ダイアモンド☆ユカイは源頼朝の末裔だった!?
──『TAMAMONO』というアルバム・タイトルにはどんな意味を込めたんですか。
木村:二つ意味があって、神様からの授かりものという意味と、努力の賜物という意味があるんです。その二つを兼ねてるのもいいし、語呂も良かったので。
──木村さんはTシャツやパーカーのイラストも手がけているそうですが、今回のアルバム・ジャケットにも携わっているんですか。
木村:いえ、前作の『フルレンジ』も手がけていただいたアート・ディレクターの内山尚志さん、カメラマンの鳥居洋介さんに今回もお願いしました。
──サウンド同様にアートワークもかなり奇天烈ですよね(笑)。
宮腰:『TAMAMONO』というタイトルだけお伝えしていたんですけど、内山さんのイメージではこれが『TAMAMONO』みたいで(笑)。中心にある心臓のようなオブジェは赤いペンキで塗られてあるんです。
竹内:内山さんの手が真っ赤になってました(笑)。
木村:赤べこみたいに縁起が良さそうでいいんじゃないかと思って。
──ところで、あのダイアモンド☆ユカイさんが「最近はかわいくてしかもテクニックのあるバンドがいて驚いた」と指先ノハクを絶賛しているという話を聞いたんですけど。
竹内:私の地元の長野県中野市で去年の秋に『信州なかの音楽祭』というイベントが行なわれて、そこでバンド・コンテストの決勝戦があったんです。私たちはゲスト・バンドとして呼ばれて、ダイアモンド☆ユカイさんが特別審査員で。そのときに「今度は一緒にライブをやろう!」と言ってくださったんです。
木村:私、「尼将軍の恋」ができた後にダイアモンド☆ユカイさんのことを調べてみたんですけど、噂によると源頼朝の末裔らしいんですよ。
──話がつながった!(笑)
木村:菩提寺だったお寺が保管していた家系図をたどったら、その可能性があるんですって。Wikipediaの情報ですけど(笑)。
竹内:これはもう連絡取るしかないよね(笑)。
──レコ発のツアー・ファイナルのシェルターにダイアモンド☆ユカイさんをゲストで呼ぶべきですね(笑)。そのレコ発ツアーは今回の新曲がたっぷり聴けそうで楽しみです。
清水:『TAMAMONO』の曲をメインに、いままでの曲もちょこちょこ交えつつやりたいと思ってます。
──指先ノハクの過去の作品を振り返ると、いい意味で一貫性がないですよね。その都度で自分たちのやりたいことを追求するというか、変わり続けることが変わらない部分というか。
木村:進化している気持ちで突き進んでいる感はありますね。ファースト・ミニ・アルバムの『肴〜SAKANA〜』もそのときの自分たちのいちばんだと思ってつくったんですけど、今回の『TAMAMONO』の次の作品もたぶんまた違ったものになると思うんです。でもちゃんと指先ノハクらしさはあるだろうし、そうしたことを続けていくんだろうなと感じています。
──指先ノハクの特性をあえて言うならどんなところだと思いますか。
清水:ガールズバンドっていうよりかは、それよりもちょっと世代が上の女流バンドというか。もうガールズという歳でもありませんから(笑)。大人になりきってるわけじゃないけど、酸いも甘いも噛み分けたうえで鳴らしている音だと思うんです。
──10年続けているバンドならではの音であると。
宮腰:今回の6曲は、いままで10年やってきたからこそできた曲ばかりだと思うし、これから先につなげたいと思いながらつくった6曲だったので、とにかく多くの人に聴いていただければ嬉しいですね。デモで揃った20曲を聴いたときは自分たちが歴女みたいに思えましたけど(笑)、コンセプト・アルバムって面白いなと思いましたね。
4人でひとつみたいな部分を聴いてほしい
──今後達成したい目標とはどんなことですか。
木村:近々で言えば、6月にやるツアー・ファイナルのシェルターをソールドアウトさせることですね。
