好きなことをやり続けていくのが一番の近道
——3月に久しぶりに新宿LOFTに出るってことで意気込みを聞かせてくれますか。
ツカサ:意気込みも何も柳沢さんの生誕祭じゃないですか(笑) 。そりゃ全力でお祝いしますよ。
アツシ:俺たちが誕生日を祝うのは大貫憲章さんと柳沢さん、あと今年から仲野茂さんぐらいですからね(笑)。生誕イベントって俺好きなんですよね。イベントってそもそも祭りじゃないですか。それをどれだけ彩れるか……酒だったり音楽だったりが彩って、そういうものだと思うんで。呼ばれることは嬉しいですし、多いですね。
ツカサ:THE TOKYOは祭りの余興としていいんですかね。良い曲だし、ライブの盛り上げも出来るようになってきたし。
アツシ:YouTubeでジョー山中とかがパーティで歌ってる動画があるんですけど、自分たちのライブでやるのとはまた違うヒリヒリしたカッコよさがあるんですよね。それはやっぱり、誰かのために歌ってるって感覚だと思うんですよ。誰だって自分のために歌い始めたわけで、それがひょんなきっかけで誰かのために歌う機会に出会ったときにその人はどういう風に歌うんだろうってのは見ていて面白いですね。シリアスさを感じる人は大好きですね。シリアスに馬鹿やっている人もそうだし。
——例えばSAもマスにやり続けてる人たちだからいい刺激にはなるんじゃないかな。THE TOKYO冠で怒髪天とかグループ魂とか、どんどんイベントに挑戦してたくさんの人に音楽を届けて欲しいね。やっぱりずっと応援してるバンドだから。
アツシ:嬉しいですね。柳沢さんとの会話で印象に残ってることがあって。「なんで吉川晃司にCDを渡さないんだ。突き詰めるならとことんやれよ」って言われたんです。その言葉で、音楽で売れるってのはどういうことなのかって改めて考えさせられましたね。自分の美学というかカッコよさはなかなか答えが出ないし難しいことだと思いますけど、また答えを求めるきっかけをもらいましたね。
——矢沢永吉じゃなくて吉川晃司があうと思ったんだよね。
ツカサ:『モニカ』っぽい動きしてますしね。
アツシ:そうかな?(笑)
——今、ベースをウエノコウジさんが弾いてるからね、接触もできると思うし。
アツシ:ウエノさんとも何度か、武藤ウエノでやらせてもらってますからね。俺らは昔THEE MICHELLE GUN ELLEPHANTとかを聞いていて、もちろんそれもすごいカッコイイなとは思ってたんですけど、俺らは俺らでまた違う好きなことをやり続けた結果、当時聞いていたヒーローたちとやれる機会に出会うってのは不思議なもんで。やっぱり好きなことをやり続けていくのが一番の近道なんだなと思いますね。
——カバーアルバムのドラムは撮り直しとか結構した?
ツカサ:そうですね……カバーはやっぱり普段自分がやらないパターンがあるんで。やっぱり外部のプロデューサーみたいな人がいるのって難しいことなんだなと。例えば、『ルパン三世のテーマ』とかTHE TOKYOだとやらないであろうバチバチのキメが多くて、引き出されたなという感じです。
——演奏苦戦したのかなって思ってね(笑)。
ツカサ:まぁ、苦戦しましたね(笑)。
アツシ:面白いのが、ツカサはやっぱり真面目な奴なんで怒られたその次のレコーディングには調整してくるんですよ。ドラムは結構ノーミスぐらいで録り終えたんじゃないかな。
ツカサ:だいたい、そうですね。ドラムがないとレコーディングも進みませんからね。準備していかなければってのはありました。
——ドン(Ba)はこういうちゃんとしたレコーディングは初めてだっけ?
