すべては、2011年にはじまった。 継続は力なり。孤独を恐れず、好きなことを貫く。
―YouTubeで活動をはじめたのはいつですか?
LayerQ:2011年の1月ですね。
―2011年にYouTubeが一般ユーザーでも広告収入が得られるようになったんですよね。それでユーザが一気に増えたのと、あと、わたしの見立てでは、3.11の影響もあったんじゃないかなと。津波とか地震の動画をYouTubeで観ることがあって、動画をインターネットで観ることに抵抗がなくなったんじゃないかなと。
LayerQ:もう忘れてしまっていて、正確に覚えてないんですがその頃は再生回数や動画本数によって使えない機能とかもありました。ゲーム実況を始めた頃は趣味の延長でしかなかったので、毎日投稿は疎か、1年間くらい動画出していない時期もありました。
―動画では就職活動がお忙しいと仰ってましたね。「死んだほうがいいんじゃないかな」みたいな、ネガティブな発言もあって、追い詰められていたんだなというのが伝わりましたね。
LayerQ:楽しませる側がそういう言葉を発信するのは本当によくないと思うんですけどね(笑)。
ーまあ、就職活動で忙しいときに『I wanna be the LoveTrap』なんて鬼畜ゲー(難易度の高い所謂、死にゲー)やってたら頭もおかしくなりますけどね。
▲I Wanna Be The Guy
LayerQ:3時間プレイして死にまくって、撮れ高が10分しかないっていう……。編集も大変ですし。あれは心に広く余裕がないと辛いですね。
―その頃から考えると今があるなんて! ほんとうに良かったです!
LayerQ:趣味のつもりではじめたゲーム実況を続けていく中で、少しづつチャンネル登録者数が増えていって、200人、300人とかになったときに、僕の中ではすごい数字だなって思って。こんなに沢山の人が自分の動画を観てくれているんだなと。
―声もずいぶん変わりましたものね。初期はテンションが低くて暗いですし。無言も多くて、噛んじゃったり、言葉がでてこないようなこともありましたよね。続けることでQ節みたいなものが確立されて、今のスタイルが定着しましたね。
LayerQ:そのまま続けていたら、いろんな動画がヒットして、あれよあれよと気づけば2万人を越えて、広告の収益も得られるようになって。もちろん、大きいお金ではなかったんですけど、ああ、こういうお金の稼ぎ方もあるのかと。
―ブレイクスルーはいつでしたか?
LayerQ:2012年から『Don't Starve』(癖のあるかわいいキャラクターと独特の世界観が魅力の2Dサバイバルアクションゲーム)シリーズの実況をはじめことが大きかったですかね。今も続けていますし。単純な再生回数でいうと『Viscera Cleanup Detail』(エイリアンと死闘を繰り広げて、いろんなものでぐっちゃぐちゃに飛び散ったステージをぴかぴかに掃除するゲーム)、『The Forest』(飛行機が落ちて人食い人種のいる島でサバイバル生活)、『Goat Simulator』(ヤギになって暴れる)という、インディーゲームのヒット作の動画を早い時期に出せてたのが大きかったですね。
▲Goat Simulator
―インディーゲームであること自体が売りになってきた。『MOTHER』や『マリオ&ルイージRPGシリーズ』、『東方Project』に影響を受けた『Undertale』の売りが「世界中で愛されているインディーゲーム」と、謳っていたのには驚きました。
LayerQ:こういうゲーム動画待っていました! というみなさんからの声がたくさん届くうちに、それに応えたいという気持ちがはっきりと出たのが3年前……2014年頃かな。まだ大学院生の頃でした。もとから、自分が好きなものをみんなに知ってもらいたいっていう小学生みたいな、これすげえんだぜ、これ面白いんだぜ、みんなもやってみなよ! なんでこんなに面白いのにやらないの? って。昔はゲームをバリバリにやっていたけれど、進学とか就職とかで最近ゲームをやらなくなった人たちにも、もう一度ゲームの面白さを再発見してほしいって。大学生くらいになると、周りから忙しくなってゲームをやらなくなったって話が多くなってきて、それを聞くとやっぱりちょっと悲しくなるので。だから、今ゲームと距離がある人にもその魅力を伝えたい。それが僕の中で、一番価値のあるものだと信じたい。そういう暑苦しいところを、表に出すと嫌味に聞こえるので、あまり言わないようにしているんですけど。
―今日は言ってください。
LayerQ:それが自分にはできると思ったんですよね。ちゃんとはっきり言葉にして、ゲームの魅力を伝えることが自分はやりたいと思って、それがきっとできると。ついには、自分が生まれた意味はここにあるのかと思い詰めてて(笑)。
―めちゃめちゃわかります! 誰にも理解されないかも知れない不安! それを認めてほしいと思う希求!
