらめちゃくちゃいい仕上がりになって満足してます。「あそぼーよ」のほうは、リアル3区が始まるときに作った曲なんですよ。いつものように飲んでるときにバンドやろう!って話が出て、でもなんか曲がないと飲みの話だけで終わっちゃうって思って、初めてリアル3区のために作って、ゆめに聴いてもらったすごく思い出のある曲なんです。
ゆめ:今回の8曲目の「パーティナイト」も「あそぼーよ」の次くらいにできた初期の頃の曲。「だいたいかんちがい」を出すにあたっては、古い曲もレコーディングし直したんですけど、「パーティナイト」だけは今歌ったらあんまりしっくり来なくって、当時レコーディングしたボーカルを使ってるんです。
キーコ:それもまた面白いよね。今回のアルバムはそういう感じの、いろんな粒を集めたような。
ゆめ:パーティーバーレル。
キーコ:ケンタッキー…?
亀:バラエティパックっぽいアルバムになってます(笑)。
歌詞はダブルミーニング
キーコ:あと、4曲目の「ロンリープラネットバスター」はR&Bっぽいというか、これまでになかった感じの曲で、この曲をきっかけにみんなのパフォーマンスとかステージでの気持ちの込め方とかが変わった、私にとってはすごい大事な曲なんです。作詞作曲ゆめですけど(笑)。
亀:あ、でも私もこの曲で今まで一度もやったことないギターの弾き方しましたね。空間を大事にするような。
ゆめ:ボーカル録りも縦(リズム)をきっちり合わせるよりも、大きく歌うように心がけて。これ歌詞をよく読むと政治批判になってるんですよ。「『誰だっていいよ』なんて 本気じゃないの知って」は、選挙の時の話。「つまらないくだらない世界ガンガン蹴っ飛ばして」って歌うのは、でもどこかで選挙のたびにいい世界に変わるんじゃないかっていう期待があるから。でもさらっと聴いた人には、普通にラブソングに聞こえればいいなって思ってます。
亀:ダブルミーニング的な感じで。
キーコ:受け取る側が歌詞の意味を広げてくれるのがいい。
ゆめ:それで言うと「WARNING」っていう曲は、あの、最近後期高齢者の自動車事故多いじゃないですか。
一同:(笑)。
ゆめ:これ実は、後期高齢者の運転免許の自主返還を促す曲(笑)。そう思いながら歌詞読むと面白いと思います。「一度は認められた このスキル枯れるなんて 戻せば楽になる」とか。しかも疾走感ある感じで歌ってるんで(笑)。