ザ・ローリング・ストーンズが1963年から1965年にかけて出演したBBCのラジオ番組での貴重なライブ音源を収録した『オン・エア / On Air』が全世界で同時発売された。昨年発表された11年ぶりの新作であり、キャリア54年目にしてバンド初のブルースのカバー・アルバムとなった『ブルー&ロンサム / Blue & Lonesome』はストーンズの原点回帰作だったが、それに続く本作はまさにストーンズの原点そのものだ。ROCK'N'ROLL GYPSIESやband HANADA、ソロで活躍する花田裕之、a flood of circleの佐々木亮介という世代を超えたストーンズ・フリーク両名にこの『オン・エア』にまつわる話、不滅のストーンズ・クラシックについて、ストーンズから受けた影響に至るまで、ざっくばらんに語り合ってもらった。(interview:椎名宗之/photo:大参久人)
ストーンズとルースターズの浅からぬ関係
──ストーンズの音楽と出会ったきっかけから聞かせてください。
佐々木:中学生の時に『ホット・ロックス / Hot Rocks 1964-1971』(1971年12月発表)っていうベスト盤をTSUTAYAで借りたのが最初ですね。ビートルズの青盤(『ザ・ビートルズ 1967年〜1970年 / The Beatles 1967-1970』、1973年4月発表)がロックに目覚めた最初のアルバムだったんですけど、持ってたのがベルギー盤だったんですよ。解説もフランス語で書かれていたんですけど、文中のボブ・ディランやジミ・ヘンドリックス、ローリング・ストーンズとかは英単語そのままの表記だったんですね。で、そこに出てくるバンドやミュージシャンを片っ端からぜんぶ聴いてみることにして、ストーンズは『ホット・ロックス』から入ったんです。
花田:俺は小学生の5、6年の頃に同級生の家に行ったら、そいつの高校の兄貴が持ってたレコードを聴かせてくれて。それがシングル盤の「ホンキー・トンク・ウィメン / Honky Tonk Women」(1969年7月発表)だった。その兄貴がロック好きで、いろいろとロックのことを教えてもらってた。
──どの時期のストーンズがいちばん好きですか。
花田:自分のコンディションというか、その時々の気持ちで違うね。
佐々木:選ぶのは難しいですね。いちばんよく聴いてるのは7インチで持ってる「一人ぼっちの世界 / Get Off Of My Cloud」(1965年9月発表)で、ポップな感じですごく好きなんです。
花田:俺がよく聴くのは、リアルタイムやった『ブラック・アンド・ブルー / Black And Blue』(1976年4月発表)とかかな。ロン・ウッドが入った頃。あと『女たち / Some Girls』(1978年6月発表)とか。初期やったら『アフターマス / Aftermath』(1966年4月発表)とか。「トーキン・バウト・ユー / Talkin' About You」とか「ルート66 / Route 66」とかのカバーが入ってる『ディッセンバーズ・チルドレン / December's Children(And Everybody's)』(1965年12月発表)もよく聴くね。
──お気に入りのストーンズ・ナンバーを何曲か挙げるとすると?
佐々木:パッと思いつくところでは、まず「一人ぼっちの世界」。それと「ミッドナイト・ランブラー / Midnight Rambler」(1969年12月発表)が大好きですね。『ゲット・ヤー・ヤ・ヤズ・アウト / Get Yer Ya-Ya's Out! -The Rolling Stones in Concert-』(1970年9月発表)のライブ・バージョンが最高。あとはバンドでも演奏したことがある「黒くぬれ! / Paint It, Black」(1966年5月発表)かな。
花田:強いて挙げれば「ジャンピン・ジャック・フラッシュ / Jumpin' Jack Flash」(1968年5月発表)、「ギミー・シェルター / Gimme Shelter」(1969年12月発表)。普遍のナンバーだね。
──僕は個人的にルースターズを通じてストーンズを知ったんですけど、ルースターズの初期のレパートリーはほぼストーンズのファースト・アルバム(『ザ・ローリング・ストーンズ / The Rolling Stones』、1964年4月発表)の……。
花田:パクリだもんね(笑)。
──そんなことはないですけど(笑)、「モナ / Mona」を筆頭に、「ルート66」、「オネスト・アイ・ドゥ / Honest I Do」、「リトル・バイ・リトル / Little By Little」、「キング・ビー / I'm a King Bee」、「ウォーキング・ザ・ドッグ / Walking The Dog」など、ストーンズのアレンジを元にしたリズム&ブルースが重要なレパートリーでしたよね。
花田:みんなでよくストーンズを聴いてたからね。最初は半強制的なところがあったりもしたけど。
佐々木:誰が強制してたんですか?
花田:それはもちろん、大江(慎也)さん(笑)。「これ聴いて」って。
佐々木:ルースターズがファーストのジャケで黒いスーツを着ていたのも、もしかしてストーンズの影響だったんですか?
花田:うん、もちろん。ストーンズの初期の格好やったしね。
佐々木:そうなんですか! あのルースターズの黒いスーツを真似て着てバンドをやってる人はいまだにいっぱいいますからね。
──博多の音楽文化は独特ですよね。同時代的にパンクやニュー・ウェイブが流行っていても、ブルースやブリティッシュ・ビートといったルーツ・ミュージックを大切にする気風があって。
花田:そうだね。サンハウスとか鮎川(誠)さんの影響もかなりあると思うけど。