バックフロムをやめる理由はないけど続ける理由はある
ノブ:ガレージってジャンルって、あってないようなもんって言うか、ロックンロール自体が。エノッキーがよく言ってたのが、昔、バディ・ホリーだって小さいアンプでみんなを驚かせるために肩車したりとかって、そういう伝統をガレージはずっと引き継いでるって言うか、そうやって見せるとかさ、笑わせるとかさ。バディ・ホリーもテレビだとさ、おとなしく静かに演奏してたりするだけだったりするけど。でもエルヴィスもさ、ライブだとベースの人がドラムの上に乗っかったり。ロックンロールって本来そうやってもっと人を驚かせたり、そういうモノなはずなんだけどね。それがなくなっちゃってる。今はね、あんまりね。
マリオ:いろんな人に言っていただいたんですけど、この映画を観る時はみんな(ライブハウスの中にいる)ひとりの客だっていう。本当にライブハウスの中に入っているような感覚を視聴者に与えていると言うか、距離感がないと言うか。
ノブ:あー、ライブに行ったみたいな感じになれるっていう。それはそうかもね。
マリオ:あと、質問されたのは「どうして(バンドやお客と)そこまで親しくなれたの?」ということだったり。
ネモト:そう言えば試写会の時に、映画館がライブハウスみたいでしたね。スクリーンに向かって騒いだりヤジ飛ばしたり(笑)。
マリオ:お客さんにはそういう感じで観てほしいですね。スクリーンに知ってる人が出たら声援を送ったり(笑)。普段は週6とかで働いていて、平日は英会話教師で週末は牧師で。そういう生活のための仕事をやりながら帰ってきて、撮影したいイベントに出かけたり、それはエネルギーになっていたんですよ。セラピーになっていたり。誰かに言われた言葉ですが、「バックフロムは自由だ」って。イベント行ったら好きに音楽やってもいいし、好きな友達と踊ったり話したりしても良いし、誰も下心を持ってレコード・デビューしたい、出世したいなんて思っていないし、やっぱり好きにできる場所です。
ネモト:嫌なことも多い世の中だし、そこでくらいは楽しくやろうぜ! ってことですね。
マリオ:自分たちでは自覚していないと思うんですけれど、こういう表現のレベルが高い自由なシーンというのは本当に稀ですよ。
ノブ:ま、他に知らないし、自分たちしか知らないから、分かんないよねー(笑)。
ネモト:マリオもクラークもシーンの中ではもはや誰も外人って思ってないですよね(笑)。イベントで盛り上がってる時って、言葉がよく分からなくても何か一緒な感じ。
マリオ:ロックンロール・イズ・ランゲージ! 私がもし来日していなくて、このシーンにいなかったとしたら、今でも自分が何をしたらいいかって分かっていなかったですね。人生をどうしようかなって。自分がバンドに与えたインパクトなんて本当に薄いですね。バンドが自分に与えたインパクトは本当に大きなものです。
ネモト:ノブさんは、自分の活動がこうやって映画になってどうですか?
ノブ:いや、すごい嬉しいって言うか、なんか…やり続けているのは半分惰性で、やめるキッカケもなかったと言うか(笑)。バンドもそうだと思うけど、やめる理由もないし、自分がイベントを始めたキッカケが、毎週1回自分たちが楽しめる場所を作ろうって何人かの友だちと始めたのの延長で、俺も今なんかこう1ヶ月に1回リターンズ(現在、U.F.O. CLUBで月に一度開催中のバック・フロム・ザ・グレイヴ・リターンズ)とか、1年に1回ハロウィンとか、自分の居場所って言うか遊び場がなくなっちゃうのもね…。
ネモト:それは、やめる理由はないけど続ける理由はあるってことですね。
ノブ:うん(笑)。人のライブに行くよりも、自分の企画が一番楽しいし、自分の好きなようになんでもできるからさ。そうやってやってきたことを、マリオが形にしてくれたのは本当に嬉しい。
マリオ:この映画自体はもちろん誇りに思っているけれど、この映画の作り方と言うか、どうやって作ってきたかという、ノブさんやバンドやお客さんたちと共有してきたプロセスは何よりの自慢です。