清水:次でワンマンは3回目なんですけど、気合いを入れて臨みます。
木村:将来的には海外ツアーをがっつりと回りたいですね。
宮腰:今年の5月にもカナダへ行ってくるので、「和」をテーマにした新曲がどう受け止められるのか楽しみなんですよ。
清水:カナダ人のイベンターの方がいらっしゃって、年に2回くらい日本のインディー・バンドをカナダに呼ぶ『Next Music from TOKYO』というイベントをやられているんです。指先ノハクも去年の5月に呼ばれたんですけど、ありがたいことに今年もまた出演させてもらうことになりました。
──現地のオーディエンスの反応はどんな感じなんですか。
清水:すごく熱狂的なんですよ。
宮腰:私たちも熱狂してるし、お客さんも熱狂してるから、すごい相乗効果なんです。ダイブもガンガン起こりますしね。
清水:音に対して純粋に楽しんでいるエネルギーがお客さんのほうからウワーッと来るし、すごい経験をさせてもらいましたね。日本のライブハウスはフロアの後ろのほうで見てる人が多いけど、カナダのライブハウスは端から端まで興奮の坩堝なんです。全然知らない曲でも純粋に楽しんでいる反応を示してくれるので、こっちも俄然やる気が出るんですよ。
木村:そういうライブを日本でもできたらいいなと思うんですよね。
──せっかく4人勢揃いなので、最後にお一人ずつ『TAMAMONO』の聴きどころを聞かせていただけますか。
竹内:まずリード曲の「尼将軍の恋」はMVにもなっているので、ぜひ見ていただきたいです。「尼将軍の恋」は最初から最後まで同じリズム・パターンが多い曲なんですけど、いままでそういう曲をあまりやったことがなかったんですよ。シンプルだけどメロディと歌詞とサウンドが合致した、いままでにない曲に仕上がったので、ぜひ聴いてほしいです。あともうひとつは、「VS鬼」でフロアタムを2種類使って演奏したんですよ。イントロでスネアから入るんですけど、スネアからいきなりフロアだけになるんです。その最初の部分、1曲目の最初からドラムに注目して聴いてほしいです(笑)。
宮腰:曲をつくった側としては、「和」という縛りのなかでどういうふうにすればコンセプトがちゃんと伝わるのかなとメロディでも歌詞でも悪戦苦闘したんですけど、聴いてくれる人の心に何かしら響くものがあれば嬉しいですね。それと、いままではベースそのものの音がどういうふうに弾けば格好良くなるかにこだわっていたんですけど、今回は憲太郎さんがいろんなエフェクターを試してみるのを勧めてくださって、それを使ってかなり面白い音になっている曲があるので、細かい部分も注目してほしいですね。
清水:『TAMAMONO』は主に歌詞の面でメンバー同士で意見を出し合ったり、健全なディスカッションができたアルバムだと思うんです。それにいままででいちばんいい歌を唄えたと思うので、やっぱり歌をじっくり聴き込んでほしいですね。いちばん唄うのが難しかったのは「ちょっと待ちな」で、5拍子と6拍子を交互に繰り返すんですよ。しかもAメロの後半はものすごく早口で唄わなきゃいけなくて、全然口が回らなくて(笑)。
木村:このアルバムは自分のギターを聴いてほしいというよりかは、4人でひとつみたいな部分を聴いてほしいですね。いままでも4人で一丸となって作品づくりをしてきたんですけど、10年やってきたなかで一人ひとりがちゃんといいものをつくろうっていう気持ちで臨めたアルバムだなと今回は感じたんです。デモをつくるときも「加奈がこのメロディを唄えばハマるだろうな」とか「裕美子がこのドラムを叩いたら格好いいだろうな」とか「ゆっこにはこんなベースを弾いてほしいな」とかみんなのことを思いながらつくれた曲ばかりだし、気持ちが前とは違う部分があったんです。だから4人でつくった一枚という思いが強いし、4人全員の音と歌を全部聴いてほしいです。…なんて言いつつ、やっぱり私のギターも集中して聴いてほしいです、格好いいんで(笑)。