絵恋ちゃんを絵恋ちゃんに特化しようと思った
小林:戸川さんとのツーマンライブの直前はどんな心境でしたか?
絵恋:ライブの直前は、戸川純さんに「なんだ、こんな感じなの!?」って幻滅されるのがこわかったから、完璧なパフォーマンスをするんだって気持ちでいました。戸川さんに嫌われて出禁にでもなったら生きていけないから。戸川さんのリハーサルも本当は最初から最後まで見学したかったけど、我慢して途中で楽屋に戻って、自分の準備をしてました。
小林:普段のライブではない心持ちだった?
絵恋:ないですね。まず会場にオタクから大きなお花が届いて、ヴィレッジヴァンガード名古屋中央店からもお花が届いてびっくりでした。こっちからお誘いする前に関係者からツーマン行きますとメールがきたり。自分にとってはもちろん特別な日だったけど、みんな同じように楽しみにしてくれてるのが嬉しかったから、期待に応えたいなってすごく思いました。
小林:じゃあ、ちゃんとやろうという。
絵恋:ちゃんとやろうって思いました。結局、一般的に完璧と言えるライブはできなかったんですけど、よそ行き過ぎず、いつもの絵恋ちゃんらしさが出せたので良かったかなって思ってます。そういえば、ちゃんとしてないのが絵恋ちゃんでした。
小林:映像スタッフが入ってたんだよね? 映像スタッフが入ってる事で意識した事はありました?
絵恋:映像の人と打ち合わせをした時に、「可愛く撮ってほしい」「顔が可愛く撮れてたらあとはなんでもいいです」って言いました。インターネットでブスって言われた直後で頭がおかしくなりかけてました。ライブ中は集中しててそんなこと意識してなかったというか、忘れてました。
小林:可愛い感じでって言ってたんだ(笑)
絵恋:最終的に、もう顔撮らなくていいですって言ったら困ってました。でもよく考えたら顔可愛いし、DVDになるの楽しみ。
小林:その話は入れなくっていいか(笑) 顔を可愛くっていうのは。今回のツーマンで初めて「絵恋ちゃんって、戸川純さんとか好きなんだ」って初めて知った人も多いと思うんだけど、その戸川さんの事は何時位に知って、どれくらい好きなの?例えばCD全部持ってるとか。
絵恋:CDは多分全部持ってるんじゃないかな。
小林:編集版みたいなものも? テスト版みたいなものの事だけど。3枚組のヤツとかそういうのも全部?
絵恋:3枚組、持ってます。ライブの入場特典の非売品も。
小林:戸川さんを知ったきっかけは?
絵恋:きっかけは動画だったと思います。
小林:普通のユーチューブとか?
絵恋:はい。ライブ映像を観るのが好きで、「つしまみれ」さんの曲を聴いてたら関連動画に戸川さんがいて。初めて観た動画が確か「好き好き大好き」だったんですけど
小林:あのちょっとデッカいホールで、ドラムがセットの上に乗っかってるやす?
絵恋:豪華なセーラー服みたいな衣装の。めちゃくちゃかっこ良くて、衝撃でした。
小林:そういう知り方もあるんですね。じゃあCDとかも昔のから時系列に借りるとかじゃなくて、みつかったヤツを手当たり次第にって感じだ。で、その頃のアーティスト、80年代のものが好きとか、そういう訳ではない?
絵恋:戸川純さんのことを知っていくうちに、関連の音楽、例えばP−MODELさんなんかも買って聴いたりしました。
小林:その辺の時代でいうと、他に好きな人とかいる? なんかCD屋のインタビューみたいになってきたな(笑)
絵恋:戸川純さん。
小林:その時代のものが好きっていうんじゃなくて、戸川さんがピンポイントで好きなんだね。
絵恋:戸川さんの「好き好き大好き」を初めて聴いた時に、その歌詞と歌声の持ってる生命力に惹かれて。一見、歪んだ愛情表現みたいな歌詞なんですけど、素直で純粋で、こんなに綺麗な歌を歌ってる人がいるんだって思って。人形じゃなくて、命であって、作り物じゃなかったから。聴いてて楽しかった。
小林:その戸川さんの音楽から自分の芸風に取り込んでる事とかある?
絵恋:戸川純にならない事です。戸川純になるには、戸川純になろうとしないことだなって。
小林:メッチャいい話じゃないですか(笑)これはファンは知りたがっていると思うよ。
絵恋:戸川純さんを調べていくうちに、戸川純さんに憧れ過ぎて、コピーみたいになってる人を見つけたりして。そういうのって単純にダサイなって思うし、やっぱり戸川純さんみたいな唯一無二のアーティストを目指すんだったら、自分は戸川純ぽさをゼロにしなくてはいけないって思ったし、戸川純さんになりたいから、絵恋ちゃんを絵恋ちゃんに特化しようと思ったって感じです。
小林:なるほどね。面白いですね〜。そういう好きなアーティストって他にもいる?
絵恋:宍戸留美さんも好きです。
小林:アーバンギャルドさんとかも好きで、対バンとかしたいんですよね?
絵恋:ソロになる前ユニットをやってて、その時にアーバンギャルドさんの曲を、歌わせてもらったりしていました。
小林:あと対バンしたいのどこだっけ?
絵恋:うーん。実は憧れてる方は他にもいるんですけど。
小林:それはあんまり言わない方がいいのかな?
絵恋:戸川さんの話とかも、ずっと言い続けてきたわけじゃないじゃないですか。
小林:知る人ぞ知るみたいな感じかな。あんまり言ってなかったもんね。
絵恋:アーティストが誰かのファンであること公言するの、好きじゃなくて。本当はライブに出てる本数と同じ位、観に行ったりもしてるけど、表で言わなかったりとか。してます。
小林:これは記事にも書いていい?
絵恋:はい、記事なら。
小林:戸川さん好きっていうと、ガロとかサブカルっ娘みたいなイメージがあるんだけど、そういう前歴はないの?中野の「まんだらけ」に入り浸っていたりとか。
絵恋:ないんですよね。でもなんか憧れが凄いあって、そうなろうとしてた時期はあったんですけど、興味持てなかったんですよね。
小林:(笑)
絵恋:無理矢理「ドグラマグラ」とか読んでた時代があるんですけど、クラスで一人「私サブカルなんで」みたいな空気出して。でもなんかなりきれなくて。私は本とか読めないんだなって思って。
小林:「ドグラマグラ」めっちゃ面白いけどな。
絵恋:私はわからないんですよ。面白さが。
小林:「家畜人ヤプー」は?
絵恋:わかんなかったです。
小林:じゃあ、どサブカルっ娘にはなれなかったんだ。
絵恋:試みたんですよ。それで、駄目で。私はクラスのイケてる人達のグループにも入れなければ、サブカル系の女の典型になれる訳でもない。どこにも属せないんだなと気付いて、無理をするのは辞めました。小説とか映画とか観ても、自分の人生に勝る程面白いものがなくて、たいした事ないなって。