LayerQ:そうですね。それにはまず、知ってもらうというのが大切なので。ある分野の人口を広げようと思ったら、今やっていない人や、これからやってみようとしている人を大事にしなきゃいけない。もちろん、コアなゲーマーやファンも大切だけれど、ゲーム好きな人はもう魅力を知っているし、実際プレイしてるので(笑)。僕はそこにコミットしていかなくてもいいかなと。
―家族で動画を観ていたり、女性の視聴者も多いですよね。
LayerQ:僕の視聴者は比較的年齢層が高くて。一番多いのが、25歳〜34歳。次に多いのが24歳以下〜10代と、35歳〜40代の方が同じくらい。ゲーム実況のファン層としてはかなり珍しいみたいです。普通は10代が一番多いんですよ。
―Qさんと同年代の人が一番多いってことですよね。等身大の紹介者。
LayerQ:はい。ゲームって無言でプレイしているだけじゃ何しているのか、観ている人には、わからないんですよね。このアイコンはどんな意味があって、どういうシステムがあるのかとか、プレイヤーはどう動かせるのかとか。丁寧に言語化して、声に出して説明する。ガイダンスではないですけど、案内人みたいな立ち位置で動画を作れたらいいなと思っています。僕のキャラを好きになってくれるのも、声がいいですねと褒められるのも、もちろんめちゃくちゃ嬉しいんですが、動画を見てそのゲームに触れて欲しい、知って欲しいという気持ちが大前提にあって。むしろ、そういう欲求がだんだん強くなってきているのかなと思いますね。バランスだと思うんですけど。
▲Don't Starve
―会社とYouTubeの両立は?
LayerQ:……。今は若干できていないですね。危ないです。毎日投稿するのが難しくなってきている。今、できていないのが辛い。フリーで、不安定な生活を長く続けていたので、危機感が強くて。1日1本、動画出さないとダメだみたいな強迫観念みたいなものがある。インターネットの世界では、1週間何もしてないと、死んだも同然だぞ、と。そういう気持ちがあるので、動画を出せないのは不安です。もちろん、勝ち負けを競っているわけではないし、自分の中で価値あるものを作っていればいいというのは頭ではわかってはいるんですが。今、チャンネル登録者数が4万人近くいて、Twitterのフォロワーが5000人いてくれて、イベントを開催したら足を運んでくれる人がいて。それだけで、もう、感謝しかないですし、満足しようと思えばできるはずなんですけれど。ここで終わらせてはいけない。もっと、良くしていきたいって。当然、目先の数字に囚われることもあるし。これあんまり伸びなかったとか、再生良くなかったなと、落ち込むこともあるんです。
―就職してゲームをプレイする時間は短くなりましたか?
LayerQ:そうですね。はい。悲しいです。
―でも、プレイはしていなくてもゲームに関する仕事をしているわけだし、人生においても激動の1年ですから無理せずにゆっくりペースを築いていってほしいです。体壊したりしたら元も子もないですし。
LayerQ:その点は、7時間、きっちり寝ているので大丈夫です。ぼく、寝ないとダメなんで……。でも、これからは、会社と話し合って、動画を撮る時間もちゃんと確保できるようにしていきたいと思っています。
―以前は生活の中心がゲームでしたからね。衣食住無視して、最優先がゲーム。
LayerQ:そうなんですよね、だからバイトしている時間は苦痛でしたね。こんなのやってる場合じゃねえと(笑)! バイトをしなくても良くなったのは素直にうれしいです。仕事がぜんぶゲームに関することだから勉強になるし、何より楽しい。それから、生活の心配が一応なくなったことは大きいです。YouTubeの収益が上がったり下がったりすると、生活が急に厳しくなったり、マシになったりするというのを意識しなくて良くなった。良いのか悪いのかはまだわからないですけど、気持ち的には楽になりましたね。そこがしんどい日も、無きにしも非ずでしたから。僕が倒れて三日動けなくなったら、家族みんな死んじゃうよ? みたいな。うわっ、貯金マイナス5万じゃん。明日の食事代どうするかな?みたいな(笑)。
―現実がすでに無理ゲーみたいな。
LayerQ:でも、それって、視聴者には関係ない話なんですよね。別にフリーターだろうが社会人だろうが、とにかく面白い動画出してくださいよ! という気持ちはどこかにはあると思うんですよね。そこには応えなきゃいけないなと思ってます、本当に。動画出せなかったときは、悲しみにくれながら寝ちゃいますね。すまねぇと。いや、寝るんかい、って話ですけど。