地元でフリーターをしながらYouTubeでゲーム実況していたら、あこがれのゲーム関連会社にヘッドハンティング! 異色すぎる経歴のゲーム実況YouTuber LayerQ。好きなことで生きていくにはどうすればいいのだろうか、本人に訊いてみた。(聞き手:吉田アミ/構成:小柳元・指中晶夫[Naked Loft])
フリーターから一転、30歳からの上京、初就職ーーー。
人生何が起こるかわからない。
―まずは、自己紹介をお願いします。
LayerQ:YouTubeでゲーム実況の動画をアップしているLayerQです。
―活動されて何年くらい経ちますか?
LayerQ:2011年にはじめて、かれこれ6年くらいですね。今年8月に上京して、ゲームの関連会社であるデジカに就職しました。
―ゲーム実況者から就職って、すごいあがり方ですよね。他で聞いたことないです。
LayerQ:自分でも何がどうなってこうなったかまだ消化できてません(笑)。デジカは僕がよくゲームを買っているSteam(ゲームのダウンロード販売の最大手。国内外問わず大手からインディーまで幅広く取り扱っている)っていうサービスを運営をしているのがValve社っていうんですね。で、デジカはValve社と日本で唯一オフィシャルにビジネスをやっている会社なんです。Steamに深く関わる仕事をしたいなら、ここしかないんじゃないかなと思うような会社なんですね、間違いなく。入社できたのはすごくラッキーでした。
―会社の仕事内容についてお聞きしてもいいですか?
LayerQ:今は、ゲームのローカライズですね。日本語翻訳の監修を行ってます。それから、デジカから販売しているタイトルを紹介する情報サイト『Proスチーマー』というメディアを担当しています。日本にSteamの情報がほとんど流れてこない時代から、ずっとあったんですけれど、今までしっかりとした体制が整っていなかったので、あまり上手に活用されていなかった。そのサイトをリニューアルして、どんなコンセプトで情報を発信していくのかを決めたり、マーケティング的にどんなアプローチができるのか、実際に動かしていく人などのアサインを決めたり、まとめたり。そのサイトを理念を持って動かしていく編集長のような立場になると思います。
―タイミングも良かったですよね。これ以上、有名になりすぎると、YouTubeの収益だけで暮らせるから会社を作ろうとは思っても入社しようなんて思わなかったかも。それにQさんの視聴者は第一回目のイベントで見ましたが、心がきれいそうなゆったりしている人が多い印象です。コミュニティも健全でアンチが生まれにくい。炎上することも滅多にないですもんね。コメント欄が荒れるのもほとんどない。
LayerQ:炎上したのは『Fallout 4』(核戦争後の荒廃した世界が舞台のRPG。自由度の高さと広大なマップ、個性あふれるキャラクターたちがわんさか出てくる)でバージルというキャラクターを2回殺しちゃったときくらいですかね……。
―バージルは2度死ぬ事件(笑)。ありましたね。ところで、そもそもデジカには就職したいと思っていました?
LayerQ:いや、そんな風に考えたこともなかったです。自分がデジカで働けるチャンスがあるとは思ってなかったので。そもそも、社会人になるという概念が自分にはなかった。このまま一生、泥水啜って生きていくんだなと腹をくくっていました。でも、東京に行きたいという気持ちはあったんですよね。イベントにしても何にしても、やっぱり日本ではゲームの中心地が東京なので。僕は、東京に来る前は地元の兵庫県に住んでいまして、フリーターをしながらゲーム実況とゲームのライターの仕事をしていました。僕、大学院まで進学していて学校の教員免許も取っていたんですけれど、院の二回生のときには、もうそういう生活をしていて。好きなゲームのことを記事にしてお金をもらう経験をしたときに、このままゲームに携わる仕事に就けるんじゃないかとぼんやり思ってしまって、就職活動を打ち切りました。
―好きなことで、生きていく……。
LayerQ:そうなっちゃうんですかね。公務員や学校の先生も目指せたはずなんですが、そういう良いとされる生き方をかなぐり捨てて(笑)。文字通りゲームに人生の時間を捧げています。ライターとバイト、あとはYouTubeは動画の再生回数に合わせて広告費がもらえるので、その3つの収益で生きていた生活を2年くらい続けていました。
―そこから、ゲーム関連会社に就職って劇的ですよね。アメリカンドリームならぬ、YouTubeドリーム……。
LayerQ:デジカに就職できたのも、すべて見てくれていた方たちのおかげなんです。知り合いにデジカの社員の方が居まして、その人が僕の動画や配信をよく観てくださったんです。それで、僕のコミュニティや僕がゲームにおいて大切にしていることや、情熱を評価してくれて。デジカにゲームのコミュニティーやコンテンツを作るポストがあるんだけれど興味はないか、と誘われまして。一度、話を聞いてみようと。かっこよく言えば、スカウトなんですけど。
ーヘッドハンティングじゃないですか!? すげー!
LayerQ:過去にチャンスを逃した経験があって、その時から「次にチャンスが目の前に転がってきたら、とにかく飛び込もう」って決めていたんですよね。それに、やったことないことに挑戦してみようっていう姿勢は前からあったように思います。ありがちな言葉になりますけど、失敗しても、それが失敗するということがわかるなら無意味じゃないよねっていう考え方で。
―それ、ゲームのプレイスタイルに現れていますよね。計算通りに着実なプレイをしているかと思いきや、突然、後先考えずに行動して全滅したりしますもんね。
LayerQ:人生とゲームは面白いほうがいいんで(笑)。それで、話を打診されてから初めてそのスカウトをしてくれた人と直接会って、話した1週間後には面接を受けていました。次の日に内定の通知いただいて。その3週間後には東京に引っ越して、翌日出社。目まぐるしいスピードで環境が変わりました。東京に出てきてから、まだ3ヶ月くらいしか経っていないのに、今ここで何故かインタビューを受けているという……。
―意味不明ですね! ほんと人生何が起こるかわからない(笑)。わたしも一視聴者として楽しんでいただけのYouTuberにこうして、インタビューすることになるとは思ってもいませんでした。