奇跡のバランスで成り立つバンドという集合体
──バンドと仕事の両立というテーマも本作では触れられていますけど、それもごく当然のこととして、割とさらっと描くにとどまっていますね。
川口:TAKEくんも映画のなかで言ってたように、本心は仕事をやめて好きなことだけで生きていきたいんじゃないかと思うんですけどね。
渋川:俺はその部分で伊藤には葛藤があると思いますよ。働きながらバンドをやるのが大事って言うか。
伊藤:葛藤はありますよ。音楽だけで食っていくようになると歌詞の説得力がなくなるんじゃないかと思ったりもするし、でも働くのは面倒くせぇなと思ったりもするし。
川口:その感じがそのまま映ってると思うけどね。このままでいいとも思わないけど、それがイヤだって感じはしないから。
伊藤:イヤだって感じは全然ないですね。ただ、もう少しバイトを減らせたらいいなとは思うけど。パチンコをやらなければもうちょっと減らしてもいいんですけどね。
川口:パチンコをやめればいいじゃん(笑)。まぁ、この映画自体がパチンコで擦った話から始まりますからね。ああ、このジャンルの連中か…って感じがあると思うんですよ。
伊藤:あれ、給料日でしたからね。仕事をした意味がまるでない。
川口:結局、そういうことを繰り返しつつも、悲壮感がないんだよね。
渋川:そうですよね。OLEDICKFOGGYはそういう部分で悲壮感が全くない。
伊藤:パチンコをやってる時にけっこう曲が思いついたりするから、やめられないんですよ。あと、俺だけパチンコやってると多分ダメで、みんなああいう感じだからお互いの気持ちが分かるし、バンドを楽しくできてる気がする。一人だけお金に困ってないみたいな感じだと温度差が出て、つまんなくなって良くない。だからみんなパチンコをやってて良かったです。
渋川:でも、TAKEはパチンコやんないだろ?
伊藤:やんないっすね。酒も呑まないし。その代わりよく食べるし、呑み屋に行っても馬刺しとか珍味の高いのばっかり頼むから高くつく。
川口:だけど、そういうところがいいんじゃないかと思って。みんな似てるけど微妙にニュアンスが違うし、似た者同士のなかでTAKEくんだけ変わってるっていう全体のバランスがいいと思った。一番付き合いの古い伊藤くんとの関係性も光と影みたいで面白いしね。そんなことを言ったら、TAKEくんに「俺、影じゃないですよ」って言われそうだけど(笑)。でも、バンドってそういう奇跡のバランスで成り立ってるものだしね。
渋川:面白いよね。(四條)未来の前にバンジョーをやってた岸くんもいまだに付き合いが続いてるし。
川口:人工衛星みたいにバンドの周りにいる。そういう関係性も面白いと思う。
──渋川さんは月9ドラマの『ラヴソング』でたびたびOLEDICKFOGGYのTシャツを着ていましたが、あれは渋川さんなりのエールみたいなものだったんですか。
渋川:まぁ、そんな大したもんじゃないですよ。
伊藤:癒着ですよ、癒着。
渋川:癒着じゃねぇよ。お前から金もらってねぇし(笑)。
──でも、愛を感じますよね。
渋川:あれですよ、いろんなTシャツを着れたら面白いなと思って。
川口:ああいうのって自由なんだ?
渋川:人によりますね。「俺の好きなTシャツを着てもいいですか?」と訊いて、監督が「いいよ」って言えばOKだし、「(プリントされている)バンドの権利は大丈夫ですか?」って訊かれることもあるし。『ラヴソング』の場合は、フジテレビから広中さんのほうに確認の電話があったみたいですけど。
広中:「ドラマのなかで使わせてもらって大丈夫ですか?」って訊かれたんで、てっきりお金をくれるのかな? と思ったんですよ(笑)。
渋川:そうなると着るのがダメって言われるんですよ。
伊藤:7,000円くらいならOKを出すんだけどな。
川口:また微妙な値段だなぁ(笑)。