ツカサ:いや、『陽気なステップ』からドンなので。
アツシ:そういえばそうだったな(笑)。
——じゃもう結構長いんだね、ドンも。
アツシ:時間の流れは早いね……。
ツカサ:入ったの去年かなと思ったら一昨年なんですよね。
アツシ:前任のハヤカワリョータが抜けるときは、やっぱり自分の中で少しありましたね。地元の幼馴染みたいなもんなんで。ちょうど名古屋のクアトロでライブした日の喫茶店で話したね。
昭和の逆輸入
アツシ:今回のアルバムのテーマが『男』なんですけど、柳沢さんとも結構、『男』について話したなって思い出があって。柳沢さんもそういうの好きですよね。
——好きだねぇ。情熱的な男はやっぱりカッコイイよね。
ツカサ:柳沢さんとの初めての企画が『色男サリバンショー』ですしね。下北の居酒屋で打ち合わせをしました。
アツシ:ホストを呼ぼうとかね。
ツカサ:「まずは間口を広げるんだ」って言われたのを覚えてますね。
アツシ:そうなんだよな。俺たちが好きなことやりすぎるから周りはみんなそう言ってくれるんだよね。そういうこと言ってくれるからこそ、俺たちはもっと好きなことやらなきゃなって思いますし。
——最近はライバルみたいなバンドはいるの? ザ・スロットルとかはそうかなと思うけど。
アツシ:スロットルも本当にいい。爪を研ぎ合う仲間だし、Drop’sとかもアプローチは違うけど気合い入ってんなと思いますね。その2組はやっぱり好きで、一緒にやっていこうと思ってます。あとTHE FOREVERSもね。俺の中ではその4バンド揃えばだいたいどんなジャンルもできるなと思ってるんだけど、傍からみたらめっちゃ偏ってるのかな(笑)
——一回でかいイベントをLOFTでやればいいのに。それこそ怒髪天とかも呼んでさ。
アツシ:やりたいですね。俺はこの前、怒髪天見に行ったんですよ。
——あと工藤官九郎とかにも見てもらえたらいいよね。
アツシ:SAのTAISEIさんにも言われましたね。
——そういうイベント仕切ってやったらいいと思うよ。
アツシ:俺はどんどんそういう回すってことから離れて歌うってことに移行してますね。当時でこそ柳沢さんと一緒にDMMの営業を口説きに行ったりしましたけど(笑)。最近思うのが、「結局、何やりたいんだっけ」って思ったときに、もちろん有名になりたい、でかい男になりたいってのがあって動いてたけど、それは目的じゃないよなって思って。自分がカッコイイ男になってカッコイイ男を世の中に売る、その順番だなと。渦中にいると忘れがちですけど最近は男を磨くってことを考えていて。歌を歌うっていっても練習するわけじゃないですけど、どういう気持ち、どういう身体で届けたらいいんだっけってのを考えていて。で、弟(コダマタイチ)がフォークの活動をよくしてるんですよ。
——LOFTのPAもCD買ってたな。
アツシ:いいんですよ、あいつのCDがまた。
——THE TOKYOとは違うけど、彼らしい素直さがあっていいよね。そのバランス感覚が面白い。
アツシ:バンドも好きだけどフォークも好きでしたからね。うちのギターのハマーもアコースティックブルースの人間だったんですよ。ブルースが好きで、バンドは入ってもすぐやめちゃうって感じで。タイチは上京した時はフォークシンガーになりたくて弾き語りとかをやってて。最近あいつに弾き語りを誘われるんですよ。それでちょっとやってるんですよね。
ツカサ:兄弟のユニットでやってますよね。
アツシ:三軒茶屋のホットドッグバーで結構やってまして。軽い気持ちでやったんですけど、まぁ難しい。俺がやると舞台役者がドラマ出て違和感がある、みたいな感じになっちゃうんですよ。4,5回ぐらい弟とやったんですけど全然納得できる弾き語りができなくて。
‐歌の出し方が違うの?
アツシ:表現の仕方が違うんですよね。例えばライブハウスだとステージの上から歌うじゃないですか。で、歌う先ってお客さんよりもっと先なんですよ。PA席の奥、もっと広がってる世界に対して歌うってイメージなんですよ。だけど弾き語りでそれをやると空間がおかしくなるんですよ。
ツカサ:弾き語りって対話に近いんですかね?
アツシ:その通りだね。弟にも言われたんですけど、目の前の人に話す、その延長が弾き語りじゃないかって。すごい難しいですけど面白いなって。気持ちいい声を出すってのが染みついちゃってるんですけど、気持ちよくなくてもいいから目の前の人に届く言葉を歌ってあげる。Mr.Childrenの桜井さんなんかはライブでも曲を作るときでも誰か1人に歌うようなイメージでってのを何かで読んで。桑田圭祐とかも元々弾き語りの人だからそういう気持ちあるのかなって思ったり。俺は劇場型だからそういうのが最近面白いですね。
‐そういうのもやるとまた広がりが生まれるかもね。
アツシ:そうですね。昔はそういう幅を広げるとか要らないって思っていて。歌に限らずですけど、一番強度を持ってる奴がカッコイイと思ってて。自分の中に1つ金字塔を打ち立てるような。幅、みたいな考え方は聞く耳をもってなかったんですけど、それこそ今回のカバーアルバムで色んな歌を歌ってみて、ちょっと違うなと。どうやったらこの人のこの歌のこの感じを俺が表現できるんだろうと考えたときに、俺はまだまだ何も知らないなと感じるきっかけになって。弾き語りも含めて、幅ってのは自分が表現したいことを表現する武器なんだなと自分の中で思えましたね。だからこれからのコダマアツシにも期待して欲しい。
ツカサ:最近バンドの目標みたいなものが「感動するライブ」なんでそこにもつながるんじゃないですかね。
アツシ:確かに。今まで人のことなんて考えたことないからな(笑)
ツカサ:今までは強度で圧倒する、でしたけど対話っていう方法覚えましたからね
アツシ:さっきも言いましたけど、俺らは行事ごとの良いわき役でありガソリンなんだってのを考えたときにそういうのは1つ大事だなって思いましたね。