DIYでできることだけはやるのが東京のガレージパンク
マリオ:他の音楽ドキュメンタリーと比べると、インタビューのシーンが少ないけど、音楽の流れている比率と言うか、2分30秒しか音楽が流れていない映画じゃなく、何よりやりたかったのはバンドを見せたいということです。言葉より音楽を聴かせたい。
ネモト:なるほど。
マリオ:何も楽器も弾けない、何も歌も唄えない、何もバンドのできない私にとって、バンドをやっていないノブさんを見て、それでもクリエイティヴな活動もしているし、別にバンドをやらなくてもロックンロールに貢献ができると思って、じゃあ自分は映画を作ることができると思いました。この映画では歴史的な話より、もっともお客さんに伝えたいことは、「誰でもできる」っていうことです。ともかくバンドをやらなくても貢献できることはあるということです。自分はそうやってシーンをサポートしていきたい。
ネモト:イベントでお客さんが踊っていることもそういうことですよね。
マリオ:そう! お客さんが踊っていることもSHOWの一部です。
クラーク:これまでシーンにいなかったりした人たちや、いろんな人が映画を観て「客までカッコいい!」って思ってほしい。
ノブ:マリオが向こうの映画祭出たらビックリされたって言ってたのが、「あんなにいっぱい女のドラマーが日本にはいるのか!」って。そう言われてみればいっぱいいるじゃん。最初はバンドやってなかったけど、あれ? いつの間にバンド始めたの? みたいな(笑)。ガレージはそういう娘が多いよね。
ネモト:もともとお客だった娘たちが、シーンの中でバンドとして活動を始めるって、男よりも女の子のほうが多いイメージですね。
ノブ:そうだね、そう言えばそうかも。
マリオ:ノブさんが作った場所がインスピレーションとなり、そういう人たちが「バンドをやりたい」って思う動機になるのでしょう。
ネモト:女の子はDJにいかないで、バンドにいく人が多い感じですね。
ノブ:そういう意味じゃ、ガレージってもともとの出発点みたいなとこで、観て自分でもやれるって思うのかな。やりやすいとか(笑)。
ネモト:あと、楽器の形がかわいいとか、服装がかわいいとか、女の子たちはそういうところから入っていくのかも。あんな服着てああいう楽器持ちたいとか。
ノブ:あー、それはあるかもね。
ネモト:で、やってみたら意外とできたみたいな(笑)。
ノブ:そうだね、そこが一番重要だったりしたのかもね。
マリオ:今回、他に受けたインタビューで、「ガレージとは何か?」みたいなことも訊かれたんですが、私にとってガレージパンクっていうジャンルは一応あるんですけれど、文字通り車庫という練習スペースしかないから、東京のガレージパンクはとりあえずDIYでできることだけはやる、みたいな。
ネモト:あと、この映画を観て思ったのは、映ってる人がみんな狂ってると言うか、マトモな人がいない(笑)。
全員:(笑)
マリオ:この映画はすぐ撮影して編集して、数ヶ月でパッと作ると言うよりは、時間をかけてかけてかけて、シーンのみんなが喜べる作品を作ろうという意識がありました。
ネモト:この映画には続きはないんですか?
マリオ:続きはやれたらやりたいなと思っています。最初のラフ版は2時間20分くらいだったんです。けっこうカットしていて。やっぱりガレージ・ファンだけが楽しめる映画じゃなくて、ガレージとかに知識がない人たちにも楽しめる映画を作りたかった。
ネモト:きっかけになるような?
マリオ:そうですね。
クラーク:長い時間をかけて、どこまでもシーンを表すと言うよりは、それを90分くらいにして飽きないように(笑)。
ノブ:(ガレージ・シーンを)知らない人が観たら一番面白いんじゃないかなー。
ネモト:そうですね。ガレージ・シーンを知らない人たちは、シーンの中の俺たちには分からない面白さを感じて観れるかもしれないですね。俺たちは映っている人たちを知っているけど、知らない人たちが観たら「こんな奇妙な世界があるのか!」みたいな(笑)。
ノブ:そうだね、それが一番面白いかも。外国で上映した時の反応はどんな感じなの?
マリオ:ボスニア・ヘルツェゴビナで上映した時は、日本のイメージを覆されたみたいで、「こんな変なヤツらもいるんだ!」とか、テキサコ・レザーマンの伊藤さんの姿を見てビックリして「大和撫子の国が!」みたいな(笑)。
全員:(笑)
ネモト:旅行ガイドブックでしか日本を知らない外国の人が観たら面白いでしょうね。
マリオ:あと、オノチンさんとかの年齢にもビックリしてて。向こうだとある程度年齢が上の人が革ジャンにジーンズでカッコつけてるみたいのが珍しいみたいで。あと、バンドが人を面白がらせたり驚かせるようなステージとか。